ホンダに続き、マツダも電動化を進めると発表。この先、電動化が進むと、MT(マニュアルトランスミッション)の消滅も!? 今、乗っておきたい手頃なMT車をジャーナリストの渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)氏が厳選した!
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■200万円台前半で手に入る極上MT車!
――世界中で環境規制が厳しさを増し、純ガソリンエンジン車を廃止する流れがフル加速しています。ホンダは4月23日に日系自動車メーカーとしては初となる「脱・純ガソリン車」を表明して世界的に話題を呼びました。
渡辺 三部敏宏(みべ・としひろ)新社長は、記者会見で2040年までに世界で販売するすべての新車をEV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)にすると発表しました。これは低炭素社会の実現に向けたホンダの挑戦です。
――マツダも6月17日に電動化に本腰を入れるという発表をしましたよね?
渡辺 ええ。2025年までに電動車を13車種導入する予定で、あのロードスターも電動化するそうですよ。
――ちなみに純ガソリン車が消えたら、MT車はどうなるんスか?
渡辺 シンプルなハイブリッドならMTも設定できます。以前、ホンダのCR-Zが、ハイブリッドに6速MTを用意していました。現行型でも、海外向けのスイフトスポーツは、1.4リットルターボにマイルドハイブリッドと6速MTを組み合わせて売っています。
――EVやストロングハイブリッドにMTは搭載できる?
渡辺 構造的にMTを採用するのは難しく、電動化時代の到来とともにMTは消える運命です。まぁ、すでに日本で売られている新車の乗用車は、約98%がAT車ですが。
――MT車ってチョー絶滅危惧種じゃないスか!
渡辺 ですから、MT車を楽しむなら今のうちなのです。
――ズバリ、お買い得なMT車の推しはどれ?
渡辺 トップはコンパクトなスポーツモデルを推奨します。狭い峠道でも運転しやすいし、動力性能も特に高くないため、MTを駆使してエンジンパワーを出し切る楽しさが味わえる。そう考えるとスズキのスイフトスポーツは激推しできます!
――どこが推し?
渡辺 走りの素直なスイフトに、1.4リットルターボと6速MTを搭載し、サスペンションには名門「モンロー」のパーツを使っています。動力性能は2.3リットルのノーマルエンジンに匹敵するレベル。特に峠道はよく曲がり運転が本当に楽しい。価格は200万円台前半と割安なのも大きな魅力です。
――続いての推しは?
渡辺 マツダ2のクリーンディーゼルターボです。MTを上手に操れば、1500~2000回転の低回転域で湧き上がる駆動力を実感しながら滑らかに加速することが可能です。こちらは200万円を切る価格設定がうれしい。
――軽からもランクイン?
渡辺 ホンダのN-ONEのRSを忘れてはいけません。軽自動車でも内外装は上質で、6速MTのシフト感覚も絶妙です。安定性と乗り心地も含め、コンパクトカー並みの満足度を得られますよ。
――最後に総括を!
渡辺 そもそもMT車は絶滅寸前の存在です。電動化の波が来たら淘汰(とうた)される可能性が非常に高いです。乗って楽しいお買い得なMT車を満喫するなら今ですよ!
●渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)
カーライフジャーナリスト。1989年に自動車購入ガイド誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長に。1997年に同社取締役を兼任。その後、フリーランスに。著書に『運転事故の定石』(講談社)など。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。