小椋はレース後、「今日は120%幸せです」とコメント。喜びを爆発させた 小椋はレース後、「今日は120%幸せです」とコメント。喜びを爆発させた

侍ライダーの小椋藍(おぐら・あい)が安定した速さを発揮して、Moto2の第6戦スペインGPで初優勝を飾った。いったいどんな若武者なのか? モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が解説する。

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青木 ニッポン期待の侍ライダー、その名も小椋藍が、Moto2クラス初優勝ですよぉぉぉ!

――今日も熱いなぁ。小椋選手はいつ優勝したんスか?

青木 現地時間の5月1日です。Moto2クラスの第6戦スペインGPで、Moto2クラス初優勝を成し遂げたんです。しかも、予選では猛者だらけのライバルを退け、初のポールポジションを獲得! 最後まで集中した力強い走りでトップに輝きました。

――青木さん、Moto2ってどんなレースでしたっけ?

青木 四輪のモータースポーツの最高峰がF1だとすれば、二輪はMotoGPです。オートバイのロードレース世界選手権は1949年に始まり、今年で72年目です。時代とともにルールも変わり、今ではエンジンの排気量別にMotoGPは1000㏄、Moto2は765㏄、Moto3は250㏄と3つのクラスでレースが行なわれています。

ーーほおほお。

青木 最高峰のMotoGPクラスは新幹線より速い時速350キロ超えで争われ、シートは12チーム24名しかありません。まさに世界一決定戦です。つまり、Moto2と3はその登竜門的なポジションで、それぞれ15チーム30名が参戦しています。年間上位に食い込めばステージを上げていけるわけです。

――小椋選手のチームはどこ?

青木 出光ホンダです。公平性を保つなどの理由からエンジンはトライアンフの3気筒765㏄、タイヤはダンロップが各チームに供給されています。条件がイーブンということもあり、トップから10位までがコンマ5秒以内なんてこともザラ。ものすごく僅差で競われ、ファンの間では「MotoGPクラス以上の究極の競り合い」とも言われています。

最後の最後まで追い抜きのチャンスすら与えない圧倒的な走りでMoto2クラス初優勝を手にした 最後の最後まで追い抜きのチャンスすら与えない圧倒的な走りでMoto2クラス初優勝を手にした

――要するに腕次第のクラスで初優勝したと。ちなみに小椋選手の経歴は?

青木 埼玉県出身、2001年1月生まれの21歳です。レース経験のあるお父さまの影響で3歳からポケバイに。2つ上の姉・華恋さんと幼少期からレース三昧の日々を送りました。ミニバイク、地方選手権を経て、14歳で全日本を経由せず、海外レースへ挑みました。

そして2016年、彼が15歳のとき、有望ライダー発掘と育成を目的にしたアジア・タレントカップでランキング2位を獲得し頭角を現すと、19年からロードレース世界選手権Moto3にフル参戦。初年度のアラゴンGPで2位表彰台に立つなど世界を相手に実力を見せつけ、翌20年はランキング3位に食い込む活躍ぶり!

ーー世界の舞台で結果を出し続け、昨年からMoto2に昇格したと。

青木 はい、2年目の今シーズンは第3戦で3位、4戦目に2位と結果を出し、優勝の期待が高まっていたところ、第6戦スペイン・ヘレスサーキットでやってくれました! 

予選トップのポールポジションからホールショットを決め、「狙いどおりにいった」と、23周のレースで一度も首位を譲らずトップでチェッカーを受けました。2位に2.5秒をつけての快勝で、ロードレース世界選手権参戦4年目にしての初優勝。日本人ライダーとしては20年3月の開幕戦カタールを制した長島哲太選手以来です。

――このまま活躍したら小椋選手が最高峰クラスへ進む可能性も?

青木 もちろん、表彰台に立ち続ければMotoGPに呼ばれます。いずれにせよ、この若き侍ライダーはチョー注目株なんですよぉぉぉ!

☆青木タカオ(あおき・たかお)
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営