世界初公開された「GRカローラRZ」の限定車「GRカローラ モリゾウエディション」。豊田社長が強くこだわる「ユーザーを魅了する野性味」を追求したモデルである

6月1日、トヨタ(トヨタガズーレーシング)は、「GRカローラRZ」と「GRカローラ モリゾウエディション」を世界初公開した。

そもそもベースとなっているカローラの初代は1966年に誕生。以来、150以上の国と地域で販売され、累計販売台数は5000万台以上! 世界中で愛される大衆車なのだが、今回、トヨタは自らの手でカローラを魔改造! 1.6リッターながら304馬力を誇るシン・カローラを爆誕させた。いったいどんな仕上がりなのか? トヨタを粘着取材する自動車研究家の山本シンヤ氏が特濃解説する。

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山本 トヨタが日本仕様の「GRカローラRZ」と、限定発売の「GRカローラ モリゾウエディション」を世界初公開しました。

ーーついに爆誕! 発売はいつスか?

山本 RZは今秋に発売し、「モリゾウエディション」は同時期から予約抽選を始めます。

ーー気になる価格は?

山本 残念ながら現時点で価格は未定です。ただ、モリゾウエディションはそれなりのお値段になると思いますが、RZは意外とリーズナブルではないかと僕は予想しています。

ーークルマの詳細は?

山本 ボディサイズは全長4410㎜×全幅1850㎜×全高1480㎜で、ホイールベース2640㎜です。搭載するエンジンは、GRヤリスが搭載する1618㏄直列3気筒ガソリンターボエンジン「G16E‐GTS」をブラッシュアップし、最高出力は304馬力まで引き上げています。

ーーふむふむ。トランスミッションは?

山本 もちろん6MTのみの設定です。駆動方式のスポーツ4WDシステム「GR‐FOUR」もGRカローラに合わせて最適化されています。

ーーウワサでは社長プロデュースモデルがクソハンパないらしいスね。

山本 そうなんです。モリゾウエディションは、豊田章男社長の想いがより強く込められたモデルになっています。豊田社長はトヨタのマスタードライバーで、モータースポーツにも積極的に参戦しています。そのときはモリゾウを名乗っているんですよね。

ーーそれでモリゾウエディションなんスね。

山本 はい。トヨタも公式に、「豊田が強くこだわりを持つ『お客様を魅了する野性味』を追求したグレードです」とコメントしていますが、車両全体に手が入っています。コンセプトは〝サーキットで速く〟。そのため5ドアですが、何とリアシートを撤去し、乗車定員は2名になっています。

ご覧のように「GRカローラ モリゾウエディション」は後席を撤去し、5ドアなのにふたり乗りだ。また、リアドアの窓ガラスは閉まったままの固定式という漢(おとこ)らしいにも程があるモデル

ーー5ドアなのに2シーター! その狙いは?

山本 もちろんボディの軽量化です。エンジンもターボ過給圧の最適化でRZより最大トルクをプラス30Nmの400Nmで、加速性能を向上させています。もちろん、シャシー系も抜かりナシ。さらなるボディ補強に加え、専用サスペンション、そしてミシュランの高性能タイヤを採用しています。

要するにサーキット向けのド硬派な仕様に仕上がっています。ちなみにボディカラーにはモリゾウエディション専用色となる「マットスティール」が設定されています。

ーーサーキット向けとはいえ、鬼のようなバッキバキ仕様ですね。

山本 ただ、撤去したリアシートのスペースに水素タンクを置けそうだなと。

ーーどういうこと?

山本 モリゾウエディションは、富士スピードウェイのタイムは2分を切っています。この記録は話題の水素カローラのレーシングカーとほぼ同タイムです。

ーーレーシングカーを市販したようなもんだと?

山本 正直、ナンバー付きの量産車としては驚異的なタイムですからね。一方のRZは公道からサーキットまでバランスのいいセットが施されています。ですから、ドリフトなど振り回して楽しむ走りをするなら、コチラを推します。

ーーなるほど。

山本 いずれにせよ、50年以上の歴史を持つカローラのなかで、ズバ抜けた1台だと思いますね。

ーー山本さん、ズバリ聞きます。このGRカローラは誰が買う?

山本 「まずはGRヤリスが欲しいけど、3ドアだと家族を説得できない」と悩んでいた人でしょうね。居住性に関してはノーマルのカローラと基本は一緒ですので使い勝手もいい。そして、かつて三菱のランサーエボリューションやスバルのWRX STIに乗っていた人ですかね。GRカローラを走らせたら、「トヨタでもこんなクルマをつくれるんだ!!」と驚くと思いますよ。

☆山本シンヤ(やまもと・しんや)
自動車研究家。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ワールド・カー・アワード選考委員。YouTubeチャンネル『自動車研究家 山本シンヤの「現地現物」』を運営