8月2日に発売されたトヨタの新型ランドクルーザーの人気が爆発! グレードによっては納期が5年なんて話も出ている。そこで、自動車ジャーナリストの小沢コージが、ワインディングを含む300㎞の公道ガチ試乗を敢行。6代目の人気の秘密と実力に迫ってきた。
■ランクルの盗難が多いワケ
小沢 やった! ついにニッポンが世界に誇る最強&最高品質のクルマがデビューしたぜ! ソイツは6代目300系ランドクルーザーだ。14年ぶりとなる待望の一新で世界中が沸きに沸いている!
――その理由は?
小沢 実は世界中のセレブに愛されているトヨタ車&日本車はランクルなんだよ! ある意味、外貨を最も効率的に稼ぎ、日本車のプレゼンスを高めている。まさに生ける名車! それがランクルの本当の姿なんだ!
――世界的に有名なトヨタ車は、累計5000万台以上を誇るカローラでは?
小沢 トヨタには乗用車系とは別にプロ向けの商用車ラインナップがあり、世界中で名声を得ている。具体的には箱バンのハイエース、マイクロバスのコースターがそれ。ランクルももともと商用車で長い歴史を誇っている。カローラはトヨタの顔なのは確かだが、こちらは「良品廉価」の究極。いわばクルマ版のカップヌードル!
――一方のランクルは?
小沢 安さではなく、「信頼性と耐久性」の究極で、ある意味、関の刃物やグランドセイコーみたいに高品質で勝負するメイド・イン・ジャパン。一部を除けばランクルは日本国内で造られているし、510万円から始まる価格もレクサスを除くトヨタの乗用車のなかではトップクラスのお値段。そんな最新版が発売され、世界中のクルマ好きは大騒ぎ! ズバリ、ランクルの知名度は大谷翔平級よ!
――具体的にどこがスゴい?
小沢 歴史はトヨタ車、いや日本車のなかで一番長い。クラウンが1955年、カローラが1966年に誕生しているが、ランクルは1951年に原点のジープBJ型が誕生し、今年で70周年。ランドクルーザーの名前がついたのは1954年。6代目300系のご先祖は1967年に登場した。
実は歴史だけでなく販売実績もスゴい。カローラの5分の1とはいえ、世界累計は1060万台以上を誇る。今回新型に切り替わったステーションワゴンの300系に加え、ヘビーデューティな70系、日常的なプラドを合計すると、世界170の国と地域で年間30万台以上も売っている。
さらに驚くのは今回の6代目の売れっぷり。年販目標の4倍となる2万台を国内で受注! 納車待ちは最長5年なんて話もあるほどウルトラ大人気!
――その背景には何が?
小沢 ワールドワイドな人気がハンパないんだよ! ランクルの販売はざっくり言うと中東が5割を占めている。残りの4割はロシア、北米、オーストラリア。ちなみに日本市場は価格も価格なので全体の1割弱。
――なぜ世界で大人気?
小沢 悪路走破性と高級感を高次元で両立させているからだね。ちなみに日本で売れている6代目ランクルの一部はどっかの国に転売されるはず。
――て、転売?
小沢 日本で盗難されるクルマの1位はプリウス、2位はハイエース、そして3位がランクルよ。もちろん、ランクルが1位になったこともある。それはなぜか? スゴい需要だから換金率が高い。つまり即金になるわけ。それで盗難や転売が多いんだ。
だから6代目のスタートスイッチは、一番安いグレードを除いて指紋認証方式が標準装備されている。一度登録した人の指紋情報と一致しないとエンジンが始動しないんだ。
■一日300㎞走っても全然疲れない!
――6代目はどう進化した?
小沢 その前に6代目の開発テーマを言うと、「高品質化」と「ヘビーデューティ化」。かなり高級化したが、走破性などはよりタフになった。要するに「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」というランクルの代名詞がさらに磨き込まれた感じよ。
――見た目も変わりました。
小沢 プレミアム感が超増した。フロントはクリーンで鮮烈な極太4本メッキストライプが前面に出て、全体のフォルムは程よくマッチョ。かつ箱形をキープした正統派のクロカンスタイルで、妙な流線形ラインなんぞ入っていないのもイイ!
そして注目は今回ランクルとして初めてモータースポーツ活動を視野に入れ、GRスポーツを設定。コイツは過酷な悪路にも対応できる足回りになっているほか、メッキ代わりに黒を多用し、グリルセンターに「TOYOTA」のロゴをドーンと大きく入れた。かつてのランクルへのオマージュでファンはタマらんはず。
――中身はどこが進化?
小沢 一番スゴいのは本格クロカンとして変えるべき所は変え、変えるべきでない所は変えなかったこと。まずランクルとして初めてボンネット、ルーフ、全ドアパネルまでアルミ化。その結果、ボディサイズはほぼ変えずに全体で約200kgも軽量化させた!
同時に最新のGA-Fプラットフォームを採用。50万km走破するユーザーを考え、トヨタは丈夫な極太ラダーフレームはキープしたが、今回の新作ラダーフレームはマジでスゴい!
世界初の溶接技術で最初に板厚の異なる鉄板をレーザー溶接して1枚の板にし、それをプレス成形して軽量高剛性かつムダのないフレームを作ったんだ。これだけで約40kgの軽量化を達成しているからね。
――エンジンも変わった?
小沢 従来は4.7LのV8のみだったのが、6代目から415PSの3.5LV6ガソリンターボと、309PSの3.3LV6ディーゼルターボの2本立てとなった。どちらも10速ATと組み合わされる。
今回、公道試乗してみたが、街中では本当に高級車の味わいだった。5代目の200系もオンロード性能は高かったが、さらに性能が上がった印象だね。
――もう少し言うと?
小沢 乗り心地はスポーツサルーンよ。本当にダイレクトに走る。今まではステアリングを切ってからボディが曲がり始めるまでに多少の遅れがあったが、6代目はそれがまったくない。特に高速性能が素晴らしい。今回、東京と山梨県の八ヶ岳を往復、約300kmを走ったわけだが、静かで全然疲れなかった!
――先進装備はどうです?
小沢 6代目から先進安全のトヨタセーフティセンスとコネクティッド機能を全面採用した。運転支援に関しては実に楽チン! 全体的なハンドリングの良さもあって高速はハンドルを握り、前さえ向いてればほぼペダル操作なしで走れる。特にクルーズコントロールのブレーキ操作のウマさは人間以上だね。妙なカックンブレーキも一切ナシ!
――6代目の購入時に比較したいライバルは?
小沢 価格はランクルの倍に跳ね上がるが、メルセデス・ベンツのGクラスだね。そして価格が近いジープ・ラングラーも注目。まぁ、ラングラーはアウトドアギアだけどね。あと価格は全然違うが、悪路走破性に関してはスズキ・ジムニーもハンパない。それとランドローバーのディフェンダーと比較するのもアリ。
――ちなみにランクルがガチ本命の人は?
小沢 マジで欲しい人は納期の壁が立ちはだかる。今すぐ販売店にダッシュだ!