スズキのフラッグシップモデルであるハヤブサは2017年に生産を終了。しかし、4月7日に4年の沈黙を破り完全復活。モーターサイクルジャーナリストの青木タカオが、進化した3代目ハヤブサを試乗し、その実力に迫った!
■3代目のエンジンはターボや6気筒も検討
青木 1999年の初代誕生以来、世界累計19万台以上を販売するスズキのフラッグシップが、13年ぶりにフルモデルチェンジしました! しかも、すでに販売店には注文が殺到し、納車待ちの状態が続いているんですよぉぉぉ!
――早くも大人気であると?
青木 ええ。何せハヤブサはバイク界のレジェンドモデル! 世界の二輪メーカーが最高速を競い合った1990年代に、空力特性を徹底追究した有機的フォルムを採用し、問答無用の実測300キロ超えを達成した怪物マシンですから!
――二輪で300キロ......マジでハンパないスね?
青木 しかも、当時の二輪市販車世界最速としてギネスに公認され、それ以来、"アルティメットスーパースポーツ"として世界中のファンを熱狂させているんです。
――ハヤブサはファンの熱量もハンパないらしいスね?
青木 鳥取県八頭(やず)町の隼(はやぶさ)駅(若桜[わかさ]鉄道)はハヤブサライダーの集まる聖地なのですが、スズキが協賛し、「隼駅まつり」まで行なわれましたからね。
――なんスか、それ?
青木 今回のフルモデルチェンジを機に、今年5月の大型連休に3代目ハヤブサのラッピング列車が運行したんですよぉぉぉ!
――(無視して)で、新型ハヤブサにはもう乗った?
青木 当然、速攻で公道試乗しましたよ! 二輪業界の大ニュースですから!
――3代目も速い?
青木 常用速度域での加速はさらに鋭さを増していますが、高級自動車のような超上質な乗り心地も兼ね備えています。しかも、コーナーでは前後輪が路面に吸いつくような安定感があり、切り返しで車体を起こすときも「ドッコイショ!」という感じではなく、ヒラリと軽快なんです。
――ふむふむ。
青木 さらに私が注目したのは、最新の電子制御「S.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)」。コイツのおかげで、ハヤブサのモンスター級のパワーを完全コントロールできてしまう。また、任意で設定した速度を超えないようにする「アクティブスピードリミッター」は二輪界で世界初採用! ジャジャ馬が洗練された競走馬に仕上がったような印象です。
――デザインに関してはどう評価しているんスか?
青木 3代目は奇をてらわず正常進化したと思います。デザインを含め、ハヤブサらしさはそのままに扱いやすさ、快適性、運動性能、先進性......全方位で歴代モデルを上回っていると思います。
――なるほど。
青木 何しろ3代目ハヤブサは、鈴木俊宏社長がテストコースで実際に乗り、その実力を確かめる力の入れよう。まさに社運をかけたビッグプロジェクトなんです。
エンジンも、ターボや6気筒などを試したそうですが、トータルバランスに優れる1340㏄の排気量をそのままに直列4気筒エンジンのカムシャフトやピストン、コンロッドなどの内部パーツを全面的に見直し、効率と耐久性を向上させている。設計担当も「10万、20万、なんなら50万㎞乗ってください!」と3代目の頑丈さに自身満々でしたね。
――ちなみにどんな人がハヤブサを買っているんスか?
青木 200万円超えのスズキの最上級車なので、40代以上の男性が多いそうです。
――3代目は海外でも大人気みたいですね?
青木 もともと欧米では「busa(ブサ)」という愛称で親しまれ、絶対的な人気を誇っていました。現在、ハヤブサの生産拠点は静岡の浜松ですが、二輪市場が活発なインド市場でも生産を開始します。部品を日本から輸出し、インドの工場で組み立てを行なうそうです。新型ハヤブサの生産を海外で行なうのは初の試みです。
――ズバリ、3代目ハヤブサは買いですか?
青木 実は"脱・純ガソリン車"の流れが二輪業界にもあります。正直、もうこんな怪物マシンは二度と出ないかも。3代目ハヤブサが欲しい人は迷わずどうぞ!
●青木タカオ(あおき・たかお)
モーターサイクルジャーナリスト。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。現役の二輪専門誌編集長。