BMWがアメリカンクルーザーのセグメントに新型をブチ込んだ。いったいどんな走りなのか。二輪ジャーナリストの青木タカオ氏がドイツで速攻試乗し、その実力に迫ってきた!!
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■BMWがハーレーの聖地に殴り込み!
青木 BMWが放った怪物バイクをドイツで速攻ナマ試乗してきました。ソイツの名はR18Bです!
――BMWが新境地に挑んだバイクらしいスね?
青木 そのとおり! 1923年にモーターサイクルの生産を始めて以来、史上最大となる排気量1801ccのド迫力ビッグボクサーツインエンジンを新開発したんです!
BMWの鼻息も荒く、本国の発表会で二輪部門責任者は、世界中から集まった報道陣を前に「始動するだけでエモーショナルな気持ちになるバイクだ。このジャンルでトップを目指す!」と言い切った。コレは相当自信があるなと。
――強気の背景には何が?
青木 BMWは今年上半期、世界で10万7610台の二輪車を販売しました。この数字は前年同期比40.3%増です。上半期としては過去最高の実績で、ズバリ売れまくりです。だからこそ、今が新ジャンルに攻め込む絶好のチャンスだと判断したのでしょう。
――追い風が吹いていると?
青木 ただし、R18Bが殴り込んだセグメントは"アメリカンクルーザー〟と呼ばれるほど、ハーレーダビッドソンの独壇場です。そこで今夏、BMWは全米からハーレー乗りが集結する「スタージス・モーターサイクル・ラリー」(開催地=米サウスダコタ州スタージス)というイベントに乗り込み、R18Bを発表しました。要するに敵陣のド真ん中へ殴り込んだわけです。BMWはガチで打倒ハーレーを考えているなと思いました。
――BMWに勝算はある?
青木 絶対王者であるハーレーを一気に攻略するのはもちろん難しいと思います。ただし、一定のシェアを少しずつ獲得し、その差を詰める可能性は十分あると思います。
――その根拠は?
青木 今回、ドイツ・フランクフルト近郊で、R18Bを260kmほど試乗しましたが、走りがとてつもなくイイ! ゆったり快適に長距離を走るという部分に関しては十分すぎるほどにクリアしているし、キモとなるエンジンの心地よさや、味わい深さもしっかりありますから。
――もう少し言うと?
青木 例えばサーキットを速く走るために開発したレーシングマシンをルーツにするスポーツバイクは軽量でコンパクトな車体、コーナリング性能に優れるハンドリング、そして高回転のハイパワーエンジンが求められます。
一方、クルーザーは重厚な車体で落ち着いた安定志向の操作性、五感を刺激するエンジンの鼓動感、路面を蹴飛ばすようなダイレクトなトルクフィールが重要なポイントです。R18Bはそれらの要素をちゃんと兼ね備えているんです。
――乗って楽しいと?
青木 はい。ちなみにR18Bに搭載される新作エンジンは空油冷式のOHVというハーレーにも負けない伝統的で独自性のある水平対向2気筒。158Nmを誇るトルクは2000~4000rpmの常用域で実力を発揮します。ハイペースで流れるアウトバーンの追い越し車線でも余裕があるので、安心して楽しく走ることができました。
――BMWらしさは?
青木 もちろんあります! 1976年に量産車初のフルカウルをR100RSに採用し、1988年のK100にABSを備えるなど、常に先進技術でライバルをリードしてきた同社らしく、大型フェアリングの整流効果は秀逸で風の巻き込みも感じません。
――なるほど。
青木 そして、ヘッドライトの上に設置されたレーダーセンサーによって前車との距離を検知し、自動的な加減速で車間距離を保つACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)が高速巡航をより快適にしてくれます。このセグメントにACCをいち早く導入したことは、競合ライバルに対し大きなアドバンテージとなると思いますね。
――正直、R18Bは全長2560mm、車両重量398kgという超ヘビー級のボディです。ワインディングの性能がイイってマジなんスか?
青木 直進安定性重視のロー&ロングな車体ですが、従来のクルーザーなら苦手とするコーナーもBMWらしく気持ちよく駆け抜けてくれますし、全方位的に隙がない。長距離を快適に走りたい人に激推しのバイクです。
●青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。専門誌『ウィズハーレー』(内外出版社)の編集長でもある。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』