1992年に生産を終了した2代目レパードの後期型。新車時の販売は低迷したが、生産終了から30年が経つ現在でも中古車市場では根強い人気を誇る 1992年に生産を終了した2代目レパードの後期型。新車時の販売は低迷したが、生産終了から30年が経つ現在でも中古車市場では根強い人気を誇る

今年3月31日、日産はバブル期に一世を風靡した高級セダン「シーマ」の生産を今夏に終了すると明らかにした。〝シーマ現象〟という言葉が生まれたほど、初代は飛ぶように売れた。そんな初代シーマとの因縁により辛酸をなめたのが、同じ日産の2代目レパードの後期型だという。当時を知るカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が特濃解説する。

■横取りされた255馬力エンジン

--3月31日、日産がシーマの生産終了を発表して大きな話題を集めました。

渡辺 シーマはバブル期を象徴するようなクルマでした。ひとつの時代が終わったなと。

--そんなシーマと日産の2代目レパードの後期型に因縁があるとか?

渡辺 そうなんですよ。

--詳しく話を聞くその前に、そもそもレパードってどんなクルマでしたっけ?

渡辺 レパードは高性能と高級感を併せ持つスペシャルティカーですが、迷走していた日産の象徴みたいな存在です。1980年に登場した初代モデルは、2ドアと4ドアのハードトップボディを用意しました。それが2代目はクーペのみになり、3代目はセダンに変わり、最後の4代目はセドリック&グロリアの姉妹車となり、その姿を消しました。

--何だか波乱万丈の生涯ですね。

渡辺 そんなレパードを苦しめたのは、トヨタの大ヒット車「ソアラ」でした。初代ソアラは、初代レパードの翌年となる1981年に発売されています。

--初代ソアラが人気だったワケは?

渡辺 初代ソアラは、端正な外観や上質な内装に加えて、直列6気筒2.8リッターツインカムエンジンの最高出力が170馬力でした。それまでの日本車の最高出力は、日産プレジデントとトヨタセンチュリーを除けば、排ガス規制の関係もあり、日産スカイラインGT‐Rの残した160馬力が上限でした。そんな初代ソアラの成功に刺激を受け、2代目レパードはラージサイズの上級クーペに進化しました。あえてソアラと同じカテゴリーに踏み込み、勝負を挑んだわけです。

--2代目レパードの発売はいつですか?

渡辺 2代目の登場は1986年2月です。ちなみに2代目ソアラは同じ年の1月なので、2車種ともほぼ同時にフルモデルチェンジされました。

--ガチ勝負であったと。売れ行きは?

渡辺 両車の販売状況が落ち着いた1987年上半期(1~6月)のデータによると、レパードは月平均で約600台、ソアラは約2900台です。ソアラは初代モデルからの乗り替え需要も多く、認知度も高く、レパードの5倍近く売れていました。

--当然、捲土重来を期すべく、レパードは販売のテコ入れを行なったんスよね?

渡辺 はい。2代目レパードは後期型にV型6気筒3リッターツインカムターボを装着することを計画しました。高出力は255馬力に達し、当時では最高峰の動力性能になります。

--アレレ。255馬力って初代シーマと同じ数値では?

初代シーマはバブル期の1988年にデビュー。価格は400万円以上と、けっこうなお値段にもかかわらず、年間3万台を販売し、大きな話題を集めた 初代シーマはバブル期の1988年にデビュー。価格は400万円以上と、けっこうなお値段にもかかわらず、年間3万台を販売し、大きな話題を集めた

渡辺 そのとおりです。初代シーマは1988年1月に発売されて大ヒットしましたが、Y31型セドリック&グロリアがベースだったので、開発期間は通常の約4年に対して2年と短かった。当初はセドリック&グロリアと同じエンジンを搭載して発売される予定でしたが、日産の最高級になるシーマの位置付けを考えるとインパクトが弱い。そこで、2代目レパードのマイナーチェンジ用に開発を進めていた255馬力の3リッターツインカムターボエンジンをシーマが横取りしたわけです。

--えっ、そんなことできんスか?

渡辺 通常は横取りなど無理です。機関設計ではプロジェクトが組まれ、いつ、どの車種に搭載するのか厳密なスケジュールが定められていますからね。そこを初代シーマの開発者が多方面を説得し、先に搭載することになったのです。

--そして初代シーマは空前の大ヒットを記録したと。

渡辺 はい。仮に初代シーマがセドリック&グロリアと同じエンジンを搭載して登場していたら、〝シーマ現象〟という言葉は誕生しなかったと思います。ですから、255馬力のエンジンを初代シーマに初搭載したのは、日産の経営判断としては正解です。しかし、レパードにとっては地獄です。7ヵ月後に255馬力のエンジンを搭載しましたが、「シーマのエンジンを積んだ」と言われ、販売もパッとしませんでした。

--なるほど。

渡辺 ところが、2代目レパードはテレビドラマ「あぶない刑事」に起用され、生産終了後に人気を高めます。現在、2代目レパードの中古車はプレミアム価格で販売され、大半の車両が300万円以上です。500~800万円の中古車もあります。

--2代目レパードに販売面で圧勝した2代目ソアラの中古車価格は?

渡辺 300万円を超える中古車もありますが、200万円以下の車両も多いです。中古車価格は2代目レパードが高く、それは現時点の人気を反映させています。

--最後に笑ったのは2代目レパードだと。今も人気の理由はテレビドラマの影響?

渡辺 それもありますが、車両の雰囲気の違いもあるでしょうね。2代目ソアラはトヨタ的で質感が高く、品行方正な明るい雰囲気でした。対するレパードはチョイワルな雰囲気がある。そこが今もファンに刺さる理由でしょうね。


☆渡辺陽一(わたなべ・よういちろう)
カーライフジャーナリスト。執筆媒体多数。『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務め、フリーランスに。著書に『運転事故の定石』(講談社)など。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員