3月4日の電撃会見に出席したソニーグループの吉田憲一郎社長(左)と、ホンダの三部敏宏社長(右)
3月4日、ホンダとソニーが提携を発表、2025年に共同で開発したEVを商品化するという。両社の狙いは? 自動車専門誌『月刊くるま選び』の元編集長で、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏に聞いた。

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渡辺 3月4日、ロシアのウクライナ侵攻で世界がザワつく中、ホンダとソニーが電撃的な発表を行ないました。具体的には、今後EVの開発や販売で提携するとのことです。年内に両社で新会社を設立し、2025年にEVの販売開始を目指すとしています。

ーー渡辺さんはこの発表をどうご覧になりました?

渡辺 平たく言うと、ホンダとソニーが恋に落ちたという発表ですよね。まぁ、恋愛が始まったばかりですから、いろんな意味で未知数です。これから手探りで関係を築いていくのだと思います。

ーーホンダとソニーが今後立ち上げる新会社のイメージは?

渡辺 日産自動車と三菱自動車の合弁会社「NMKV」的な感じで、それほど大きな規模にはならないと思います。これはあくまでも私のイメージですが、1999年から2004年にかけてトヨタが音頭を取って行なった日本の異業種企業コラボ「WiLL(ウィル)」っぽいなと。あのときは発起人がトヨタでアサヒビール、江崎グリコ、花王、近畿日本ツーリスト、コクヨ、松下電器産業(現パナソニック)なんかも参入して話題を呼びましたよね。

ーーSNSや一部専門家からは「ホンダがソニーの下請けになった」という声も飛んでいますが?

渡辺 ソニーはパーツやユニットをホンダに買っていただく立場ですよ。ですから、ホンダが求める機能や価格といった価値の実現にソニーが応じられない場合、もっと言うとホンダの期待を下まわったら、その時点で恋が破れる可能性も十分あり得ると思います。ただ、順調に恋が進めば、ソニーのパーツとソフトウェアをテンコ盛りにしたホンダ車を、"ソニーブランドの特別仕様車"として販売すると思います。

ーーほおほお。今後の予想は?

渡辺 最大のキモは、ソニーが自動車の先進技術分野で能力を発揮できるかどうか。もっと言うと、いかに既存のサプライヤーを凌ぐ価値を見せられるかです。ホンダが「やっぱりソニーは違うね! こういうアイデアは、今までの自動車関連会社からは出なかったよね!」と唸れば、今回の提携のメリットは大きいと思いますね。

渡辺陽一郎 Yoichiro WATANABE
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務める。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『運転事故の定石』(講談社)など