10月15日、三菱自動車はコンパクトSUVのエクリプスクロスを大改良し予約注文を開始。自動車ジャーナリストの小沢コージがサーキット試乗で今回の目玉「PHEV」の実力に迫った!
* * *
■PHEVだけじゃない!四駆も超絶進化
新型コロナの影響もあり今年度3600億円の最終赤字が見込まれる正念場の三菱自動車。こういうときには気合いの入った新車投入しかない。
ということで、捲土(けんど)重来を期す三菱ならではのニューカーが登場したぜ! 三菱が誇る切り札テクノロジーをすべて投入した新型SUVエクリプスクロスPHEVのことだ!
コイツは2年ぶりのマイナーチェンジで追加されたPHEV車。先日、そのプロトタイプに富士スピードウェイのショートサーキットで乗ることができた。一見すると既存のボディにアウトランダー用PHEVの心臓部をブチ込んだだけと思われるかもしれないが、そうではない!
ボディはPHEV化に伴いフロント35mm、リア105mmと合計14cmもボディを延長。フロントには水冷モーターやインバーター、油冷モーター用の冷却器が追加で埋め込まれており、ボンネット、バンパー、フロントフェンダー、リアテールゲートはすべて新作。ほぼフルモデルチェンジ級の改良が施されている。ちなみに4545mmに拡大した全長は4600mmのトヨタRAV4に迫るレベルだ。
結果、ノーズは伸びやかにトンガり、リアは上下ダブルウィンドウがシングルに。新たにヘキサゴンデザインも加わって車格はワンクラスアップ。顔は最近の三菱らしいフェイスデザイン。横長LEDはウィンカーとポジションランプとデイタイムランニングライト。その下のレンズ付きが本当のヘッドライトだ。
片や室内には外観ほどの変更はないがディスプレイオーディオが7インチから8インチに大型化されてピアノブラックパネルも増して上質化。リアの延長により最大448リットルのラゲッジ容量も増加する。
肝心の走りだが、こちらも別物と言いたくなるくらい進化している。正確なスペックは明らかにされなかったが、基本はアウトランダーPHEVと同様の2.4リットルガソリンエンジンによるツインモーター4WD。エンジンをほぼ発電機と割り切り、駆動をフロント82PS、リア95PSの電気モーターで行なう。コレがマジでスゴい!
前後のシステムがつながっていないのでどちらも独立させて動かせる。左右タイヤの駆動トルクもブレーキで制御できてしまう。自慢のS-AWCという操舵(そうだ)技術は自由自在にクルマを曲げられる。しかも今回の試乗取材は雨天で路面が滑りやすく存分にハンドリングを楽しめた。
基本、アウトランダーよりスポーティなキャラクターを持つエクリプスクロスだがPHEVは発進から乗り心地が上質で超静か。たまにアクセルをフルに踏み込むとエンジンが「ブーン」とうなりだすが、ほぼ発電機なので妙な駆動振動は一切伝わってこない。
加速は滑らかのひと言。そりゃそうだ。モータートルクはフロント137Nm、リア195Nmと強大。発進直後に最大スペックを発揮するのでいきなりスムーズ、かつ速い。
ハンドリングも、これまた予想以上。走行前に4WD開発者が「四駆システムはウチのランエボXより進化してます」と言っていたが、コレがマジで本当だった。
そして、滑りやすいウエット路面。オーバースピードでコーナーに入るとステアリングが利かないアンダーステア状態に入るのは仕方ないが、その一歩手前、わずかにスピードを落とし、ブレーキを踏みながらステアリングを切るとノーズがスッとインをつく。
それどころかウマくフロントに荷重を載せるとリアがきれいに滑りだし、ちょっとしたドリフト状態に突入する。その状態でアクセルを踏んでいくと今度はリアがパワースライド。このときは完全に駆動力はリアタイヤよりでよく調教されたピュアスポーツのそれだ。曲がらない4WDとは真逆のクルマである。
しかもこのハンドリングの性格が「エコ」「ノーマル」「スノー」「グラベル」「ターマック」と5段階あるドライブモードで如実に変化する。
スノーにすると滑りやすい路面ではおとなしめだが、グラベル、ターマックはリア寄りに駆動力を設定するようで、慣れてくればブレーキングドリフトも、アクセルによるドリフトも自由自在。かつてのランエボ並みに気持ちよく走れてしまうのだ。
まさに三菱ハイテクの集大成であり、EV航続距離も57.3kmとなかなかのモノ。7月の中期経営計画でも明かされたがやはり三菱はPHEV技術は今後のキモだ。エクリプスクロスPHEVはほかにない走りの快楽がスゴいぞ!