ポールポジションからスタートした8号車は380周を走破! 見事、優勝に輝いた

6月12日午後4時(日本時間同11時)、フランス西部ルマン市のサルテ・サーキットで、伝統のレース「ル・マン24時間耐久レース」がゴールを迎え、トヨタが5連覇を達成した! ちなみに5連覇はアウディ以来の快挙だ。この強さの背景には何が? 欧州の自動車業界に詳しいモータージャーナリストの竹花寿実氏が解説する。

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竹花 6月12日、フランス伝統の自動車レースである、「ルマン24時間レース」でトヨタGAZOO Racingが総合優勝、大会5連覇を達成しました!

――うほっ! 

竹花 しかも、トヨタは平川亮選手らがドライブする8号車がトップでチェッカーを受け、小林可夢偉選手らの7号車も2位に入り、2年連続のワンツーフィニッシュでル・マンを完全制覇しました。

――スゴ! えっと、そもそもの話ですが、ル・マンってそんなスゴいレースなんスか?

竹花 はい。ル・マンは世界最古の24時間レースなんですよ。開催地はフランス中部のル・マン市にある、1周が13.626㎞もあるサルト・サーキットで、コースの3分の2は普段は公道という特殊なサーキットです。現在ル・マンはWEC(FIA世界耐久選手権)に組み込まれています(今年は第3戦)。第1回が行われたのは1923年なので、来年は100年目ですね。つけ加えると、このル・マン24時間レースは、F1モナコGP、インディ500と並ぶ「世界三大レース」のひとつに数えられています。

――歴史も権威もあるカーレース?

竹花 そのとおり。ちなみにWECのル・マン24時間レース、F1の「モナコGP」、インディーカーシリーズの「インディ500」の世界三大レースをすべて制したことがあるのは、長いモータースポーツの歴史でひとりしかいません。ご存知の方も多いかと思いますが、偉大なイギリス人ドライバーのグラハム・ヒルですね。

ーーへぇー。

トヨタは4度目のワンツー・フィニッシュを飾り、ル・マン24時間レースを完全制覇

竹花 また、初期に5勝を挙げ、2003年に73年ぶりの優勝(ワンツーフィニッシュ!)を果たしたベントレーは、市販モデルに「アルナージ」や「ユノディエール」、「ミュルザンヌ」と、サルト・サーキットの有名なコーナーやストレートの名称を付けて、ル・マンにおける歴史をブランドイメージに生かしています。

――なるほど。なぜトヨタはそんな世界三大レースのひとつであるル・マンで5連覇できたの?

竹花 もちろん、ライバルだったポルシェやアウディがル・マンから去ったのは大きいと思います。特にポルシェの勝利数は圧倒的で、アウディの13回を上回る、19回です。この数字は文句ナシに歴代1位ですね。

――ふむふむ。

竹花 ただ、ポルシェやアウディが去ったとはいえ、ル・マンで5連覇するのは至難の業です。現在のトヨタは2012年の復帰から10年目で、チームとして成熟しているのだと思います。マシンの開発能力とドライバーの実力と経験値、チームマネジメントと、総合力が高くなければル・マンでは絶対に勝てませんから。

――つまり、ル・マンはしばらくの間、トヨタが"絶対王者"として君臨すると?

竹花 どうでしょうか? 来年はレース創設100周年となります。ポルシェやアウディ、BMW、フェラーリなどが最高峰のLMH(ル・マン・ハイパーカー)クラスに復帰するとのウワサも。加えて、ランボルギーニも参戦計画を明らかにしましたし、プジョーはWECの次戦モンツァから参戦を開始します。来年はトヨタの真価が問われるんじゃないですかね。


竹花寿実(たけはな・としみ) 
モータージャーナリスト。2010年渡独。フランクフルトをベースに在独モータージャーナリストとしての経験を持つ。現在もドイツの自動車メーカーの最新動向に精通。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員