2022年はシンEV元年。トヨタ、日産、三菱、スバルが新型EVを市場に投入するからだ。てっきり日本もEVシフトが進むのかと思いきや、男心を刺激しまくるガソリンスポーツ車も続々登場予定。いったいどんなメンツがデビューするのか? 自動車専門誌「月刊くるま選び」の元編集長で、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏に聞いた。

■今月、軽EVがデビュー!

ーー今年のクルマ業界は新車が面白いらしいスね?

渡辺 注目は軽EVです。

ーーほお!

「日産 IMkコンセプト」2019年の東京モーターショーに出展し、大きな話題を呼んだ軽EV。昨年末には日産本社ギャラリーに展示されていた。三菱との共同開発車だ

渡辺 実は昨年末、日産グローバル本社ギャラリーに展示されていた軽自動車のEVコンセプト「ニッサンIMk」がそれです。この軽EVは日産と三菱の共同開発です。

ーーということは、三菱からも軽EVが発売されると?

「三菱 新型軽EVコンセプト」1月14~16日に千葉県の幕張メッセで開催される「東京オートサロン」への出展が予告されている。日産IMkコンセプトの兄弟車になる

渡辺 そのとおり。三菱は今年1月14日(金)~16日(日)に幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催される「東京オートサロン 2022」で、新型軽EVのコンセプトカーを世界初公開する予定です。

ーー現時点で入手している日産と三菱が共同開発した軽EVの詳細は?

渡辺 ボディサイズは、全長3395㎜×全幅1475㎜×全高1670㎜で、価格は200万円台が予想されます。ただし、200万円台というのは、補助金を差し引いた金額です。車両本体価格はもう少し高くなりそうです。売れ筋になりそうな中級グレードは補助金を差し引いても、230万円前後だと耳にしています。

ーーこの軽EVの航続距離はどの程度なんですか?

渡辺 20kWhの駆動用電池を搭載して、おおよそ200~250㎞かと。

ーー軽自動車のEVは過去にあるんですか?

渡辺 ガソリンが配給制だった第二次世界大戦直後に登場した車種を除くと、2009年から昨年まで法人などを中心に販売された三菱の「i-MiEV(アイミーヴ)」が実質的な先駆けです。

ーーズバリ、日産と三菱が放つ軽EVは売れそうですか?

渡辺 補助金を含めた価格次第でしょうね。以前発表されたベーシックグレードが200万円という設定では、「販売絶好調!」とはならない。ベーシックグレードが補助金を差し引いて180万円、つまりエアロパーツを装着したホンダのN-BOXなどと同等の価格が望ましいです。売れ筋になる中級グレードが200万円になれば堅調な販売も期待できると思います。

ーーほかにもEVが発売されるそうですね?

「日産 アリア」 新春早々、ついに正式発売となる。EVのパイオニアである日産の走りはいかに。価格539万~790万200円
渡辺 年明け早々にも日産アリアが正式発売されます。そして今年の6月頃にトヨタとスバルが共同開発したbZ4Xとソルテラが発売される可能性があります。

「トヨタ bZ4X」 スバルとの共同開発したトヨタ初の本格EVのプロトタイプ。今年の半ば頃に日本登場予定

「スバル ソルテラ」トヨタ「bZ4X」の兄弟車。写真はプロトタイプ。トヨタ同様、コチラも今年の半ば頃に登場予定
ーートヨタとスバルが共同開発したEVの価格はどんな感じなんですか?

渡辺 まだ正式なアナウンスはありませんが、昨年の12月15日にトヨタの英国法人が価格を発表しています。それによると、日本円で630万円台でしたから、このへんの価格で登場するのかなと。

ーーアリア、bZ4X、ソルテラの売れ行きも補助金次第ですか?

渡辺 補助金を差引いても一般的にはなかなか手が出ないと思いますね。まぁ、アリア、bZ4X、ソルテラはグローバルカーなので、海外の比較的裕福な人たちに向けたEVとも言えますね。

ーー今年はEVが主役になりそうですか?

渡辺 EV以外にも、いろいろなカテゴリーの車種が登場しますよ。例えばEVとは真逆のガソリンくさいスポーツタイプのクルマもデビューを控えています。

ーー具体的には?

昨年8月にアメリカでデビューした新型フェアレディZ。今回の新型は14年ぶりのフルモデルチェンジで、初代から数えると7代目。日本デビューは今夏とのウワサも

渡辺 まずは14年ぶりのフルモデルチェンジとなる日産フェアレディZですね。初代から数えると7代目になります。エンジンはスカイライン400Rのエンジンを徹底的に磨き上げて搭載します。価格は430万円台スタートを予想します。登場は今夏かと。

ーーそしてホンダからも男心を刺激するクルマが出る?

昨年10月、米国ホンダは新型「シビックタイプR」を公開。赤いカモフラージュに包まれているプロトタイプではあるが、ベースは新型シビックで確定だろう

渡辺 初代は1997年に登場し、今年デビューする新型で6代目になるシビックタイプRです。純ガソリンエンジンでは世界最高峰となるホンダ自慢のFFスポーツ車です。

ーーホンダは脱ガソリン宣言をしていますよね?

渡辺 昨年4月にホンダの三部敏宏社長が、2040年までに「脱ガソリン」を宣言しましたので、ホンダ製の純ガソリンスポーツ車としてはシビックタイプRが最後になりそうです。

ーーなるほど。

「スバル WRX STI」写真は昨年11月にデビューしたスバルの高性能スポーツセダン、新型WRX S4。コイツにMTを搭載し、ギンギンに鍛えたWRX STIが年内に登場予定

渡辺 スバルもハードコアなWRX STIを年内にデビューさせます。

ーーつまり、今年はEVとガソリンスポーツ車が並び立つと。ちなみに本当に日本市場にEVは定着するんでしょうかね? どう予想されています?

渡辺 そういう意味で言うと、日産と三菱が放つ軽EVは定着というか普及の試金石になると思います。EVに限らず、日本のユーザーを大切に考えて開発されたクルマは、必ず定着します。逆に海外向けで、日本はオマケという車種は、一時的に売れたとしても、時間が経過すれば廃れてしまいますね。

渡辺陽一郎 Yoichiro WATANABE
カーライフジャーナリスト。1989年に自動車購入ガイド誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長に。1997年に同社取締役を兼任。その後、フリーランスに。著書に『運転事故の定石』(講談社)など。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員