今年の顔となる一台を決める「2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤー」に、スバルのレヴォーグが選ばれた。強力な国産ライバルたちに大差をつけたその理由を、自動車ジャーナリストの小沢コージが解説する!
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まいった! またまたイヤーカーを外しちまったぜ、COTY!
毎年の"年グルマ"を選ぶ新車賞レースの「日本カー・オブ・ザ・イヤー」だが、注目のイヤーカーはスバル・レヴォーグに決定。薄々そんな予感もしていたけど......まずは関係者の皆さま、おめでとうございます!
で、オザワが10点満点で推したのはトヨタ・ヤリス3兄弟。確かにハッチバックのヤリスにSUVのヤリスクロスにラリーベース車のGRヤリスをまとめて大賞に挑んだだけに、多少反則気味の感もあり、それが裏目に出たのかも。
今年の裏テーマは、やっぱし新型コロナウイルスの感染拡大。自動車メーカー各社が対応に苦しむなか、トヨタは今期決算でいきなり黒字を予想したし、第2四半期は想定外の上方修正で6293億円の黒字確保。勢いの良さは明白で、今年の新車攻勢もハンパなく、ヤリス三兄弟のほか新高級車のグランエースやクオリティSUVのハリアー、新世代燃料電池車の2代目ミライまで発表した。
実際、ヤリスは登録車月販トップを何度も獲っているし、実燃費30㎞の超絶エコ性能はハンパじゃない。オザワは内心、「ヤリスがダントツ1位かも?」と思っていたけど予想外の3位。まさかホンダ・フィットにも負けるとは!
かたやトップに輝いたレヴォーグは437点獲得で、320点のフィットや300点のヤリス三兄弟を100点以上も引き離しての大勝利。キモは満点以外の得票を獲りまくった「2位以下得点」による戦略と、やっぱり先進安全「アイサイトX」の効果でしょう。
確かに全幅1.8mを超えない国内最適ボディサイズや新世代プラットフォームをブラッシュアップしたことによる素生の良さ、走りの良さ、さらに新型フラット4ターボもよかったけど、なにより実質プラス10万円程度で、渋滞時ハンズオフを含む先進安全性能を取り入れたのは大きい。
いまや「電動化」と並んで「自動化」は新車のマストトレンドで、それをスバルらしい低価格の庶民派路線で世界最高レベルの技術を投入したからスゴい。「誰にでも手に入る先進安全車」という意味では、今ダントツなのはレヴォーグ。そこんところの価値を選考委員は敏感に判断したんでしょう。
一方、人に本当に届く優しさ、扱いやすさ、親しみやすさを得たホンダ・フィットも予想以上に高評価で、その辺り、オザワは多少侮っていたのかも。クルマづくりで、かつての勢いを取り戻しつつあるホンダを。
とはいえ、今のトヨタの勢いと強さは本物だし、ヤリスの出来もスゴい。なので配点に関してはまったく後悔していません。まぁ、強すぎるものは時に嫌われるのよ、たぶん(笑)。
■小沢コージ(Koji OZAWA)
1966年生まれ、神奈川県出身。青山学院大学卒業。自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週土曜17時50分~)。YouTubeチャンネル『KozziTV』。著書に共著『最高の顧客が集まるブランド戦略』(幻冬舎)など。連載媒体多数。
【2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー得点表】
(順位・車名・得点)
1位 スバル レヴォーグ 437点
2位 ホンダ フィット 320点
3位 トヨタ ヤリス/ヤリスクロス/GRヤリス 300点
4位 プジョー 208/e-208 141点
5位 ランドローバー ディフェンダー 105点
6位 アウディ e-tron Sportback 65点
7位 マツダ MX-30 63点
8位 アルピナ BMW ALPINA B3 25点
9位 BMW 2シリーズグランクーペ 24点
10位 ニッサン キックス 20点