三菱自動車は7月末、新型コロナの影響で最終赤字が3600億円に拡大する見通しと発表。経営再生の切り札は三菱自慢のプラグインハイブリッドにあるという。モータージャーナリストの小沢コージがじっくり解説する。
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■背水の三菱がPHEVを投入!
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。まさに覚悟の大削減だぜ、三菱自動車! 巨大赤字の日産の陰に隠れているが、同じ日仏グループの三菱も当然経営は厳しい。
2019年度赤字は258億円にとどまったものの、コロナ感染拡大の影響がはっきりしてきた今年の第1四半期連結決算は、営業利益が四半期単独で533億円の赤字となり、今年度の通期予想は実に3600億円の大赤字だ。
マジな話、年産100万台の三菱にとってこの赤字額はデカい。だからこそ先頃、経営再生に向けて発表した計画書の内容にはその必死の覚悟を感じる。基本はカルロス・ゴーン会長時代に行なった拡大路線の修正だ。
具体的には「21年度末までに19年度比で20%の固定費削減」を目指すというもの、マーケティング費用や間接労務費を削るのはもちろん、オザワが驚いたのは国内生産子会社であるパジェロ製造の閉鎖と欧州市場の事実上の凍結までブチ上げていることだ。
パジェロは言わずと知れた三菱の顔たるクロカン4WD。日本ではすでに消滅しているが中東では人気だった。ちなみにパジェロ製造では人気ワイルドミニバンのデリカD:5も生産。これらを岡崎工場に移管して効率化を図る。
正直、伝統の工場閉鎖には驚いたし、それ以上に驚いたのは欧州では2015年から5年連続でPHEV販売トップだったアウトランダーPHEV、そしてエクリプスクロスの欧州発売を停止したこと。資料には「欧州向け新規商品投入凍結」とあるが、売れているはずのアウトランダーも輸出中心。意外と儲かっていなかったのかもしれない。
そのほか役職者は一律給与カット。開発費も削られているようだ。今後はグローバルで一番の稼ぎ頭たるASEAN(東南アジア諸国連合)への経営資源を集中させる。その証拠に昨年7月のインドネシアでの発売に続き、9月5日にフィリピンでアウトランダーPHEVを発売した。
だが、オザワが期待するのは電動化の波に乗ること。まず期待大なのは7月に三菱の加藤隆雄CEOが年内国内導入を正式アナウンスしたエクリプスクロスPHEVだ!
ベースはもちろん、三菱が一昨年国内導入した入魂のグローバルSUV。全長4.4mの手頃なサイズで大人5人と荷物がゆったり乗る。既存のガソリンターボとクリーンディーゼルに加え、三菱が世界に誇るPHEVがぶっ込まれる。
コイツは現行アウトランダーPHEV用パワートレインの改良版。間もなく登場予定だが400万円を切る価格で登場したらかなり面白い存在になるだろう。
というのも、6月に発売したトヨタのRAV4PHVが受注を停止するほど売れに売れたからだ。今、SUVのプラグインハイブリッドは確実に需要がある!
三菱電動化戦略は着々と進行中で来年には超期待の次世代アウトランダーを世界発表する予定だ。加藤CEOはすでに「自社PHEVの技術に磨きをかけた新型アウトランダーPHEVを市場投入する」と明言している。コイツは骨格から電動パワートレインまで一新されるはずで注目の一台だ。
そもそもアウトランダーPHEVは2013年に世界初のSUVのPHEVとして日本で発売。これまで世界60ヵ国以上で販売。これまでの世界累計販売台数は26万台に達しておりPHEV世界最多販売を誇る。この技術を使わない手はない。
根強い人気のミニバン、デリカD:5も一部改良が予定されているし、コイツに三菱の伝家の宝刀たるPHEVを搭載するのもナイスアイデアだとオザワは思う。
ちなみに直近では三菱再建のキモである日産共同開発の軽自動車ビジネスも頑張っている。8月には人気のハイトワゴン、eKクロス、eKスペースなどに予防安全e-Assist機能を追加している。
カメラに加えてミリ波レーダーを追加することにより夜間の衝突被害軽減ブレーキの性能が向上。高速道路での支援技術マイパイロットの追い越し性能もブラッシュアップしている。言うまでもないが三菱の醍醐味(だいごみ)ダイナミックシールドは健在。マジでイカつい。このゴツ顔は一見の価値アリだ。
三菱にはPHEV以外にもツインモーター4WDシステムや車両運動統合制御システム「S-AWC」という磨き続けている技術がある。ワイルドなゴツ顔も浸透してきた。そして何より三菱を愛してやまない熱狂的なファンがいる。ガンバレ、三菱!