11月15日、トヨタはカローラシリーズの世界累計販売が5000万台を突破したと発表した。世界で一番売れているカローラの人気の秘密とは? 元自動車専門誌編集長で、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が徹底解説する。
■カローラが世界で売れる秘密は地産地消?
ーー11月15日、トヨタはカローラシリーズの世界累計販売台数が5000万台を突破したと発表しました。そもそもカローラってどんなクルマでしたっけ?
渡辺 初代カローラは1966年にデビューした後、国内乗用車登録で33年連続1位を達成したクルマです。
ーー〝元祖・絶対王者〟であると。
渡辺 ええ。しかも今年、カローラはデビュー55周年を迎えました。その節目の年に累計5000万台突破という金字塔を打ち立てたわけです。
ーーこの数字は世界トップ?
渡辺 そのとおりです。
ーーちなみにライバルの累計販売台数はどんな感じスか?
渡辺 自動車の販売激戦区はカローラが属するCセグメントです。1974年に誕生し、〝世界のベンチマーク〟と呼ばれるフォルクスワーゲン・ゴルフの累計販売は3500万台以上。来年生誕50周年を迎えるホンダ・シビックで累計2700万台です。要するにカローラがマークした「累計5000万台」という数字は、まさに前人未到の領域なのです。
ーーなぜカローラは世界中で愛されているんですか?
渡辺 現在、カローラは世界150以上の国と地域で販売されています。付け加えると、海外の生産拠点も年々増加している。
ーー海外の生産拠点が増えている背景には何が?
渡辺 カローラには国内仕様と海外仕様があります。
ーーふむふむ。
渡辺 実は国によってカローラの造りは大きく異なります。つまり、カローラは世界各国で〝地産地消〟を行なっているんですね。
ーー地産地消? 具体的には?
渡辺 カローラには高コストの金型がいくつもあるので、販売する国と地域の生活に合致したカローラに仕上げている。フォルクスワーゲン・ゴルフはどの地域でも同じ形のクルマですが、カローラは販売する国と地域により見た目が異なります。要するにトヨタは販売する国と地域に徹底的に寄り添い、カローラを造っているのでとても使いやすいわけです。カローラが世界中で愛される秘密はそこに尽きると思いますね。
●渡辺陽一郎 Yoichiro WATANABE
カーライフジャーナリスト。1989年に自動車購入ガイド誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長に。1997年に同社取締役を兼任。その後、フリーランスに。著書に『運転事故の定石』(講談社)など。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員