2月の新車販売総合ランキングで2位はトヨタのカローラシリーズ。その好調なセールスを支えたのが、昨年9月発売のカローラクロスだ。価格は199万9000~319万9000円

今年2月の新車販売総合ランキングで、首位に輝いたのはホンダの軽自動車「N‐BOX(エヌボックス)」だった。そして今回の注目は、2位に入ったトヨタのカローラシリーズだ。なぜ今、カローラシリーズの販売が好調なのか? 自動車専門誌『月刊クルマ選び』の元編集長で、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏に聞いた。

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――3月4日、日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協)が2月の新車販売台数を発表し、総合ランキングで、ホンダの軽自動車「N-BOX」が2ヵ月連続でトップに輝きました。

渡辺 首位を守ったN-BOXの2月の販売台数は、1万9974台で前年比7.4%増でした。現在は減産による納車待ちを消化している段階ではありますが、昨年12月に行なわれた一部改良の効果も出ているように思いますね。

――そして、2位は1月の3位から順位をひとつ上げたカローラシリーズです。

渡辺 カローラシリーズの販売台数は1万2636台でした。この数字は前年比44.1%増です。ちなみにカローラシリーズの中で気を吐いたのはカローラクロスです。約6600台を売り、カローラシリーズの半分(52%)を占めています。

――スゴ! カローラクロスの人気の秘密はなんスか?

渡辺 ここ数年、国内の新車市場はコンパクトSUVの販売が好調なんです。

――コンパクトSUV市場はドル箱であると。各社がしのぎを削る中で、カローラクロスがそこを抜け出したワケは?

渡辺 はい。カローラクロスはコンパクトSUVに分類されますが、全長が4490㎜と比較的長く、そのため、ほかのコンパクトSUVと比較すると後席が広い。加えて荷室長(荷室の奥行寸法)は、全長が4500㎜以下のSUVの中では最も長いんです。つまり、カローラクロスは使い勝手がすこぶるいい。決して派手な見た目ではありませんが、この手のオーソドックスなクルマが昔から日本市場では好まれます。

――ふむふむ。価格面はどうスか?

渡辺 カローラクロスは割安です。ノーマルエンジンとハイブリッドの価格差を35万円に抑えたので、購入時に納める税額の違いを含めると実質の差額は25万円に縮まります。しかもノーマルエンジンの燃費がずば抜けた数字ではない。1リットル当たりのレギュラーガソリンの価格を160円で考えると、約5万km走ると、ガソリン代の節約で25万円の実質差額を取り戻せます。

実際、カローラクロスは2月に約6600台売れましたが、5000台(76%)がハイブリッド。カローラクロスのハイブリッドSが275万円という価格も、機能や装備と価格のバランスを考えると実に割安です。このようにカローラクロスというクルマは、好調に売れる要素をたくさん備えています。

――カローラクロスの人気はしばらく続きそう?

渡辺 ええ。今後の注目は〝絶対王者〟であるN-BOXの牙城を崩せるかどうかでしょうね。


★渡辺陽一郎(Yoichiro WATANABE)カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務める。著書に『運転事故の定石』(講談社)など。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員