欧州でEVの販売が絶好調だ。しかも、魅力的なモデルが続々登場しているという。てなわけで、ズバリ買いは? 輸入車に精通する自動車ジャーナリストの竹花寿実(たけはな・としみ)が独断と偏見のみで激推しEVをセレクト!
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■コロナでも欧州でEVが売れるワケ
――現在、日本ではクルマの電動化というか、「脱・純ガソリン(ディーゼル)」的な話が盛り上がっています。
竹花 ただ、クルマの生産から運用、廃棄までを考慮したLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の視点で考えると、生産時のCO2排出量は電動化により増えてしまいます。
本気で電動化を進めるのであれば、日本はエネルギー政策を根本的に転換する必要があるでしょうね。正直、そう簡単に進む話ではないと思いますよ。
――ヨーロッパはどうです? 日本より「EVシフト」が進んでいるという話ですが。
竹花 ヨーロッパは急激に電動化が進んでいます。特にEVの伸びは目を見張るものがあります。2019年は新車販売全体の3%でしたが、2020年は10.5%と、一気に3倍以上に拡大しました。
昨年はコロナの影響でヨーロッパ市場全体が前年比23.7%減の約990万台だったのですが、EVはコロナに関係なく伸び続けているんです。
――なぜそんなにEVが売れているんスか?
竹花 比較的手頃な価格の魅力的なモデルが出そろってきましたし、各国が購入補助金や自動車税の優遇措置などを用意している点も大きいと思います。購入補助金は、例えばドイツでは、車両価格が4万ユーロ(約510万円)以下のEVには9000ユーロ(約115万円)も出るんです。
――それはデカいスね!
竹花 あとヨーロッパでは、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みとして、CO2排出量削減のために社用車をまとめて買い換えている企業も多い。
自動車メーカーも、2021年に新車1台あたりの平均CO2排出量を95g/km以下とする規制が欧州委員会によって施行されているので、日本とはEVの販売にかける必死さが違う。何しろ1台あたり1g/km超過するたびに95ユーロ(約1万2000円)もの罰金が科せられる。
――一般の人は買わない?
竹花 いやいや、そんなことはありません。購入者の多くは都市部に住んでいて、日々の走行距離が少ない人たちです。大都市を中心にディーゼル車の走行規制が始まっており、ディーゼル車から走行規制を受けないEVへ買い換えているようです。
――なるほど!
竹花 やはりユーザーはなんらかのメリットがあるからEVを買うわけです。日本がEVをもっと普及させたいのなら、政府や自治体、メーカーなどがしっかり協力し、購入、維持コスト、使い勝手などの面でユーザーがEVにメリットを感じられるようにする必要があると思います。
――ふむふむ。で、今、日本で買える欧州ブランドの激推しEVはどれスか?
竹花 現時点の大本命は、プジョーe-2008で決まりです。航続距離はJC08モードで385㎞とシティユースには十分。人気のコンパクトSUVで扱いやすく、実用性も文句ナシ。走りは軽快ですし、デザインもインパクト抜群。魅力たっぷりのクルマです。
――次はアウディイートロンスポーツバックですか。
竹花 はい。走りはパワフルで軽快。高級感やハイテク感も抜群で、"未来のクルマに乗っている感"が味わえます。
――見た目の存在感も確かにスゲー。続いてはポルシェタイカン!
竹花 先日発売された2WD(後輪駆動)のベーシックモデルは、どんな走りが味わえるのか楽しみな一台です。
――今後登場予定のEVで要注目な輸入モデルは?
竹花 今後も続々と新型EVが登場する予定ですが、私は年内にデビュー予定のメルセデス・ベンツEQSに注目しています。最高級EVサルーンがどんな世界観を見せてくれるのか、また自動運転技術を含む最新テクノロジーがどれほどのレベルに達するのか、今から大いに期待しています。
●竹花寿実(たけはな・としみ)
1973年生まれ。東京造形大学卒業。自動車雑誌の編集者などを経てドイツへ。ドイツ語を駆使して、現地で自動車ジャーナリストとして2018年まで活躍。輸入車のスペシャリスト