国産、輸入車ともに新春から怒涛の新車ラッシュを展開し、超激アツの二輪界。今年乗るべきバイクはどれ? ということで、モーターサイクルジャーナリストの青木タカオが独断と偏見で選んだギンギン確実の7台を大公開!
* * *
■ホンダの新型攻勢がハンパない!
――ニューモデルが続々デビューしているみたいスね?
青木 はい。注目のびんびんマシンが国産、輸入車含めてズラリ勢ぞろいです! というわけで、今回は青木が吟味に吟味を重ねた7台を紹介します。1位ですが、コレはズバリ言ってホンダのCRF250Lしかありません!
――2012年に初代が登場した人気モデルですね。
青木 シリーズの世界累計は約13万台を誇ります。従来型はオンロードとオフロードの性能のバランスが秀逸すぎて、ガチのオフロードファンから「ダート性能が物足りない」なんて声もありました。
しかし、新型の開発責任者はプライベートで海外ラリーに参加するほどガチな人で、「次はダート性能を向上する!」とものすごい意気込みで、今回開発したんですよ。
――試乗した感想は?
青木 先代は重さを感じましたが、それが見事に解消されていましたね。フレームから造り直し、スイングアームなどを新作にすることで約6kgの軽量化を達成。前後サスペンションはストローク量を増やして衝撃吸収性をアップ。エンジン搭載位置を上げて、最低地上高も稼ぐなど徹底した造り込みです。
エンジンもオフロードや街乗りで多用する低中回転域を力強くし、坂もグイグイ上がっていく。ハンドリングが軽くてアクションもキマるし、土系バイク乗りが歓喜する仕上がりの良さです!
――ということはマニア向け?
青木 いやいや、街乗りでの扱いやすさはそのままに高速道路も余裕の6速ギアをハイレシオ化するなど、舗装路も軽さを武器に俊敏に走り、安定性も両立しています。初心者にもオススメできます! ちなみに兄弟車のCRF250ラリーも同時に新型となっており、コイツがまた会心の出来なんです。
――コッチも乗った?
青木 もちろん! 走行風が乗り手に当たらないようシールド&カウルや張り出したタンクシュラウドでシャットアウト。ハンドルウェイトやステップラバーで振動を抑え、座面の広いシートで高速道路を使った長距離ランも疲れ知らず。250ccとは思えないクルージング力を持ち、それでいてCRF250L譲りのオフロード性能を持ち合わせた、タフな旅の相棒としています。
さすがダカールラリーを連覇したホンダです。この兄弟がそろって1位です。
――続いてもホンダ?
青木 はい。2位はレブル1100です。レブルは250、300、500をグローバル展開し、年間約2万5000台を世界中で売る超人気シリーズです。その長兄としてついに1100が出るんです!
3月にクラッチやシフトチェンジ操作がいらないDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)仕様、5月にはマニュアルトランスミッションを発売します。試乗はまだですが、実車に跨(またが)り細部までくまなく触りまくってきました!
――さすが手が早い。
青木 大排気量クルーザーにしては気軽に乗れそうな細身の車体で、シート高は700mmと低く両足はカカトまでベッタリ地面に届きます。
高回転域までスムーズに吹け上がる直列2気筒エンジンが心臓部で、旋回時の最大バンク角は35度と深く設定。クルーザーが苦手とするコーナリングでも、快活な走りが間違いなくできます。価格もライバル勢より低い設定なのが強みで、大ヒットの予感がプンプン!
――3位は?
青木 1978年の初代誕生以来、変わらないスタイルを貫き通したヤマハSR400がついに43年の幕を閉じます。
――人気に陰りがあった?
青木 とんでもない! これぞオートバイというオーソドックスな車体構成で、ファンはベテラン層だけでなく若い世代にも浸透していました。現行の公道向け機種では唯一の、セルなしキックスターターの単気筒エンジンは味わい深く、エンジンの目覚めの儀式に憧れて、老若男女がSR人気を支えたのです。
それが証拠に昨年の販売台数(『二輪車新聞』調べ)も2450台で堂々の2位です。
――では、なぜ生産終了に?
青木 キャブレターがフューエルインジェクション化されるなど進化と熟成を繰り返してきましたが、ベースは1970年代のエンジンですから、厳格化される最新の環境規制に対応できなくなったのが大きい。
ファイナルエディションは、歴代モデルを彷彿(ほうふつ)とさせるシンプルなグラフィックパターンのグレーとブルーがそれぞれ用意されますが、有終の美を飾るヤマハのモノづくりを集結させたリミテッドも設定。
職人の手作業によるサンバースト塗装を施した燃料タンクをはじめ、シリアルナンバー入り電鋳(でんちゅう)エンブレム、真鍮製音叉(しんちゅうせいおんさ)エンブレム、本革調シート、アルマイトのホイールリム、黒い文字盤の専用メーターなどが装備。ファン垂涎(すいぜん)の逸品です。
――続いて4位は?
青木 ヤマハのMT-09がフルモデルチェンジされ、小顔マスクでよりスタイリッシュになりました。CFアルミダイキャスト製の新設計フレームに搭載される3気筒エンジンは、排気量を45cc拡大して890ccになり3馬力アップ。最高出力は119馬力に達しました。灯火類はオールLEDです。
――5位は輸入車がランクインです。
青木 どっしりと重厚なイメージのハーレーダビッドソンですが、ジャンプもできるアドベンチャーモデル「パンアメリカ」が発売されます。エンジンは完全新作の水冷Vツイン1250ccで145馬力を発揮します。
――6位はBMWですか。
青木 ドイツ語で「ゲレンデ・シュトラッセ(どんな道でも走れる)」を意味する「GS」が昨年誕生40周年を迎えて新型になりました。世界中のバイク冒険家が愛する定番人気モデルで、トラクションコントロールやライディングモード、コーナリングABSなど最新電子制御が満載!
さらにヒルスタート・コントロールやエンジンブレーキ・コントロールも標準装備します。BMW伝統のボクサーツインエンジンは136馬力を発揮するんですよぉぉぉ!
――(無視して)大トリはカワサキですね。
青木 ニンジャZX-10Rで決まりです! 逆スラントノーズと呼ばれるニンジャH2由来の迫力あるフロントマスクで、アッパーカウル両サイドにはウイングレットを内蔵。空気抵抗を約7%低減し、浮き上がりを抑えるダウンフォースを約17%増やしました。
今年、コイツでカワサキはスーパーバイク世界選手権7連覇を狙います!
――なるほど。
青木 今年は魅力的な新型がまだまだ出ます。2021年のバイク業界も盛り上がること間違いナシですよぉぉぉ!
(写真協力/ホンダモーターサイクルジャパン ヤマハ発動機販売 ハーレーダビッドソンジャパン BMW カワサキモータースジャパン)
●青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。現役の二輪専門誌編集長だ