今年10月の軽自動車の新車販売で、絶対王者であるホンダのN‐BOXが前年同月比53.6%減の3位となり、2019年12月から守ってきた首位の座をスズキのワゴンRに明け渡した。その背景を自動車ジャーナリストの小沢コージ氏に聞いた。
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■ワゴンRスマイルはコスパ抜群!
小沢 ヤベーよ、ヤベー! 気づいたら絶対王者であるホンダN-BOXが首位陥落! ここ何年も軽のライバルであるスズキ・スペーシアやダイハツ・タントとの新車販売バトルを制してきたN-BOXだが、今年10月の軽の新車販売ランキングで1位に立ったのはスズキ・ワゴンR! 約7年ぶりの快挙達成だ!
そして2位は日産ルークスで、N-BOXは3位に後退。実に22ヵ月ぶりの陥落で、コイツはニュースだよ。
――N‐BOXが3位になった背景には何が?
小沢 人気低下ではなく、半導体とアジア工場からのパーツ不足による減産が3位後退の原因だろうが、念のためホンダに確認したら、今年9月から納期が見えなくなりディーラーの受注をストップしたと。詳しいことはホンダのホームページに書いてある。
――今回首位に躍進したスズキは減産の影響がない?
小沢 聞けばスズキは今年10月から購買本部を調達戦略本部に変更! 体質強化を推し進めている。一部パーツをスズキ専用から汎用に変更するなどして、生産台数の計画をより明確にする手はず。スズキは対応が早い!
――要はスズキが1位に立ったのはホンダの減産が最大の理由であると?
小沢 うん。それともうひとつのキモはN-BOXのガチライバルであるスペーシアではなく、ワゴンRがトップに立ったことにある。
ズバリ、9月発売のワゴンRスマイルの存在もデカい! 人気が落ち気味だったスイングドア式ボディのワゴンRに今回追加されたのが、スライドドアを採用したワゴンRスマイル。コイツが販売を牽引(けんいん)している。
――スズキが約7年ぶりに首位に立った原動力にはワゴンRスマイルの存在もあると。
小沢 そう! しかも、目玉はスライドドアだけではない! ワゴンRスマイルの顔面はノーマル版と全然違う楕円丸目で実にかわいい。ボディサイズも絶妙でN-BOXやスペーシアは全高1.7m台だが、ワゴンRスマイルは1.6m台。
さらにスライドドアレールで上下の空間スペースを取られ、リア開口部が狭くなる分、ベースのワゴンRより少し背を高くしてある。
――ふむふむ。価格は?
小沢 ワゴンRスマイルの強みはお値段! スライドドアの軽は往々にして割高になるが、129万円台スタートを達成。N-BOXより実に12万円以上安く、コスパ抜群!
――お手頃価格を実現できたワケは?
小沢 ポイントはアルミホイールやターボの設定を省いたスズキのケチケチ大作戦が効いている。走りもN-BOXほど高級ではないが、スズキらしいしっかり感があるし、燃費もイイ!
――ちなみに2位の日産ルークスですが、人気の秘密は?
小沢 販売力とクオリティ、それと日産自慢の運転支援技術「プロパイロット」の存在が効いているね。
――今後、軽の新車販売バトルはどうなる?
小沢 減産が解消されればN-BOXの完全復活は確実だし、オザワの耳には年末に行なわれるマイチェン情報も届いている。この改良で、先行車追従型ACC(アダプティブクルーズコントロール)が進化し、ついに全速度域で完全停止を実現しそうだ。
もちろん、ワゴンRスマイルの実力はすこぶる高いし、ルークスも虎視眈々(こしたんたん)と首位を狙っている。スライドドアの軽が新・国民車として浸透している今、販売バトルはさらに激しさを増すって!
●小沢コージ
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週木曜17時50分~)。YouTubeチャンネル『KozziTV』