EVシフトの波は本格オフロードSUVにも押し寄せている。今のうちに乗っておくべきガチ勢はどれか? 自動車ジャーナリストの竹花寿実(たけはな・としみ)が、独断と偏見で珠玉の4台を勝手に選んだ!
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■ドイツの猟師に人気のジムニー
――今年3月、ジープが試作EV「マグニート」を発表して大きな話題を呼びました。
竹花 ジープ・ラングラー、ランドローバー・ディフェンダー、メルセデス・ベンツのGクラスなど本格オフロード4WDは、EV化の話がすでに出ています。
ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを搭載する本格オフロード4WDの濃密な乗り味を堪能できるのは今のうちかなと。人生で一度は経験して損のないクルマだと思います。
――コロナの影響でキャンプが注目を集めていますしね。
竹花 キャンプに行くならやっぱりSUVです。キャンプサイトまでのちょっとしたオフロードでも安心ですし、地域のルールは守ってほしいですが、河原や林道でも躊躇(ちゅうちょ)せずに走れるので非日常のワクワク感が大きいと思います。
――てなわけで、買って損ナシのSUVガチ勢を教えてください!
竹花 第1位はスズキ・ジムニーしかありません。2ドアの軽自動車なので、家族キャンプには向きませんが、ソロキャンプやデュオキャンプなら十分です。林道や河原でも世界トップレベルの圧倒的なオフロード走破性を披露してくれます。
――ちなみにジムニーは海外でも人気なんスか?
竹花 ヨーロッパでも一部に熱狂的なファンがいます。ドイツでは1980年から販売しており、以前は「サムライ」という車名でしたが、先代から日本で「ジムニー・シエラ」として販売しているワイドボディのモデルを「ジムニー」として売っています。
――どんな人が乗っている?
竹花 猟師です。ドイツは各地にジビエ料理専門のレストランがあるくらい、狩猟が盛んなんです。イノシシやヘラジカ、ウサギ、キジ、カモなどなんでも食べます。特にイノシシのソーセージの味は格別です。ドイツ料理は豚肉だけじゃないんです!
――ドイツにはけっこう猟師がいると?
竹花 そのとおり。彼らは獲物を追いかけて森の中を走るので、コンパクトで悪路走破性に優れたジムニーを「ヤーグトヴァーゲン(狩猟車)」として相棒にしている人が多いんですね。
――第2位は?
竹花 "オフロードの王者"であるジープ・ラングラーです! ショートボディでもロングボディのアンリミテッドでも、文句なくカッコいい。キャンプ道具を積み込んで走りだした瞬間、「冒険に行くんだ」という感覚を抱けます。付け加えると、最強グレードのルビコンならオフロードで無敵の走破性を味わえます。
――続いて第3位は?
竹花 ランドローバー・ディフェンダーです。昨秋、日本で販売を開始した新型は、先代のワイルドなイメージを継承しながら、最新のメカニズムと現代的なデザインを見事に融合した、とても魅力的なモデルに進化しています。当初はロングボディの110だけでしたが、ショートボディの90も先日追加されて選択肢が広がっています。
――走りは?
竹花 新型ディフェンダーは、冗談抜きに走りが軽快で乗り心地も素晴らしいんです。オプションも膨大に用意されていて、好みのスタイルにカスタマイズできるのも魅力です。ちなみに最大水深900mmは他の追随を許しません。
――そして第4位は?
竹花 メルセデス・ベンツのGクラスですね! 2018年に登場した現行Gクラスは、もちろんオフロード性能は抜群に高いし、スタイルもオリジナリティにあふれていて、素晴らしいクルマですが、都会的なイメージが強い。軍用車両にルーツを持つ、超本気のオフローダーなんですが、今ではラグジュアリーカーの傾向が若干強いかなと。
でも先日追加されたパワフルな3リットル直6ディーゼルターボを搭載したG400dなどは、キャンプでも大活躍間違いなしです。
――魅力的なクルマばかりですが、お値段が気になります。
竹花 ジムニー以外は確かに国産SUVと比べると、お安くはないのですが、実は今回挙げた本格派のSUVはどれも大人気なので、リセールバリューが非常に高い。要するに資産価値があるわけです。それを考えると、お買い得なクルマだと思いますよ。
●竹花寿実(たけはな・としみ)
自動車ジャーナリスト。1973年生まれ。東京造形大学デザイン学科卒業。自動車雑誌の編集者などを経て2010年に渡独。ドイツ語を駆使し、現地で自動車ジャーナリストとして活躍。現在、活動拠点を日本に移してドイツの自動車メーカーの最新動向、交通政策、道路環境、運転マナーなどを発信中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員