7月にフルチェンしたトヨタのアクアの販売が絶好調だ。すべて新型となった国産コンパクトカーの買いはどれ!? てなわけで、今、注目を集めている4台を引っ張り出し、自動車ジャーナリストの小沢コージ氏が公道試乗! 徹底チェックした。
■新型アクアの出来がハンパねぇ!
小沢 ついにニッポンコンパクトカー市場に大本命が登場したぜぇ! ソイツの名は9年半ぶりに生まれ変わった2代目アクアだ。累計187万台を誇るチョー怪物HV(ハイブリッド)で、初代は登録車3年連続トップを叩き出した元祖国民的コンパクトカーよ。へたすると、この2代目アクアは同じトヨタのヤリスを食う可能性が高い!
――つまり、今、日本で一番売れているトヨタ・ヤリスよりも売れる要素があると?
小沢 そう! ヤリスもそうだし、ホンダのN-BOXも蹴散らす予感がプンプン漂っている。何せ新型アクアはヤリスと同じ新世代プラットフォームとエンジンを使っているが、アクア独自の技術もぶっ込みまくっているから出来がマジでハンパない!
――売れに売れているヤリスの良さを継承し、さらに磨き上げたと?
小沢 そのとおり。燃費はヤリスがクラストップのリッター36㎞、アクアが35.8㎞とほぼ変わらない。何より質感が全域で爆上げ状態!
――具体的には?
小沢 論より証拠ってことで、現在販売トップを突っ走るヤリスと2代目アクアを比べてみよう。まずボディサイズはアクアのほうが大きい。それにより先代アクアの課題だったリアシートの狭さが大幅に改善された。新型のボディは全長4m強で全幅は1.7m弱。
ココまでは旧型と変わらないが、全高が3㎝も上がったことで室内空間が広がった。ホイールベースも5㎝伸びたので、足元の空間に余裕ができた。身長176㎝のオザワが後部座席に余裕で座れるからね。
しかも、デザインはアクアらしいスポーティさを保ちつつ、全体的な見た目がヌメヌメした曲線デザインとなった。その結果、セクシーさが増したんだよ!
――確かに実車を見ると、新型アクアは先代よりは背が高くなりましたが、実はヤリスよりも車高は低いんですよね。
小沢 うん。今回、アクアとヤリスの最上級グレードを比較したが、アクアのほうがLEDライトの輪郭やグリルの縁取りが濃くて印象に残る。リアもスラリと長いしね。
――2代目アクアの内装はどう評価しています?
小沢 お世辞抜きに2代目アクアはインテリアのクオリティがスッゲー上がった。室内の樹脂はプラスティッキーじゃないし、本革風シート(オプション)の上質感もヤリスより断然イイ! オマケに最上級グレードには専用の10.5インチの大型ディスプレイを搭載している。このナビが見やすいだけでなく、エアコンなどの操作も実にスムーズ。
ATのシフトもヤリスは古くさいマニュアル式だが、アクアは新しい電子式で超カッコいい。マニュアルのほうが年配でもシフトミスはしにくいだろうが、電子式のほうがイマドキ感あるし、何より操作が軽くて楽チンなんだよ。
■新型アクアの隠し味はレクサス!?
――2代目アクアの走りは?
小沢 マジな話、アクアは驚くほど走りが上質化した。ヤリスも同じ新世代プラットフォームなのでボディは軽量かつ高剛性でキビキビ走るんだが、ロードノイズが若干大きい。
その点、アクアは乗り心地が大きく向上。特に最上級グレードの乗り心地がスゴい。実はレクサスに使われ、大好評のスウィングバルブショックアブソーバーを採用しているんだ。コイツが極低速域から効いている。2代目アクアはまさに小さな高級車だよ!
――そこまで言う!?
小沢 さらに2代目アクアとヤリスが大きく違うのは電動加速の風味よ。基本的にシステム出力は116PSの1.5Lハイブリッド方式は変わらないが、2代目アクアの上級グレードは新開発のバイポーラ型ニッケル水素電池を搭載している。
その結果、電気を出し入れできる量が増え、ヤリスが時速20キロ程度までしかEV走行ができないのに対し、2代目アクアは時速40キロまでEV走行が可能になっている。しかも、電気自動車並みに発進からモーター単独で走れてしまうんだ!
――ほおほお。
小沢 付け加えると、2代目アクアはアクセルを緩めると減速するトヨタ初の"快感ペダル"を採用し、ワンペダルドライブができる。また、災害時にアクセサリー電源から1500Wを取り出せる非常時給電モードも全車標準よ。日本向けに造り直した超上質コンパクトHVなんだ!
――なるほど。ちなみにヤリスの乗り味は?
小沢 4人乗りのスポーツカーって感じかな?
――アクアをホメすぎでは?
小沢 こればっかりは出来がスゴいんだから仕方ない! ただ、アクアは初代で消滅するウワサもあったんだよ。確かに初代はバカ売れしたが、当時はHVがプリウスしかなかった。
しかもアクアは200万円以下から買え、ライバル不在だったからバカ売れした。でも、コンパクトカーのHVは今、トヨタはもちろんのこと、日産、ホンダ、スズキにだってある。
存在する意味が問われていたが、トヨタは2代目アクアを国内専用のハイブリッド専用車として仕上げた。要するに日本人向けの上質マテリアルをテンコ盛りに大改良したってわけ。
■オーラ&フィットはアクアに勝てるのか?
――販売トップのヤリスが勝てないんじゃ、アクアのライバルは不在って話ですか?
小沢 とんでもない! まず筆頭は日産のノート オーラよ! オーラはノートの内装豪華バージョンだと思うかもしれないが、中身は全然違うモデル。オーラのボディは横幅4㎝アップの専用ワイドタイプ。コイツはノート史上初となる3ナンバーサイズよ。
そのほか、専用薄型LEDヘッドライト&テールライト採用で、LEDウインカーも流れるタイプに進化。インテリアにしてもいまだかつてない表面がざらついたウッド調パネルにツイード調素材採用で、明るいグレーの本革シートも選べてまさに小さな高級車よ。
オマケに日産自慢のe-POWERも、モーター出力が1割ほど増しており加速力も良くなっているんだ。
――要するに、オーラはほぼ造り直しの新モデルだと?
小沢 そう。実際乗ると見た目の上質さはもちろんのこと、走りは静粛性が格段に増している。なんと上級セダンに使われる二重ガラスまで採用されているのだ。
メーターも専用の大型12.3インチの液晶に進化しておりモダン。オマケにオプションではあるが、日本初のヘッドレストスピーカーを使ったBOSEパーソナルプラスサウンドシステムがつけられる。コイツの音の立体感はマジでヤバい!
――日産はヤル気満々だと。
小沢 さらに侮れないのが、初代の発売から20年、国内累計販売台数282万台超を誇るホンダ・フィットだ。2002年にトヨタ・カローラが33年間守った販売トップの座を奪って大きな話題を呼んだ、まさにホンダのドル箱カー。
そんなフィットが昨年2月にフルチェンし、4代目となった。4代目には豪華バージョンのリュクスも用意。コイツはオーラみたいな専用ワイドボディや専用パワートレインはないが、本革シートをはじめ豪華インテリアを標準装備している。
まぁ、4代目フィットはそもそもリアシートがライバルより広く、前方視界も4車種の中では断トツにイイんだよね! 正直、アクア、ヤリス、オーラ、フィットの4車種はどれも優秀だからベストを決めるのは非常に悩ましいものがある。
――ちなみにその4台の中で、コスパ最強カーを選ぶならどれスか?
小沢 アクア! アクアの独走だよ! ヤリスに匹敵するぶっちぎりの超低燃費に、広い室内、クオリティの高い内装、上質な走り......コレらが198万円から手に入る。しかも、最上級Zモデルでも240万円台とお手頃。2代目アクアは問答無用でお買い得よ!
――なるほど。
小沢 ノート オーラは日産自慢の先進安全装備「プロパイロット」がオプションで、それをつけるとお値段は300万円前後になってしまうのがネック。
価格的に2代目アクアとガチ対抗できるのはフィットe:HEVのリュクスかなと。正直、値段が気にならなければノート オーラだし、実用性で選ぶならフィット。けど、総合力ではアクア。ズバリ、買いだ!
■小沢コージ(Koji OZAWA)
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週木曜17時50分~)。著書に共著『最高の顧客が集まるブランド戦略』(幻冬舎)など。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeチャンネル『KozziTV』