ホンダ「ヴェゼル」発売:2021年4月、価格:227万9200~329万8900円、値引き:8万円、リセール:B+、ボディサイズ=全長4330㎜×全幅1790㎜×全高1590㎜

4月に発売開始されたコンパクトSUV、2代目ヴェゼルが、月間目標台数の6倍と絶好調! なぜこんなに人気? おなじみ自動車ジャーナリストの小沢コージが大人気のヤリスクロスなどと比較し、人気の秘密と実力をガッシガシ解説。

■新型ヴェゼルは、ニトリ大作戦に出た!

小沢 ホンダファンに朗報だぜ! コンパクトSUVの2代目ヴェゼルが発売1ヵ月で受注3万2000台と大爆発! ぶっちゃけ、昨年末にマイチェンしたときのN-BOXよりも売れている! N-BOXに続くホンダの新しい屋台骨誕生でしょう。本来、エース級に売れないとマズい4代目フィットがイマイチなだけに、ヴェゼルの爆売れでホンダも安堵(あんど)したはず。

――そもそもヴェゼルはどんなクルマなんスか?

小沢 初代ヴェゼルは2013年末に登場すると、瞬く間に人気大爆発! 14年から3年連続、そして19年も国内SUV販売でぶっちぎりのトップに立った。世界累計は384万台で、まさにホンダの戦略車。それだけに絶対に失敗が許されないクルマでもある。ところが、2代目は過去に例がない大胆戦略を取ってきた。コイツはホンダの"ニトリ大作戦"よ! 

――えっ、どういうこと?

小沢 2代目ヴェゼルの開発エンジニアも「今回は特に力を入れた」と話していたが、まず驚いたのは自らの掟(おきて)を破ったデザインよ。ホンダは初代が売れたら2代目は必ず正常進化路線がお約束なの。2代目フィットも、2代目オデッセイもそうだった。

ところが2代目ヴェゼルは、初代とはまったく異なるクオリティとデザインで勝負に出た。横の抑揚をあえて抑えたストレート基調で、それでいて彫りの深いデザインがスゴい。

――ちなみにネットでは、そのデザインについて、「フロントマスクはマツダ、リアはトヨタのSUVに激似」「コレはヴェゼルじゃなく、CX-ハリアーだ!」などと揶揄(やゆ)されています。

小沢 それは日本人がデザインを2次元でとらえるクセがあるからなんだよ! 立体で見ると全然違って超オシャレ。最近のホンダデザインのなかでは間違いなく秀逸でクール!

骨格は先代モデルをブラッシュアップ、シャシー性能は大幅に向上した。全長は初代前期型よりも35㎜長い
リアのランプははやりの横一文字タイプ。アクティブな印象を受けるリアバンパー

――なるほど。で、ニトリ大作戦って結局なんなんスか?

小沢 2代目ヴェゼルの車内の広さとインテリアのクオリティはマジでスゴいワケ。それでいて価格は約228万円スタートと超お買い得! まさに"お値段以上"なんだってば!

――なぜ、そんな価格を実現できたんスか?

小沢 骨格は初代のキャリーオーバーで上手にコストを下げ、同時にボディ剛性は上げて性能を良くした。さらにリアシートは広くなり、身長176㎝のオザワが座っても膝前に握りこぶしが3つ入る。

それでいてラゲッジ容量は390Lをキープしているからハンパない! 上級グレードは革風素材のプライムスムースを上手に使い、上質に仕上がっている。シートクッションもフランス車並みに柔らかい。

水平基調のダッシュボード。メーターはフル液晶タイプを採用。USBソケットは前後席につく
荷室容量は初代より少し減った一方、後席空間のスペースはかなり広くなっている!

――走りは?

小沢 ハイブリッドはフィット譲りの2モーター式で加速はほぼ100%電動。電動風味が今まで以上に強く、特に発進はEVっぽくて気持ちいい。つけ加えると燃費も良好で、WLTCモードで25㎞。実燃費も20㎞前後を誇る。

――ズバリ聞きますが、現在、日本で一番売れているコンパクトSUVであるヤリスクロスと2代目ヴェゼル買うならどっち?

小沢 両方! というのも、確かに売れ筋の価格はかぶるけど、厳密に定義すると、ヤリスクロスは全長4.1m台のSUVで、ヴェゼルよりチト小さいんだよ。

――同じコンパクトSUVでも比較対象にはならないと?

小沢 いや、どちらも1.5Lのガソリンと1.5Lのハイブリッドが選べる5人乗りSUVで、ラゲッジ容量はどちらも390Lで差がない。大きな違いはリアシートの広さとクオリティ。

オザワがヤリスクロスに乗ると膝前に握りこぶしがひとつ程度。だから大人2名で乗るならヤリスクロス、家族5名で乗るならヴェゼルって感じ。あるいは大勢で長距離を走る人にもヴェゼルがオススメ。後席の居住性が全然違うからね。

トヨタ「ヤリスクロス」発売:2020年8月、価格:179万8000~281万5000円、値引き:20万円、リセール:Bボディサイズ=全長4180㎜×全幅1765㎜×全高1590㎜。欧州カー・オブ・ザ・イヤーを戴冠するなど、世界中で評価されているヤリスの走り。その走り味をしっかり受け継いでいるのがヤリスクロスだ
テールランプは定番の横一文字タイプ。ちなみにリアバンパーの占める割合が大きく、ワイルドな印象だ
荷室の容量は後席使用時で390L。ちなみにリアゲートはハンズフリーの電動タイプになっている
ヤリスクロスは電動パーキングブレーキを採用。アダプティブクルーズコントロールは全車速追従機能付きだ

――インテリアはどうです?

小沢 インテリアのクオリティもヴェゼルのほうが上。ヤリスクロスは少々やぼったく、ヴェゼルのほうがオシャレ度は高いね。リアシートのフカフカ度もヴェゼルの勝ち。

――エンジンは?

小沢 正直、ヤリスクロスはガソリンもハイブリッドも1.5Lの3気筒だが、ヴェゼルは1.5Lの4気筒エンジンを搭載しているから静かだよ。

――2代目ヴェゼルは全部がスゴいと?

小沢 ただし、ヤリスクロスは全長が4.1m台で、ヴェゼルは4.3m台だから取り回しを考えるとヤリスクロス。あと顔の迫力で考えたらヤリスクロスだ。宇宙人みたいでインパクトは大!

――コスパは?

小沢 ヤリスクロス。だって200万円切りのモデルでも先進安全のトヨタセーフティセンスが標準装備なのはスゴい!

――ほかに2代目ヴェゼルのライバルはいない?

小沢 オザワの独断と偏見だが、日産のキックスとマツダのMX-30も、2代目ヴェゼルの購入を検討するならぜひ比較するべし!

日産「キックス」発売:2020年6月、価格:275万9900~286万9900円、値引き:10万円、リセール:B、ボディサイズ=全長4290㎜×全幅1760㎜×全高1610㎜。海外ではガソリン車もラインナップされているキックスだが、日本国内では日産自慢の「e-POWER」専用車。ちなみにライバルより室内は広い

荷室の容量は5人乗車時でも423Lを誇り、ゴルフバッグを3つ収納できる。荷室の床面が低いのも特長だ
メーターパネルは7インチのカラーディスプレイと速度計を組み合わせる。シートは合成皮革
日産が誇る先進運転支援システム「プロパイロット」は、キックス全車に標準装備となっている
マツダ「MX‐30」発売:2020年10月、価格:242万~265万6500円、値引き:5万円、リセール:B、ボディサイズ=全長4395㎜×全幅1795㎜×全高1550㎜。観音開きドアを採用するMX-30のエンジンは、2L直4DOHCエンジンをモーターがアシストするマイルドハイブリッドを搭載。上質な加速が魅力

ラゲッジスペースの容量は400Lとけっこう広い。スーツケースを4個積み込める
内装は水平基調を強めてワイド感を強調。センターコンソール周辺にはコルクを多用している

●小沢コージ
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週土曜17時50分~)。YouTubeチャンネル『KozziTV』。著書に共著『最高の顧客が集まるブランド戦略』(幻冬舎)など。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員