トヨタの「GRスープラ」にファン待望のマニュアルトランスミッションが搭載された。電撃発表と言われているが、実はその伏線が今年1月にあったという。トヨタをネチネチ取材する自動車研究家の山本シンヤ氏が濃厚解説する。
ーートヨタのGRスープラが4月28日にマイチェンしたらしいスね。どんな内容?
山本 2019年に登場してから熟成を重ねていますが、今回はシャシー性能や運動性能を徹底的に磨き上げました。その上で、RZグレードには20年ぶりとなる新開発の6速マニュアルトランスミッションが設定され、大きな話題を呼んでいます。
ーーそもそもですが、スープラはどんな歴史を持つクルマでしたっけ?
山本 1978年にセリカの上級車として登場したセリカ・ダブルエックスがスタートです。北米では最初からスープラと呼ばれていましたが、日本でも3代目からスープラに改名。現行モデルは5代目となります。
ーー5代目がデビューしたのはいつですか?
山本 2019年で、当時は実に17年ぶりの復活となりました。5代目はドイツのBMWと共同開発されたことが話題になりました。
ーートヨタとBMWがタッグを組んだ初のモデルがスープラ?
山本 そうです。2011年に技術提携を結び、2012年に電動化や軽量化、スポーツカーへ協力関係を広げることを発表しました。その答えがこのスープラというわけです。ちなみにBMW「Z4」はスープラの兄弟車にあたります。実は裏話があり、当時BMWに次期Z4の計画はなかったのですが、トヨタとのタッグが決まったことで継続となったそうです。つまり、トヨタとBMWの初コラボは、両社にとってウインウインをもたらすものになっているんですね。
――なぜトヨタはBMWとスープラを造ろうと思った?
山本 スポーツカービジネスは単独では継続しにくいという面も大きいですが、間違いないのは「BMWが直6エンジンを持っていた」という部分だと思いますね。
ーーなるほど。ちなみに発売や価格は?
山本 今夏に商談の受付を開始し、秋頃にデリバリーが開始される予定だそうです。価格は現時点では未発表ですね。
ーーちなみに今回の6速MTは「電撃発表」という声もありますが?
山本 布石はありました。今年1月14日に開催された「東京オートサロン」のオンライン会見で、新型フェアレディZを見たトヨタの豊田章男社長が、「日産のみなさん、Zには負けませんから」と発言して世間をザワつかせました。今思うと、豊田社長のこの発言は今回のスープラの6速MTを示唆するものだったのかなと。日産の新型フェアレディZには6速MTの設定がありますからね。
ーーぶっちゃけ、豊田社長のその発言は台本があった?
山本 そもそも豊田社長が東京オートサロンに来る予定はなく、すべてがサプライズです。会場の練り歩きを含めて完全にアドリブだと思いますよ。
ーーちなみに山本さんはもうGRスープラの6速MTをお乗りになった?
山本 いいえ、僕はまだ乗っていません。試乗したら即レポートしますよ。お楽しみに!
☆山本シンヤ(やまもと・しんや)
自動車研究家。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ワールド・カー・アワード選考委員。YouTubeチャンネル『自動車研究家 山本シンヤの「現地現物」』を運営。