発売前から予約が殺到し、年間販売計画を大きく超えそうなホンダの新型バイク、GB350。人気の理由はいったいなんなのか? モーターサイクルジャーナリストの青木タカオが公道に引っ張り出し、その人気の秘密に迫った!
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■GBはインドでも大ヒット中!
――ホンダの新型バイクがバカ売れってマジですか?
青木 GB350が大変なことになっています。昨年10月、年間約2000万台の販売規模を誇る世界最大のバイク市場インドで発売を開始したのですが、わずか4ヵ月で1万台を突破する大ヒットを記録!
そのウワサを耳にした日本のバイクファンから渇望され、今年4月に国内デビューが決まったのですが、予約が殺到し、一時、オーダーがストップしました。現在も、年間4500台の予定生産分を大きく上回るペースで売れに売れているんですよ。
――なぜGB350はそんなに売れてんスか?
青木 1970年代からタイムスリップしてきたかのような、「これぞ単車!」という懐かしさのあるシンプルな車体に、"ビッグシングル"と呼ばれる伝統的な空冷単気筒エンジンを積むモデルは、1978年から変わらぬ姿で超ロングセラーを続けていたヤマハSR400の独壇場でした。
しかし、厳格化する環境規制で惜しくも21年式のファイナルエディションをもって販売終了。いわゆるトラディショナルなバイクを好むライダーは悲嘆に暮れていたのですが、そこにさっそうと現れたのがGB350です。そりゃ、ファンは悶絶(もんぜつ)ヨガリ泣きですよ!
――確かに、GB350はシンプルなスタイルですね。
青木 真ん丸のヘッドライト、ティアドロップ型の燃料タンク、長いシート、ツインサスペンション......昨今のトレンドであるネオクラシックではなく、コイツはまんまレトロなんですよぉぉぉ!
――で、もう乗ったんスか?
青木 もちろん! シングルエンジンの魅力は乗り手のハートを揺さぶるバイブレーション、つまり心臓が脈打つような躍動感がキモです。
GB350は、往年のバイクがそうだったように、太い低速トルクやゆったりとしたエンジンフィーリングが持ち味のロングストローク設計で、実に小気味のいい"鼓動"が演出されています。オートバイで走る楽しさがあふれる昭和風味な乗り心地が魅力です。
――ホンダのこだわりは?
青木 開発責任者にネチネチ聞きましたが、GB350はゆったりとした操作性や取り回しやすさを狙ったと。ちなみに車体やエンジンをすべて新設計しています。ホンダは、バイクそのものより乗り手が操っている姿こそ最も美しいと考え、上半身の姿勢が起きた堂々としたライディングポジションにしたそうです。
実際乗るとわかるんですが、混雑した都市部でも周囲の状況が非常に見渡しやすくなっています。しかも、ハンドルの切れ角も左右43度と大きくしたことで、小回りも利くようになっている。
――ふむふむ。
青木 極めつきはシフトペダルです。なんと1960年代に見られたシーソーペダル式になっている。ツマ先だけでなくカカト側でもギアチェンジできるんです。こういう昭和感が本当にタマりません。
――とことん味わい深さを追求したバイクであると?
青木 GB350は古めかしさのなかに、路面状況に応じて駆動力を電子制御するセレクタブルトルクコントロールも搭載するなど、最新の安全技術も搭載しています。世界最高峰の二輪レースで培ったホンダの技術がぶっ込まれたレトロ風バイクですね。
――なるほど。
青木 ちなみにホンダモーターサイクルジャパンの室岡克博社長にGB350の大ヒットの理由を聞きましたら、「とっつきやすさがウケている」と分析されていました。
――GB350は即買いOK?
青木 もちろん! ただし、売れに売れているので、手に入れたい人は迷わず販売店へダッシュですよぉぉぉ!
●青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。現役の二輪専門誌編集長だ