bZ4Xは、トヨタがスバルと共同開発したクロスオーバーSUVタイプのEVだ。気になるボディサイズは全長4690㎜×全幅1860㎜×全高1650㎜
トヨタ初の量産EV「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」について、サブスクリプション(定額制)サービス「KINTO」での販売価格を月額8万8220円(税込)からと発表した。この料金はお得なのか? 賢く利用する方法は? 自動車専門誌『月刊くるま選び』の元編集長でカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏に聞いた。

渡辺 トヨタは5月2日、同社初となる量産EV「bZ4X」の個人向け定額制サービス「KINTO」の料金を発表しました。

ーーbZ4Xの個人販売は、カーリースのサブスクのみなんスよね。ズバリ、おいくら?

渡辺 FWDの場合、最初の4年間を経済産業省による補助金の適用で税込み8万8220円にすると発表しました。こちらは追加装備などのオプションを付けない場合の価格です。ちなみに契約にあたり別途、77万円の申込金もかかりますね。

ーー契約期間は?

渡辺 bZ4X専用プランの契約期間は、10年が基本になっています。居住地域によっては地方自治体からの補助金を受けられるケースもありえる。5年目以降は、月々の利用料が段階的に引き下げられますね。

ーーえっと、10年間に支払う合計金額はおいくら?

渡辺 補助金ナシの場合は963万7320円です。経済産業省の補助金を利用した場合は869万7480円です。

ーー同プランは諸費用コミコミなんスか?

渡辺 自賠責保険料、任意保険料、税金、車検代などの諸経費のほか、電池性能の保証なども含まれていますね。KINTOの特徴は、料金に任意保険料まで含まれることです。しかもこの任意保険は、年齢条件などが一切付帯されていません。したがって運転者が未成年でも適用されます。任意保険を頻繁に使って、等級が下がったユーザーにもメリットがありますね。というのも、KINTOに付帯される任意保険を使うため、自分の等級が下がっていても、出費が増えないからです。

ーーなるほど。

渡辺 すでに5月12日の正午からネットや販売店で、年内に納車される3000台の申し込み受け付けが開始されています。

内装は大型のセンターモニターが目を引く。また、ステアリングホイールより上にメーターパネルを見ることができる「トップマウントメーター」もポイント

ーーファンの間では「住宅ローンかよ」「購入できないのはいかがなものか」なんて声も飛んでいます。正直、このプランはお得なんスか? 

渡辺 KINTOの他の車種と比べると、まず77万円の申込金が必要で、補助金の交付を受けた場合、契約から4年以内に解約すると解約金も請求されます(その後は不要)。実はけっこう出費が多いのが特徴です。

――「トヨタ初の量産EVに乗ってみたい」という方も多いと思います。賢く乗る方法はないんスか?

渡辺 一般的には5年間の使用でしょうね。この場合、4年間は月々の使用料金が8万8220円×48か月分、残りの1年間は7万5460円×12ヵ月分、さらに77万円の申込金も加わります。結果、5年間の使用料金の合計は591万80円になります。

ーー5年間の使用料金をほかのクルマと比較すると?

渡辺 KINTOで扱うアルファードと比べてみましょうか。仮に価格が572万円のハイブリッドSR・Cパッケージを5年間契約した場合、月々の使用料金は8万8000円×60ヵ月分なので528万円になります。アルファードは申込金がありません。bZ4Xの価格はFWDが600万円で、補助金の85万円を差し引くと515万円になる。つまりbZ4Xの実質価格は、補助金を差し引くとアルファードSR・Cパッケージより57万円安いんですが、実は月々の使用料金の合計金額は約63万円高くなる。

ーーそれはなぜ?

渡辺 bZ4Xはアルファードに比べると、リセールバリュー、つまり売却する時の価値が下がってしまうからです。そのため使用料金を高く設定している。単純な損得勘定で捉えると、bZ4Xはお得だと言い切れないのが正直なところです。

――ほかに注意点は?

渡辺 KINTOはカーリースです。使用上の制約も多い。ペットの同乗、車内での喫煙、ドレスアップなどはできず、1ヵ月当たりの走行距離が1500㎞を超えた時は、1㎞当たり22円の追加料金が発生してしまう。借りていることを忘れずに、常に大切に使用することが求められるクルマなんです。


☆渡辺陽一(わたなべ・よういちろう)
カーライフジャーナリスト。執筆媒体多数。『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務め、フリーランスに。著書に『運転事故の定石』(講談社)など。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員