世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員である小沢が緊急試乗し、独断と偏見のみで評価 世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員である小沢が緊急試乗し、独断と偏見のみで評価

昨年11月にビッグマイナーチェンジを受けて評判になっているレクサスLS。今年登場した7代目メルセデス・ベンツSクラスとガチ比較すると、ぶっちゃけ、どっちが買い? 『週刊プレイボーイ』でおなじみの小沢コージが2台を引っ張り出して徹底検証した!

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■日独高級車頂上決戦は、寺vs城である!

メルセデス・ベンツ Sクラス 発売:2021年1月28日(フルモデルチェンジ) 価格:1293万~2040万円 リセール:B+ 値引き:20万円 ボディサイズ:全長5210mm×全幅1930mm×全高1505mm 7代目となる新型は先進運転支援機能も進化。旧型モデルよりも精度などが飛躍的に強化された メルセデス・ベンツ Sクラス 発売:2021年1月28日(フルモデルチェンジ) 価格:1293万~2040万円 リセール:B+ 値引き:20万円 ボディサイズ:全長5210mm×全幅1930mm×全高1505mm 7代目となる新型は先進運転支援機能も進化。旧型モデルよりも精度などが飛躍的に強化された

小沢 ついにベンツの新型Sクラスが出たぞ! しかも、8年ぶりのフルモデルチェンジで超絶進化よ!

――Sクラスといえば、メルセデス・ベンツのフラッグシップモデルですよね?

小沢 そう! さらに言うと、Sクラスは世界の高級車の代名詞であり"メートル原器"よ。約50年前の1972年に初代が登場し、スタイル、高速性、安全性、ハイテク装備で先頭を突っ走ってきたモデル。世界累計は400万台を軽く突破し、一時は全長5m前後の高級車ゾーンでシェア4割弱を確保していたほど。

ぶっちゃけ、BMW7シリーズもアウディA8もSクラスの亜流であり、SクラスのBMW的、アウディ的解釈と言ってもいい。世界市場トップの中国や、それに続く北米の高級車カテゴリーでは、今もSクラスが一番売れている。

トランク容量は505リットル。ちなみにリモコンキーを持って近づくとドアの取っ手が自動でせり出す トランク容量は505リットル。ちなみにリモコンキーを持って近づくとドアの取っ手が自動でせり出す

――Sクラスは日本車でいうと、レクサスLS的ポジションなんスかね?

小沢 そのとおり! 日本ではセルシオの名で1989年にデビューした初代LSだが、コイツはある種のSクラスキラーよ。2017年に5代目に生まれ変わり、昨年末にビッグマイチェンして大きな話題を呼んでいる。よって今回ガチンコ勝負させた!

――ぶっちゃけ、高級車感が強めなのはどっち?

小沢 わかりやすい高級車はやっぱしSクラス。けど、そもそも両者は方向性が真逆なんだよ。かつてのLSは"プチ和風Sクラス"って感じで、サイズも小さく、角が取れた箱型セダンって感じだったが、もはやほかの何にも似ていない"モダン野獣"路線を突っ走っている。

鋭いスピンドルグリルとヘッドライト、抑揚あるサイドラインは『エヴァンゲリオン』の初号機的な妖(あや)しさすら漂う。つけ加えると、リアからじっくり見るとほとんどクーペ的なフォルムでもある。

今回試乗したモデルは2.9リットル直6ディーゼルターボ。最高出力は330PS、最大トルクは700Nm 今回試乗したモデルは2.9リットル直6ディーゼルターボ。最高出力は330PS、最大トルクは700Nm

――Sクラスは?

小沢 伝統のグリルやエンブレムを守りつつ、フォルムがさらにシンプルかつ優美になったよね。

――インテリア対決は?

小沢 実はココが最もチャレンジングかつ大胆な領域よ。Sクラスがセレブ的なシルバー光沢を持つ金属調パネルや、キルティング加工のソフトパッド付き本革シートで、"わかりやすいリッチ感"を演出しているのに対して、最新のLSはもはや和室。和のモダンアート的細工がふんだんに施された、まさに"走る茶室"なんだよぉぉぉ!

室内で目がくぎづけになるのが12.8インチの縦型有機ELディスプレイ。メーターもデジタルだ 室内で目がくぎづけになるのが12.8インチの縦型有機ELディスプレイ。メーターもデジタルだ

クロスステッチ入りのナッパレザーシートが採用されている クロスステッチ入りのナッパレザーシートが採用されている

――(淡々と)具体的には?

小沢 Sクラスは欧風な高級感を徹底的に突き詰めており、いわば欧州航空会社のファーストクラスって感じ。加えて今回はiPad顔負けのデジタル操作感を持つ12.8インチの有機ELメディアディスプレイを超絶進化させた。

"しゃべるメルセデス"こと、音声認識機能「MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)」は、実風景にアニメ進路指示を重ね合わせるARナビを組み合わせてきたわけよ。

レクサスLS 発売:2017年10月(2020年11月改良) 価格:1073万~1728万円 リセール:B+ 値引き:0円 ボディサイズ:全長5235mm×全幅1900mm×全高1450mm(2WD) トヨタの高級ブランドであるレクサスのフラッグシップモデルがLS。改良モデルは静粛性が向上 レクサスLS 発売:2017年10月(2020年11月改良) 価格:1073万~1728万円 リセール:B+ 値引き:0円 ボディサイズ:全長5235mm×全幅1900mm×全高1450mm(2WD) トヨタの高級ブランドであるレクサスのフラッグシップモデルがLS。改良モデルは静粛性が向上

デビューから熟成に熟成を重ねている5代目LS。今回の改良で3度目となる。極上の完成度を誇る デビューから熟成に熟成を重ねている5代目LS。今回の改良で3度目となる。極上の完成度を誇る

――先進性の高いインテリアだと。一方、LSの内装は?

小沢 コイツがマジでスゴい。和のアート性で勝負に出ていて、琴の弦を模したセンターパネルを備え、最上級グレードのドア内張りは、銀箔糸を織り上げた西陣織と一枚一枚職人が手張りしたプラチナ箔装飾よ!

Sクラスが"ノイシュヴァンシュタイン城的な荘厳さ"で迫っているとするならば、LSは"銀閣寺的なワビサビの高級感"で勝負に出ているわけ。もうね、同じ高級車ではあるが、生息する領域が全然違う。

西陣織の表皮を組み合わせるドアの装飾、プラチナ箔のオーナメントパネルはオプション装備 西陣織の表皮を組み合わせるドアの装飾、プラチナ箔のオーナメントパネルはオプション装備

エグゼクティブモデルの後席の左側は伸縮機構付きの電動オットマン機能などの極楽装備を用意 エグゼクティブモデルの後席の左側は伸縮機構付きの電動オットマン機能などの極楽装備を用意

――走りはどうです?

小沢 わかりやすい高級感と乗り心地の癒やし度なら圧倒的にSクラスよ。まさしく安定の上質感で、ボディ拡大と同時に剛性も増しているから文句ナシ! まるで極上の温泉に漬かっているようなゆったり感が味わえるぞ!

――LSは?

小沢 初代LSが持っていた常軌を逸した静粛性やスムーズさはなく、乗り心地はいいけど、足はそれなりにしっかり感があり、ステアリングフィールは驚くほどシャープ。万人に認められる高級感というより、"俺の高級感"を追求してきている。

かつてはどこかの後追いだったけど、今はどの影も追っていない。そういう意味での勝者はLSだけど、万人ウケはやはりSクラスに軍配が上がるなぁ!

LSのパワーユニットはV6の3.5リットルハイブリッド。システムの最高出力は359PS。10速CVTを搭載 LSのパワーユニットはV6の3.5リットルハイブリッド。システムの最高出力は359PS。10速CVTを搭載

――今後、高級車はどうなりそうスか?

小沢 独自性を進化させるのは当然として、電動化と自動化で世界トップに立てるかどうかがポイントになる。SクラスもLSも自動運転レベル3の機能を導入するというウワサがあり、コイツが導入されたら世界の高級車地図は大きく変わると思うぞ!

●小沢コージ 
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週土曜17時50分~)。YouTubeチャンネル『KozziTV』。著書に共著『最高の顧客が集まるブランド戦略』(幻冬舎)など。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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