9月の新車販売ランキングでトヨタの登録車ヤリスがホンダの軽自動車N‐BOXの独走を止め、初の首位に輝いた。売れ筋グレードがモロかぶりするこの2台はどっちが買い? 自動車ジャーナリストの小沢コージが徹底比較した!
■新旧王者の実力を徹底検証
最強チャンプもいつかは破れる。新国民車ホンダN-BOXが9月の乗用車オールジャンル月販でトヨタのヤリスに負けた。約2万2000台を売ったヤリスに3000台以上の差をつけられての敗北だ。それにしても3年ぶりに軽自動車を蹴散らしたヤリスの人気の秘密はなんなのか?
トヨタ関係者にぶつけたら、ヤリスの数字は新型コンパクトSUVヤリスクロスとの合算というが、ヤリスクロスは8月末に発売されるや6767台を登録しているからやっぱりスゲェー人気だ!
ただ、N-BOXはマイナーチェンジを間近に控えており、オザワは「そりゃ負けるわな」とも思った。年末のマイナーチェンジ後にトップへ再浮上する可能性はまだまだある!
というわけで、現在大人気のこの2台を今回はガチ比較したい。なぜならヤリスとN-BOXは売れ筋の価格帯が重なっているからだ。そこで現行N-BOXオーナーであるオザワが新型ヤリスとガッツリ比べてみることにした。
とはいえ、そもそも両車はカテゴリーが全然違う。N-BOXは軽スーパーハイトワゴンで、ヤリスはBセグメントのコンパクトカー。全高1.7m台のN-BOXに対してヤリスは1.5mで見た目のずんぐりむっくり度からして全然違う。正直、4人乗りの貨物車と5人乗りのスポーツカーを比較するようなモン。
しかし先進安全装備付きのグレードのスタートプライスを比べると、価格が近いことがわかる。N-BOXの141万円スタートに対してヤリスは145万円スタート。
自動車税は軽が約1万円で、ヤリスの1ヤリスが2万5000円。けっこうな差があるのかと思いきや、ヤリスのハイブリッド仕様はエコカー減税やグリーン化特例もあり価格差は意外に小さくなるのだ。
まずは使い勝手を検証しよう。回転半径はN-BOXが4.5m、ヤリスが4.8mでそれほどの差はない。差があるのは室内空間の広さだ。コイツはN-BOXの圧勝。特にリアシートは男子小学生が立って着替えられるほどの空間スペースがある。
さらに後席は190㎜の前後スライドが可能! スライドによって大人も足をしっかり伸ばせてしまう。一方、ヤリスは狭い。リアシートに大人3名が座るとおしくらまんじゅう状態に。
乗降性もN-BOXの圧倒的勝利だ。フロントドアがほぼ90度開くだけでなく、シート高が程よく、成人が腰を落とさずラクに座れる。しかもリアはスライドドアがある。この利便性はもう圧倒的。ヤリスも座りにくくはないが、意外とスポーツカー的でシート高が低いのだ。
ラゲッジ容量もN-BOXの勝ち。リアシートを最大まで後方に下げるとヤリスと大差ないが、スライドを前にするとその容量は1.5倍ぐらいに広がる。高さのある大型トランクもラクに積めるぞ。
利便性ではN-BOXだが、走りや安全性、燃費に関してはヤリスの勝ちだ。乗り心地でいうとN-BOXは軽自動車としては最高レベルだが、高速道路などでの乗り心地や安定感はヤリスの圧勝。
加速感もヤリスの勝ち。64PSのN-BOXのターボも悪くないが、120PSを誇る1.5Lガソリン、システム出力116PSの1.5Lハイブリッドをそろえるヤリスには負ける。ガソリンは出足から気持ち良くエンジンが回るし、ハイブリッドは141Nmの電動パワーを発揮してEV顔負けの気持ち良さを堪能できる。
先進安全もヤリスの勝ちだ。一番安いグレードを除き、最新世代のトヨタセーフティセンスを全車標準で備える。特に高速での運転支援度が違う。追従オートクルーズとレーンキープ性能のふたつを比べると、ヤリスは渋滞時も完全に前車に追従して停止するのに対し、N-BOXは時速30キロ以下で利かなくなる。
レーンキープも積極的に高速の車線中心を追うヤリスに対して、N-BOXは車線を外しそうになると利く感じ。加えてヤリスには交差点右折時の被害軽減ブレーキもつく!
燃費も圧倒的にヤリスだ。オザワの愛車ノンターボN-BOXは街中でリッター平均18㎞ぐらい走るが、ヤリスハイブリッドはフツーに30㎞。この燃費性能だけでもヤリスを買いたくなる。
オザワの判定は街中や近距離を家族の送迎中心に使うならN-BOXを推す。常に1、2名の乗車で週末に遠出をするならヤリスだ。最後にひとつつけ加えると両車共に140万円台から買えるクルマとしては世界最高峰である!