相模湾に面した「大磯ロングビーチ」(神奈川県中郡大磯町)の駐車場で行なわれた輸入バイク試乗会にモーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が特攻! 雨にも負けずガッシガシ試乗し、推しのバイクを選んだ!
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■BMWのEVは時速50キロ到達2.6秒!
青木 現在、日本ではバイクが売れに売れていますが、売れ行き好調なのは国産車だけではありません。
――ほお。
青木 JAIA(日本自動車輸入組合)の発表によりますと、2021年度(21年4月~22年3月)の輸入小型二輪車の新規登録台数は2万4149台で、前年度(2万1789台)と比べると10.8%増!
ちなみに国内における輸入ブランドのシェア(20年度)はアメリカのハーレーダビッドソンがトップで36%、続いてドイツのBMWが25.9%、3位がイギリスのトライアンフで11.7%、そして4位がイタリアのドゥカティで8.2%です。
――今回、そんな話題の輸入車に一気乗りしたと。ちなみに試乗会の主催はJAIAでしたね?
青木 毎年、インポーターを集めた恒例の試乗会でして、まさに二輪のワールドカップなんですよぉぉぉ! つーわけで、今回は最新の輸入バイクを徹底試乗し、アオキのガチ推しを決めました。
――1位からおなしゃす!
青木 BMWの新型EV、CE-04で決まりです! 見た目はSFのアニメや映画に登場しそうな近未来的スタイルです。
――確かに。
青木 動力用のバッテリーをフロアボード下に効率的に配置し、安定感のある長い車体になっています。BMWは四輪で培ったEV技術を二輪にも活用し、電動スクーター「Cエボリューション」を2014年に欧州で発売しました。スペイン・バルセロナほかで白バイとして活躍しています。
日本でも17年に発売し、20年には警視庁にも納入、東京マラソンや箱根駅伝の先導に使われて話題を集めました。
――CE-04は、クルマとバイクのどちらも造っているBMWだからこそ誕生した?
青木 はい、サプライヤーからバッテリーやモーターを供給してもらうメーカーが少なくないなかで、BMWは独自開発です。Cエボはガソリンエンジンを積むCシリーズの車体を流用していましたが、今回試乗したCE-04は車体を専用開発! Cエボと比較すると、44kgもの軽量化を実現しています。
――乗った感想は?
青木 「シュイーン!」という音を立ててのダッシュ力はすさまじく、時速50キロ到達はたった2.6秒。異次元へワープするかのような強烈な加速が味わえます。アクセルを戻すと、回生ブレーキがエンジンブレーキのように利き、ガソリン車のフィーリングに近づけている印象です。
――充電時間や航続距離は?
青木 バッテリー残量ゼロから100%までの充電時間は急速モードで最短80分。航続可能距離は約130kmです。
BMWジャパンの二輪担当者に聞いたら、「ユーザーが電動バイクに求める航続距離がわかって設定した」とのこと。CE-04は、車検不要の軽二輪(126~250cc)扱いなので、普通二輪免許で運転可能です。
■ハーレーは高級オーディオを搭載!
――そろそろ2位を!
青木 ハーレーが誇る排気量1923ccの空冷Vツインを搭載するCVOロードグライドです。
――デカッ!
青木 前輪は大迫力の21インチ。デュアルヘッドライトを埋め込んだ大柄なフェアリングがフロントまわりのボリューム感を強調しますが、実は車体側にマウントされ、ステアリング機構には一切干渉しません。つまり、ハンドリングは意外なほど軽く、巨体を鼓動感あふれる力強いエンジンでグイグイ操れます。
この快感が乗り手を病みつきにするため、ハーレーには熱狂的ファンが多い。オーディオはロックフォードフォズゲート製でチョー高音質。泣く子も黙る最上級モデルです。
――3位はどうなる?
青木 KTM自慢の最新ハイパーネイキッド、1290スーパーデュークRエヴォ。
トラス構造の軽量フレームに180馬力のVツインエンジン、前後17インチの足回りを組み合わせ、さらにスイッチひとつで3種のダンピングモードを選択できるセミアクティブサスペンションを追加装備。強烈すぎる動力性能をそのままに幅広いシーンに対応、戦闘力はバツグンです。
――どんどんお願いします。
青木 4位はロケットカウル付きの美しいボディラインに、180馬力の並列3気筒を積むトライアンフのスピードトリプル1200RRです。開発陣が目指したのは「公道を走れる究極のスポーツバイク」。グイグイ曲がり加速も鋭い。サーキット向けにトラックモードもあり、妥協なき本格仕様となっています。
――続いて5位は?
青木 400ccクラス並みの手頃なサイズの車体に、803ccのエンジンを搭載するドゥカティのスクランブラー・ナイトシフトは、角の取れたマイルドな出力特性で扱いやすく大型ビギナーにオススメ!
――6位をどうぞ!
青木 洗練さでいえば、北欧デザインのハスクバーナも忘れてはなりません。
アドベンチャーモデルといえば、〝冒険〟のためのタフギアというイメージを強調するため、武骨なスタイルと相場が決まっていましたが、レトロモダンな丸目ライトやグレーをベースに鮮やかなイエローの差し色が入ったシックなカラーのノーデン901はエレガントでなんとも美しい。フロントは21インチホイールを履き、ダートも意外なほどいける!
――そして7位は?
青木 大人が似合う上質さならモト・グッツィのV7スペシャルです。伝統の縦置きVツインはアクセルをブルンと吹かすと車体を右に揺らす挙動を起こし、ビギナーは驚きます。このクセがオーナーを虜(とりこ)にしてしまう。旋回時の寝かし込みがスムーズで峠はスイスイ、高速巡航も得意です。
――注目の1台もある?
青木 今年2月、日本ハムのBIGBOSS・新庄剛志監督がド派手にキャンプインして話題を集めたトライク(三輪バイク)に触れないと!
アオキの推しは今回試乗したロータックス製1330cc3気筒エンジンを積むカンナムのスパイダーRT。6速セミオートマを駆使して走るんですが、もう痛快のひと言。転ばないだけでなく、二輪とも四輪とも違うスポーツ性を持つ新感覚な乗り物ですよ!
●青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』