「最近の高級ミニバンの顔面はクセが強い」と話題だ。なぜこんな事態に? そしてミニバン最強の顔面は? 日本&世界カー・オブ・ザー・イヤー選考委員の自動車ジャーナリスト・小沢コージが濃厚解説&独断と偏見のみで"オラつき最強"を決めた。
■アルファードが"絶対王者"のワケ
――ラージサイズのミニバンに異変が起きているとか?
小沢 昨年10月にマイチェンした日産・エルグランドがギラギラ悪目立ちグリルを採用してオラついたと思ったら、その翌月にマイチェンしたホンダ・オデッセイもメッキ部分が大増量。さらにノーズが7㎝も上がりグリルが超デカい長四角フォルムに大変身!
――顔面を整形したワケは?
小沢 ぶっちゃけ、10年目&7年目の逆ギレだよ! そもそも1997年に誕生した初代エルグランドがミニバンブームを巻き起こしたの。まさに元祖ゴージャス系ミニバンの走りだった。
ところが、2010年デビューの現行モデルは後発のトヨタ・アルファード&ヴェルファイアのゴツ顔兄弟にガチ敗北。当然、連戦連勝を重ねるアルファードになんとか一矢報いたいのが本音よ。けど、経営が厳しい日産には全面改良の体力がなく、一部改良でオラついたと。
――ホンダは?
小沢 オデッセイは、1994年に誕生した乗用系ミニバンの始祖鳥。全長4.8m台でサイズ的にはアルファード&エルグランドに届かないハンパさだが、7年ぶりのマイチェンで顔面を大幅にイジり倒し、勝負をかけてきたと。
――各社、バカ売れを続ける絶対王者アルファードを見て尻に火がついた感じ?
小沢 そう。だって350万円以上するアルファードが昨年の国内新車販売の総合ランキングで堂々9位にランクイン。軽自動車を除いたら5位だからね! 金脈よ、金脈!
――バカ売れの背景は?
小沢 ニッポンの高級車はセダンからミニバンに代わったんだよ。同じ全長5m弱のクルマだけどクラウンとアルファードを比較すると、室内の快適さ、スライドドアの便利さ、そして顔面のデカさ......クラウンに勝ち目がないの。
――ほおほお。
小沢 しかも、昨年5月にトヨタは全チャンネルを併売化した。かつてクラウンはトヨタ店、アルファードはトヨペット店でしか買えなかった。けど、今はどこの店舗でも全トヨタ車が買えるから、ショールームで値段がかぶるクラウンとアルファードを並べて見られる。
そりゃ、アルファードのほうが広くて派手だから売れる(笑)。兄弟車のヴェルファイアの月販が1000台以下に落ちたのも同じ理由よ。
――ミニバンのなかで、なぜアルファードだけが強い?
小沢 顔面の存在感はメッキグリルの面積だけでなく、ある種の様式美が必要なの。アルファードの開発キーワードは豪華絢爛(けんらん)で、モチーフは甲冑(かっちゅう)! もう突き抜け方がハンパない。
それに比べると、新型オデッセイはメッキ面積が増えて、確かにグリルの押し出しは強くなったけど、担当エンジニアいわく、「オラオラ系にしなかった」と吐露。相変わらずホンダは妙にマジメで振り切れていないんだ。
――自分が買うならどれ?
小沢 今回3台集めて徹底チェックしたけど、走りが気持ちよくて燃費がいいのはオデッセイ! 次に乗り心地がいいのがエルグランド。ハンドリングはアルファードよりシャープよ。ただし、ハイブリッド仕様がないのはツラい。
――ん? アルファードは?
小沢 正直、"オマエそこどけ感"はアルファードの圧勝だけど、その部分は俺に必要ないから(笑)。
――では、最後に総括を!
小沢 高級ミニバンは、お客の自己顕示欲と虚栄心の強さをいかに満たすかなの。そこを日産とホンダは見逃していて、トヨタは見抜いているって話なんだよね。
●小沢コージ(Koji OZAWA)
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週土曜17時50分~)。YouTubeチャンネル『KozziTV』。著書に共著『最高の顧客が集まるブランド戦略』(幻冬舎)など。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員