昨年12月に改良を受けたホンダのN‐BOXが売れている。特にオラオラ系のカスタムモデルが大人気。そこで、自動車ジャーナリストの小沢コージ氏が公道試乗し、その実力に迫った。
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■N-BOXカスタムが売れているワケ
アチぃアチぃ! 奇跡の国民的軽自動車N-BOXの人気がチョー激アツだぜ!
販売トップを争うライバルのトヨタ・ヤリスシリーズが、今年上半期(2021年1月~6月)のトップに輝き、N-BOXの独走を完全に止めたかに思えたが、今年6月の月販で事件が起きた。
前年同月比12.4%増となる1万7400台以上を売り、10ヵ月ぶりにN-BOXが月販首位の座を奪還! さらにつけ加えると、5月末にはホンダ車史上最速で累計200万台突破という大記録も達成している!
まさに衰え知らずだが、その人気の秘密はいったいどこにあるのか? 販売を牽引(けんいん)する新型N-BOXカスタムを公道に引っ張り出して走り倒した!
まずN-BOXの人気が再び爆発しているワケは、昨年12月に行なわれた初のマイチェンがデカい。当初、このマイチェンは自動車業界で賛否両論があった。というのも、肝心の外観がノーマルボディに限っていうとほぼ同じ。新旧の明確な違いを語れるのは旧型オーナーのオザワぐらいのモンだろう。
その一方で、「見た目のインパクトが弱い」という声が多かったワル顔のN-BOXカスタムは、昨年のマイチェンで大変身! もともとワイルドなクロームメッキグリルをさらにギラギラ化させたのである。
マイチェン前はグリル下が男性用ブリーフのように逆三角形気味だったが、新型はエラの張った横長逆台形に変更した。その結果、シャープさのなかにも程よいエロさが感じられる、実にイイ顔つきになった。
同時にリアのメッキラインを増やした上、フロントナンバープレートをあえてノーマルとは違うド真ん中に配置。ノーマルとカスタムの違いがより明確になった。マジな話、販売比率もマイチェンで激変している。かつてはカスタムとノーマルの販売は5対5だったが、新型は6対4の割合でカスタムのほうが売れている。
そのほか、内外装に新配色を取り入れたコーディネートスタイルを初設定。今回、オザワが借りたカスタムのターボがそうだが、よくあるツートーンボディにとどまらず、差し色をミラーやホイールにも採用したことでオシャレ度がアップしている!
内装も凝っていて、ラメの入ったワインレッド調パネルや、かつてないブラック樹脂も採用。マイチェン前も軽とは思えぬ内外装の質感だったN-BOXカスタムだが、新型は別格感がさらにフル加速した。
また、新型は先進安全の「ホンダセンシング」も充実! ACC(アダプティブクルーズコントロール)の作動速度域が時速120キロまで伸び、高速レーンキープアシストも進化。高速道路ならステアリングに手を添えていればほぼ勝手に車線内を走ってくれる。ただし、ACCが全車速対応でないのは不満だ。
そして注目の燃費性能もハンパない。オザワの愛車であるマイチェン前のノンターボのN-BOXの平均燃費はリッター16kmだ。この数値はエンジンをかけっぱなしで停止している時間も含めてなので相当優秀なのだが、今回ロングドライブしたカスタムもスゴかった!
高速を利用しながら約100kmを走破したが、真夏ゆえにエアコンをガンガンにかけた状態ながらもリッター15㎞台をキープ! 燃費に不利なターボモデルなのに非常に優秀な結果を出してくれた。ちなみにパワー感も64PSなので軽自動車を感じさせない力強さがあった。
ズバリ、ホンダならフィット、トヨタならカローラクラスから乗り換えても見た目、広さ、走り味に不満はない。それが新型N-BOXだ。それほどの仕上がりを誇る軽自動車なのである。
●小沢コージ
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週木曜17時50分~)。連載多数。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeチャンネル『KozziTV』