アリアはネットでも購入できる。今回発表されたB6はベーシックグレード。価格は539万円で、「プロパイロット2.0」「電動パノラミックガラスルーフ」などの装備が省かれる。価格539万~790万200円 アリアはネットでも購入できる。今回発表されたB6はベーシックグレード。価格は539万円で、「プロパイロット2.0」「電動パノラミックガラスルーフ」などの装備が省かれる。価格539万~790万200円
11月15日、日産が世界に誇る新型EV「アリア」が今年6月に続き、今度は廉価モデルの価格を発表した。発表から1年。アリアはなぜ情報をチマチマ小出しにするのか? 自動車専門誌編集長のキャリアを持つ、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。

■アリアの予約受注は6800台!

ーー日産が新型EV「アリア」の最廉価グレード「B6」の価格を発表しましたが、確か今年6月にもアリアは価格を発表しましたよね? 

渡辺 そのとおりです。

ーーなぜアリアは情報を小出しにするんですか?

渡辺 若干、ややこしい話になるので、まず時系列を整理しましょうか。

ーーお願いします。

渡辺 そもそも日産がアリアを発表したのは2020年の7月15日のことでした。この時点での公式アナウンスは、「納車を伴う発売は2021年中頃」でした。ところが、新型コロナの影響もあり情報はそこで途絶えてしまいます。そして発表から約1年が経過した今年6月4日にようやく予約注文の限定車「リミテッドシリーズ」の受注を開始しました。価格は660万~790万200円です。

ーーなるほど。予約の状況はどんな感じなんスか?

渡辺 日産によれば予約注文は約6800台です。

ーー価格から考えると注文数自体は悪くない?

渡辺 ええ。ただし、予約注文したアリアの納車がいつまで経っても始まらないと。

ーーどういうことスか?

渡辺 日産の販売店をいくつか取材しましたが、「お客さまから『アリアの納車はどうなっているんだ?』というお叱りをよく受けている」と一様にボヤいているんです。

ーーつまり、今年6月に受注を開始したリミテッドの納車が始まらないのに、廉価グレード「B6」のオンライン受注を開始したと?

渡辺 そのとおりです。一応、リミテッドは来年1月27日、B6は来年3月下旬の納車をようやくアナウンスしましたが、販売店は「激しい五月雨式で、正直、ワケがわからない」と困惑しています。

ーーちなみに今回発表したB6の価格は?

渡辺 539万円でリミテッドシリーズより安く、販売店も本腰を入れたいのが本音だと思います。現在、電気自動車が世界的に注目を集めているタイミングですからね。

ーーアリアが全貌を一気に公開しない背景には何が?
 
渡辺 もちろん、新型コロナ感染拡大による半導体や部品不足の影響が横たわっていると思います。ただし、正式発売までの期間がココまで長いのは誰得なのかと思いますね。

ーー小出しのプロモーションという線も考えられる?

渡辺 それもあるでしょうが、発表から1年以上も経過したら、フツーに考えて新鮮味はもうありませんし、ファンをモヤモヤさせるだけ。私は逆効果だと思いますね。特にEVのパイオニアである日産が放つ次世代のイメージリーダーカー、それがアリアです。販売店に実車を置いて、誰にでも試乗させたほうが、もっと大きな話題になると思いますよ。

渡辺陽一郎 Yoichiro WATANABE
カーライフジャーナリスト。1989年に自動車購入ガイド誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長に。1997年に同社取締役を兼任。その後、フリーランスに。著書に『運転事故の定石』(講談社)など。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員