ダイハツのコンパクトSUV「ロッキー」に新開発のハイブリッドが搭載されて話題を集めている。そこで、自動車ジャーナリストの小沢コージ氏が都内で開催された試乗会に突撃、その実力に迫った!!
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■ロッキーHVのコスパがスゴい!
この手があったか。そう、まったく新しいダイハツ流の"超ケチケチ"HV(ハイブリッド)こと、「e-SMART HYBRID」のことだ!
先月1日、人気コンパクトSUVのダイハツ・ロッキーと兄弟車であるトヨタ・ライズが初のマイチェンを行なった。新たにHVと1.2リットルエンジン車が追加され、現在の受注数はロッキーとライズ合わせて約3万台超(!)と早くも大人気。しかも、どちらも6割以上が新HVを選んでいるというから驚く。
そんな注目のHVはダイハツが新開発! 方式はエンジンを発電用と割り切り、駆動を電気モーターのみで行なう日産e-POWERと同じシリーズハイブリッドだが、電池の搭載量が違う。
e-POWERが約1.5kWhのリチウムイオン電池を積むのに対し、ダイハツのe-SMART HYBRIDは約0.7kWh。そのため電動加速は抑えめだが、その分価格も抑えられている。
事実、HVの廉価グレードは211万円強で本格HVのSUVとして世界最安値! ボディサイズが違うとはいえ、e-POWER搭載の日産キックスは275万円からなので50万円以上も安い。このダイハツ流の超ケチケチコスパ戦略こそが新ロッキーHVのキモである!
では、走り味と使い勝手はどうなのか。今回、ロッキーの最上級グレードを試乗して驚いた。ロッキー最大の魅力であるスペース効率は落とさず、走りの良さと燃費がしっかり上がっていたからだ。
簡単に言うと今回のHV化でマイチェン前とボディサイズや見た目はほぼ変わっていない。5ナンバーサイズが守られているので、狭いニッポンでは本当に扱いやすい。
しかも、5ナンバーサイズなのに室内は広く、身長176cmのオザワが前後シートにフツーに座れる上、ラゲッジ容量はガソリン車と変わらない369リットルを確保!
たいていHVはバッテリーやモーターを積むためラゲッジや室内が狭くなるのが常だが、ダイハツ流のHVは構造がシンプルな上に電池も小さいので、室内空間への影響が少ないのだ。厳密には改良前よりラゲッジ下のスペースが少し減ったが、駆動用バッテリーをリアシート下に上手に収納しているので特に問題はない。
一方、走りはどうか。走行フィールは一長一短だ。ダイハツは今回1.2リットル直3エンジンを新開発。新デザインの吸気ポートやデュアルインジェクターを使い、最大熱効率は40%!ピークパワー&トルクは106PS&170Nmとマイチェン前の1リットルターボに比べ1~2割高い。オマケにHVでありながら車重は1tちょいと軽い。走りは機敏で滑らかだ。
ただし、一時的に電気をためておける大容量バッテリーを採用していないため、発進直後から1.2リットルエンジンが活発にブン回る。ロッキーが搭載する1.2リットルエンジンは振動の多い直3だ。街中は静かだが、高回転ではエンジン音が気になる。つうか、正直言うとかなりうるさい。
肝心の燃費だが、HV化でもさほど車重が増えなかったので実燃費は素晴らしく、高速を飛ばしても1リットル当たり23km台を叩き出した。この数字はキックスe-POWERを超え、同じトヨタグループ内のヤリスクロスのHVに迫る実燃費である!
日産e-POWERに対して電動感や静かさでは劣るが、実燃費やスペース効率、何よりも安さで世界トップレベルを達成したロッキー。どこまで売れるか見ものである!
●小沢コージ
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週木曜17時50分~)。YouTubeチャンネル『KozziTV』