ホンダが世界に誇る小さな巨人「モンキー」が、今年生誕60周年を迎えた。それにしても、どうしてこんなに長く愛され続けているのか? モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が粘っこく解説する。
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■遊具として誕生したホンダ・モンキー
青木 ウッキー! 今年、ホンダ・モンキーがめでたく生誕60周年を迎えました!
――でも、正直、あまり話題になってないスよね?
青木 実は今年のゴールデンウイーク中、カスタムコンテストや、公開討論会で常に盛り上がるオーナー親睦会「第13回モンキーミーティングin多摩」をホンダが企画していましたが、東京都の緊急事態宣言で会場が使用できず断念。盛り上がるタイミングを完全に逃したので、ぜひ60周年を祝いたい!
――1961年に誕生した初代は市販されなかったそうですね?
青木 よくぞ聞いてくれました! 初代は1961年に東京・日野市にオープンしたホンダが運営する遊園地「多摩テック」の遊具として誕生したんです。
サスペンションのない赤い小さなフレームに、3年前に登場したばかりのスーパーカブのOHV50ccエンジンを積み、白いカバーを燃料タンクに、5インチの前後ホイールを足回りにセットしていました。
子供たちに、エンジンのついた乗り物を操る楽しさを味わってもらおうというホンダの創始者である本田宗一郎氏の熱い思いと夢がそこに込められていたんです。
――多摩テックは現在もあるんスか?
青木 2009年まで48年間営業を行ない、多くの人を魅了しました。
――なるほど。モンキーが市販されたのはいつ?
青木 市販モデルは1963年の輸出仕様からスタートし、国内向けは1967年に登場しました。新作フレーム、燃料漏れを防止するタンク、座面をチェック柄とする遊び心あふれるシートを備え、ハンドルはダイヤルを緩め、折り畳める構造になっていました。当時、クルマのトランクに横倒しで積むことができる斬新さが大ウケしました。
――レジャー先で楽しむ大人のオモチャだったと。
青木 そして1974年にはリアサスペンションをセット! 荷物を積むキャリアも備え、モンキーは単独ツーリングできる快適性と走行安定性を手に入れました。
続く78年にはタンク容量が大きく、ハンドルの折り畳み機構のない「ゴリラ」、1987年にスーパースポーツ風の「モンキーR」など派生モデルも数多く誕生して話題に!
――ん? でもモンキーは生産中止になりましたよね?
青木 そのとおり。発売から50周年に当たる2017年までで累計生産台数は約66万台に達しましたが、厳格化される環境規制に対応できず生産終了しました。
ただし、翌18年に125cc化されて復活! 今年6月までに累計販売台数5万台超の大ヒットモデルになっています。そのうち約1万7000台が国内出荷ですから、日本のモンキーファンがいかに熱いかがわかります。
――50cc時代と合算すると約71万台スか! スゲー! ズバリ、モンキーの魅力とは?
青木 見た目が愛くるしく、乗るとほのぼのとした気分にさせてくれるのが大きい。現行モンキー125はヘッドライトをLED化し、足回りも12インチのアルミキャストホイールを履き、前後のブレーキはディスクで、ABS付きモデルまで用意。
もはやスポーツバイクのように立派になりましたが、モンキーならではの小回り性能は継承。混雑する都会も軽快にスイスイ移動でき、3密回避のコロナ時代に注目を浴びています。
――新型の情報もある?
青木 実はタイや欧州ではすでに新型モンキー125が発表されています。この新型は国内導入間違いナシ。コイツは爆売れの予感です。ウッキー!
●青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。法政大学文学部地理学科卒業。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。専門誌『ウィズハーレー』(内外出版社)の編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』。