日産は公式サイトで、フラグシップスーパースポーツ「GT‐R」全車のオーダーが終了し、2022年モデルが完売したとアナウンスしている。今後、2023年モデルや次期型は登場するのか? 生殺与奪の権を握る日産の考えとは? 自動車研究家の山本シンヤ氏が解説する。
山本 日産の公式ホームページ上に、「NISSAN GT‐R(2022年モデル)は、注文台数が予定販売数量に達したため、オーダーを終了いたしました」とアナウンスし、話題を呼んでいます。
――ファンはかなりザワついていますよね。ちなみにGT‐Rのデビューっていつでしたっけ?
山本 2007年に登場しましたね。
――15年選手なんスね!
山本 そうですね。
ーーしかも、お値段は1000万円超です。
山本 つけ加えると2022年モデルは即完売です。
ーー山本さん、根強い人気のワケは?
山本 GT‐Rはデビュー以降、日産が進化の手を止めていないからです。エンジンはデビュー当初は480馬力でしたが、現在は570馬力(「GT‐R NISMO」は600馬力)まで磨き上げられています。もちろんシャシー周りも同様で、初期モデルとは別物と言ってもいいくらいの仕上がりです。実際に乗ってみても、最新の高級スポーツカーと比べて全く引けを取っていません。
――スゴ! 現在、新車での入手は難しく、中古車の価格も高騰しているとか?
山本 いろんな媒体が、進化版が登場すると「これが最後のGT‐R」と書き飛ばしているのも大きいのかなと思いますね。やはり「最後」と耳にしたら、ファンは一念発起しますよ。もちろん、投資目当ての人もいるでしょうけどね。
――なるほど。一方で、『欧州における騒音規制をクリアできない。そのため、GT‐Rの販売を終了するのではないか』だとか『やはり年々厳しくなる各国のあらゆる規制に対して15年選手の現行モデルを適合させるのは難しい』という声もありますが?
山本 確かに一般論としてはそうですが、現在の規制は今の日産の技術を持ってすればそれほど問題なく解決できると僕は思っていますね。
――つまり、山本さんは次期型GT‐Rも登場する可能性があると?
山本 可能性があるのではなく、間違いなく出ます。2007年にGT‐Rが登場したときの開発責任者は水野和敏氏でした。その水野氏が日産を退社した後、開発責任者を引き継いだのが田村宏志氏です。彼はスーパーサラリーマンと言っていい存在で、毎回ファンの期待を超える進化を行なってきましたし、新型フェアレディZの開発責任者も務めています。
――ふむふむ。山本さんは、どんなクルマになると予想する?
山本 さすがに日産も将来の商品計画を僕に教えてはくれませんが、これまでの取材を踏まえると、次もピュアな内燃機関のモデルとして登場するような予感がしています。将来的には、〝電動モンスター〟のような存在になるでしょうが、それは全個体電池が実用化されてからでしょう。
実際、日産のアシュワニ・クプタCOOは、「スポーツカーで重要なことは、『ユーザーが何を求めているか?』ですよ」と語っています。また、開発トップの田村氏も「日産はGT‐RとフェアレディZの両方を持っているのが強み。だから各々の『立ち位置』を明確にしています」と口にしている。
ーーすみません、GT‐RとフェアレディZの立ち位置って?
山本 僕の解釈だと、GT‐Rが〝最強のモビルスーツ〟。フェアレディZは〝ダンスパートナー〟です。僕はその立ち位置を比べる日がそう遠くないタイミングでやって来るのではないかと思っています。
山本シンヤ
自動車研究家。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ワールド・カー・アワード選考委員。YouTubeチャンネル『自動車研究家 山本シンヤの「現地現物」』を運営