世界的な環境規制の強化で、絶滅危惧種状態なのが、純ガソリン車だ。だが、国産車には男がシビれる乗り味の純ガソリン車がたくさんある。おなじみ、モータージャーナリストの小沢コージが独断と偏見のみで絶対に乗っておきたいクルマを選んだ!
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■男なら死ぬまでにGT-Rを味わえ!
小沢 つくづくトンデモない時代になってきたなぁ! テスラのEV(電気自動車)が世界中でバカ売れし、VW(フォルクスワーゲン)も電動化に舵(かじ)を切り、GM(ゼネラルモーターズ)も2035年にすべての新車を電動化すると宣言。
そして、ついにホンダが2040年に全車EVかFCV(燃料電池車)にするとブチ上げちまった。要するに100%電動化宣言をしたわけよ!
――ホンダは本気でガソリンエンジンを捨てるんですかね? 正直、そこらへんの温度感ってどうなんスか?
小沢 三部(みべ)新社長が就任会見で脱・純ガソリン車宣言をしたわけだが、会見後の質疑では「あまり特定の技術には決め打ちしない。いろいろな技術に対しても可能性を残しておくべき」とも語っているから流動的な部分はあると思うが......この宣言の威力はマジでハンパない!
――世界的にEVシフトが急加速している背景には何が?
小沢 アメリカのバイデン政権が脱炭素戦略を掲げたのはマジで大きい。実際、パリ協定にも復帰したしね。それにアメリカは、EVの覇権を狙う中国と並ぶ巨大自動車市場を持っている国だから。
――なるほど。
小沢 でも、冗談抜きにこれから先は、「俺たちはいつまでガソリンエンジンを楽しめるか?」とか「人生最後、乗らずに死ねない最高のガソリンエンジン車はどれか?」なんて考えなきゃいけなくなった。
ガソリンエンジン好きにとっては余命宣告が始まったも同然(涙)。国産車には刺激的なガソリンエンジンがたくさんあるってのに!
――ズバリ、今乗っておくべき、国産ガソリンエンジンはどれスか?
小沢 1位は歴代の国産車でも最強のスポーツカーである日産GT-Rよ! "究極のドライビングプレジャーの追求"を旗印に2007年にデビュー。一時は世界で最も過酷なドイツのサーキット場「ニュルブルクリンク」でポルシェ911ターボをブチ抜き、市販車世界最速になったことも! 以降、ほぼ毎年熟成を重ねてきた逸品だ。
リアにギアボックスを搭載する珍しいトランスアクスル方式のスーパー4WDスポーツで、先日も最新モデルに乗ったが、コイツはやっぱしスゲーよ! 乗り心地がさらに良くなり、ハンドリングの一体感もハンパない。しかも最新の排ガス&衝突安全もクリアしているのもポイントが高い!
――エンジンはどうスか?
小沢 文句ナシに最高! わずか3.8リットルのV6ツインターボで、たった6気筒のエンジンだけど職人が手組み。この燃え上がるような回転フィールはV8も顔負け。
しかも、エンジンの出力は570馬力まで進化しており、スペック的には3000万円級のスーパーカーにも匹敵するレベル。こんなガソリンエンジンは二度と出ん! 男なら死ぬまでに一度は味わうべきクルマなんだってば!
――続いて2位は?
小沢 レクサスRC Fで決まり! コイツは2014年デビューのスポーツクーペRCがベース。全長が4.7m台の扱いやすいボディに、今後の電動化時代には絶対に生まれない恐竜的な5リットルのV8DOHCを搭載! パワー&トルクは481PSに535Nmとマジで強烈。
ターボやスーパーチャージャーを使わない大排気量V8エンジンの伸びの良さは絶妙で、特に低回転から7000回転までドラマチックに伸びる。まさしく"走る大河ドラマ"よ! このエンジンを味わうためだけにRC Fを買ってもいいぞ!
――そして3位は?
小沢 日産フェアレディZ! どんなに遅くとも来年の春前には7代目が出そうだが、実は現行6代目のほうがお買い得かもしれん!
――えっ、どういうことですか?
小沢 パワフルで伸びのある3.7リットルのV6搭載で、これまた珍しいノンターボエンジン。ターボラグのない加速はGT-R顔負けだし、それでいて397万円スタートの価格は大いに魅力。新型は間違いなく500万円前後になるだろうし、現行型はマジで買いだよ。
――次点は?
小沢 4月に世界初公開されて大きな話題を呼んだトヨタのGR86と、スバルBRZは次点としてオススメしたい。予想価格は300万円前後とバーゲンプライスになりそう。付け加えると先進安全&環境性能が充実しているのもいい。
――実車はチェック済み?
小沢 もちろん! 見た目はかなりカッコよくなっており、質感も全体的に上がっている。複数の関係者を取材したら、走りがスゴくよくなっていると。
――走りがよくなった理由は?
小沢 エンジンが2リットルから2.4リットルに排気量アップしてパワフルになっているし、骨格のプラットフォームはキャリーオーバーだが、新技術のスバルインナーフレーム構造で剛性は先代の5割増し。コレが大きいと思う。
――ほかにも理由が?
小沢 急速に進む世界的な環境規制を考えると、スバル自慢の水平対向エンジンだって、いつまで味わえるかわからんよ。そういう意味も含め、この2代目GR86&BRZは絶対乗って損ナシ!
●小沢コージ
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週土曜17時50分~)。YouTubeチャンネル『KozziTV』。著書に共著『最高の顧客が集まるブランド戦略』(幻冬舎)など。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員