ホンダを代表するグローバルカー・シビックが8月に全面刷新し、11代目となった。そこで、自動車ジャーナリストの小沢コージが山梨県で開催された公道試乗会に突撃! その実力に迫ってきた。
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■クルマバカに激推しの6速MT!
日本じゃイマイチ目立ちづらいが、クルマ好きに大朗報のクルマが登場したぜ。ソイツは11代目シビックだ!
初代は1972年にヨーロピアンな大衆コンパクトとして登場。日本でも一世を風靡(ふうび)したのだが、ボディが大型化したため一時国内から撤退した。しかし、あまりにクルマの出来がイイので先代モデルからニッポン市場に復活!
そんなシビックは来年50周年を迎える。世界累計販売数は2700万台以上。まさにホンダの屋台骨を支えるクルマであり、世界的な大ベストセラーカーである。
ちなみに昨年度、シビックは北米で約25万3000台、中国で約25万4000台を売り大ヒットを記録。コロナが猛威を振るうなかでも世界中で売れる。それがシビックなのである!
現在、日本で売れるファミリーカーは軽やミニバン系ばかり。そのためシビックは日本で肩身の狭い思いをしているが、「セクシーなスタイル」「気持ちのイイ走り」「大人が5人乗れる実用性」の3要素が強く求められる欧米や中国では安定の人気を誇っている。
スタイルならマツダのマツダ3、質感ならフォルクスワーゲン・ゴルフ、総合力ならトヨタ・カローラ。このように実力派のライバルがひしめくなか、スポーティな走り味ではシビックが頭ひとつ抜け出ている。日本でもスポーティな走りを楽しみたいパパや、意外に多い走り好きの20代に売れているのが証拠だ。
そういう背景もありイマドキ実用ハッチバックでは絶滅寸前の6速MT仕様を11代目はしっかり用意している。実は先代のMT比率が3割だったからだ。
走り好きのファンに支えられているのは明白であり、それを受けて生まれた11代目の開発テーマは"爽快シビック"。走りの気持ち良さに特化した、クルマバカのためのハッチバック、それが11代目の本性なのである!
気になる走りとボディだが骨格は基本的に旧型譲り。ボディサイズは全長4550mm×全幅1800mm×全高1415mmで先代モデルより全長が30mm長く、全高が20mm低くなった。つまり、11代目はよりスポーティ化したってわけ。
素材的にもアルミ材や高張力鋼板などの補強構造の追加によりクルマに乗るとボディ剛性感や走りの踏ん張り度がものすごい。
エンジンも先代モデルと同じ1.5リットルの直4ターボだが、吸排気性能や制御の見直しで6速MT車でもCVT車でも182PS、240Nmのピークパワーとトルクを発揮。正直、パワフルというほどではないが、6速MTと組み合わされるとスポーツカー顔負けの面白さがある。今回、山梨県の山道を走ったが、クルマバカにはタマらん味わいだと思う!
MTそのものも基本的に先代モデルの改良型なのだが、高剛性化と可動部のショートストローク化がなされ、「オマエはフェラーリか!」と言いたくなるほどシフト操作がコキコキ決まる! しかもエンジンパワーがありすぎないのがイイ! 排気量が1.5リットルということもあり1000回転付近でトルクが落ち込むが、素早く最適ギアに叩き込むとマジで爽快! 実に楽しいのだ。
そして見逃せないのがインテリアの高品質化だ。最近のフィットやヴェゼル同様、水平基調のスッキリデザインで、随所にピアノブラックパネルやソフト樹脂が使われており質感がすこぶる高い。
特にインパネ中央を横に貫く六角形のパンチング加工がなされた網目パネルはユニーク。クルマというより家具か高級オーディオみたいで斬新だ。
また新型シビックは走るスマホ化も進んでおり、ヴェゼルが採用した最新ホンダコネクトを搭載。インパネセンターに見やすくてキレイな9インチ大画面ディスプレイを用意するだけでなく、車内Wi-Fi、スマホを使ったデジタルキー機能、エアコンなどのリモート操作機能、盗難やイタズラに備えるALSOK駆けつけサービスなども用意。
ぶっちゃけ、家族持ちで2人乗りスポーツカーに乗れないクルマ好きは11代目シビックのMTに注目してほしい。コイツはガチで面白い。シビックはもっと日本で売れていいクルマだと思ったぞ!
●小沢コージ
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週木曜17時50分~)。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeチャンネル『KozziTV』