昨年7月に世界初公開された日産の新型EV「アリア」の受注が開始された。アリアはEV出遅れがささやかれる日本の反撃の一手になるのか? 自動車ジャーナリストの小沢コージ氏が解説する。
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■アリアの航続距離は、リーフの1.3倍以上!
小沢 6月4日、ついに日産の命運を握る新型EV(電気自動車)「アリア」の予約受注が開始された! しかも、予約開始から10日で4000台の受注は予想以上よ!
――スゲェ!
小沢 世界初の量産EV「リーフ」を2010年から売ってきたパイオニアたる日産の底力が出ている!
――なんかアリアの売り方もおもしろいらしいスね?
小沢 そう! 実は日産初となる世界共通の専用予約サイトを開設したんだ。ちなみに日本の場合、会員サイト『クラブアリア』に入会すると、予約注文や商談などがオンラインでできる!
――もうアリアの全モデルが買えるってこと?
小沢 いや、予約注文限定車の「リミテッド」というモデルのみだね。ただし、このリミテッドの装備が超充実。ハンズオフを可能とする「プロパイロット2.0」などの先進運転支援システムを標準で採用してんのよ。
さらに電動パノラミックガラスルーフ、アリア専用に開発されたという上級サウンドシステムまで装備されている!
――走りはどんな感じになりそうスか?
小沢 実は今回、ご開帳されたアリアのプロトタイプ的なクルマにオザワは試乗している。見た目は現行リーフだったが、中身は日産が誇る次世代電動駆動四輪制御技術「e-4ORCE(イーフォース)」を搭載。
コイツはアリアにブチ込まれた技術なんだが、マジで斬新なの。日産独自の電動コントロール技術で"気持ちいいけど酔わない運転"を実現していた。コイツはガチでスゴい。
――ほおほお。
小沢 つけ加えると、テスラがガキっぽいビックリ風味のEVだとしたら、アリアは包容力あるアダルトな走りを実現している。本物のアリアの試乗が今から楽しみだよ!
――なるほど。
小沢 ただ、オザワ的にはアリアの注目はデザインとサイズだと思っている。端正でエレガントなフォルムは美しい。まぁ、日産らしいアクの強いデザインでないのは残念だが、圧倒的な鮮烈さはある。
ボディサイズは、全長4595mm×全幅1850mm×全高1655mmのミディアムSUV。コイツは世界的にウケるボディサイズよ。内装の質感もかなり高く、和洋折衷な感じに仕上がっているぞ!
――ちなみにアリアの航続距離はどんなもんスか?
小沢 航続可能距離はリーフの1.3倍以上となる最大610kmを誇る世界レベルよ!
――アリアがスゴいのはわかりましたが、現在のEV市場は米テスラ、欧州に、中国のメーカーが優勢を占めています。日本のEVはその壁を突き破れますかね?
小沢 今、ニッポン自動車業界は底力を発揮しつつあり、EVで大逆転の兆しアリよ!
――具体的には?
小沢 ついにトヨタが動き、スバルと共同開発したSUVタイプのEV「bZ4X(ビーズイーフォーエックス)」を今年5月に発表! コイツの発売は来年だが、オザワが耳にしている限り、トヨタがフルスイングした意欲作よ。さらにホンダは「ホンダe」、マツダは「MX-30EVモデル」を発売し、どちらも好評。
そして今回、EVの老舗でもある日産が満を持してアリアをぶっ込んだ。値段の高さが唯一気になるけどそれも補助金次第。こっからニッポンは国を挙げてどこまでEVで反撃し、進撃できるか見ものだぜ!
●小沢コージ
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週土曜17時50分~)。YouTubeチャンネル『KozziTV』。著書に共著『最高の顧客が集まるブランド戦略』(幻冬舎)など。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員