フルモデルチェンジで第4世代へと移行したPCX。公道試乗で徹底的にチェックした フルモデルチェンジで第4世代へと移行したPCX。公道試乗で徹底的にチェックした

ホンダがプレミアムスクーターとして絶大な人気を誇るPCXシリーズをフルモデルチェンジし、今月末に発売する。てなわけで、モーターサイクルジャーナリストの青木タカオが最速試乗。魅力に迫りまくってきたぞ!

* * *

■クルマと同じ「e:HEV」に名称変更

ホンダ PCX 価格:35万7500~44万8800円 フルモデルチェンジした新型は「PCX」「PCX160」、そして写真の「PCX e:HEV(イーエイチイーブイ)」の3モデルが用意されている ホンダ PCX 価格:35万7500~44万8800円 フルモデルチェンジした新型は「PCX」「PCX160」、そして写真の「PCX e:HEV(イーエイチイーブイ)」の3モデルが用意されている

――スクーター界の"絶対王者"が、フルモデルチェンジを発表し、大きな話題となっているらしいスね?

青木 はい。ホンダが誇るプレミアムスクーター「PCX」の新型が1月28日に発売されます。ちなみに新型はPCX(125cc)、PCX160、PCX e:HEV(ハイブリッド)の3モデルを用意しています。

――そもそもPCXはどんなスクーターなんスか?

青木 原付二種クラス初のアイドリングストップ機構を搭載し、2010年に初代が登場。前後12インチホイールのコンパクトモデルが主流だったなか、14インチの大径ホイールを採用していたこともあり安定感と快適性は群を抜いていました。

初代は力強さと低燃費を両立した124ccの水冷単気筒エンジンを積み、発売後約3週間で7400台以上を売って大ヒットを記録しています。

先代モデルよりシート下はPCXとPCX160が30リットル、PCX e:HEVは24リットルに拡大、積載性が向上 先代モデルよりシート下はPCXとPCX160が30リットル、PCX e:HEVは24リットルに拡大、積載性が向上

視認性の高い大型反転液晶ディスプレイを中央に配置する。もちろん、このメーターも新作だ 視認性の高い大型反転液晶ディスプレイを中央に配置する。もちろん、このメーターも新作だ

――初代からバカ売れ!

青木 はい。そして2018年には量産二輪車世界初となるHVモデルやEVモデルもラインナップに加えて独走状態になりました。

――そして今回の新型で4代目に切り替わったわけですが、これまでにPCXはどれぐらい売れているスか?

青木 初代の発売から10年でシリーズ累計は約24万1300台。日本のみならず海外でも熱い支持を受けています。

――まさに絶対王者! で、今回のフルモデルチェンジで進化したポイントは?

青木 4バルブ化した完全新作のeSP+エンジンをニューフレームに搭載し、機械式ドラムだったリアブレーキをディスク化。前後タイヤ幅を太くし、後輪は12cmから13cmに変更して接地性を大幅に向上させています。

実は2年前にフレームをスクーターで一般的なアンダーボーン式からスポーツバイクが採用するダブルクレードルタイプに変更したばかりだったので、ココまでの大刷新を敢行するとは想定外で(笑)。

フロント左側のインナーボックスは収納容量を増やした。スマホを即充電できるUSBソケットを標準装備する フロント左側のインナーボックスは収納容量を増やした。スマホを即充電できるUSBソケットを標準装備する

――短期間でアップデートできる理由は?

青木 開発責任者を直撃したら、「日本だけでなく世界中で売れる人気車なので、どんどん新作を市場に投入できるんです」と語っていました。

――もう試乗したんスよね?

青木 ええ。全域で力強いトルクを発揮するエンジンは高回転域での伸びが増し、高速域でも粘り強く加速していきます。12年に150ccモデルが追加されましたが、今回の大刷新で排気量が160ccに拡大され、高速道路でもクルマの流れにスムーズに乗れます。

また、心臓部強化に伴って車体の安定性と快適性が向上。リアサスのクッションストロークが10mm伸びて衝撃吸収力も上がりました。フットスペースも30mm広がり足を置く位置の自由度が増し、乗車姿勢はゆったり。ハンドルホルダーをラバーマウント構造とし、車体からライダーの手へ伝わる不快な振動まで軽減しています。

テールランプの点灯部のインナーレンズがブルーなのはe:HEVのみ。シートカラーも専用だ テールランプの点灯部のインナーレンズがブルーなのはe:HEVのみ。シートカラーも専用だ

――HVモデルも進化した?

青木 はい。コンパクトで軽量なシステムを実現するために、エンジンの始動と発電を担っていたACGスターターが駆動をアシストし、モーターアシスト特性をふたつのモードに切り替え可能というのは従来どおりですが、制御を成熟させ、名称もホンダの四輪と同じ「e:HEV」に。

――二輪の電動化は進む?

青木 昨年12月に東京都の小池知事がガソリン車の新車販売禁止を乗用車は2030年まで、二輪車も35年までにゼロにすることを目指すと発表しました。バイクメーカーもEVやHVなどへ切り替えが迫られていますが、環境負荷を極力抑えたガソリンエンジンを残しつつ、HVやEVの開発を進めると思います。

――最後にズバリ聞きますが、すべての性能が爆アゲ状態となったPCXは買い?

青木 これだけ進化したのに先代と価格を比較すると、税抜きだと125ccモデルとHVは8000円のアップ。排気量が増した160ccモデルは2万4000円のアップです。進化した部分や装備を考えると破格の値付け。即買いOK!

●青木タカオ 
モーターサイクルジャーナリスト。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。現役の二輪専門誌編集長でもある

★『インプレ!』は毎週水曜日更新!★