フォルクスワーゲンジャパンは6月23日に「ポロ」のマイナーチェンジモデルを発売した。価格は257万2000~329万9000円
1975年の発売から、40年以上にわたり世界中で売れ続けているフォルクスワーゲンのコンパクトカー「ポロ」。そのポロがマイナーチェンジし、6月23日に日本で発売となった。ドイツ車に精通するモータージャーナリストの竹花寿実氏が、箱根で新型の実力に迫った。

――フォルクスワーゲンのコンパクトハッチバック「ポロ」がマイチェンしたそうで。

竹花 はい。欧州では1年ほど前に改良を受けていたのですが、ようやく日本市場にも導入されたので、さっそく箱根でその出来栄えを確認してきました。

――現行モデルの日本デビューは?

竹花 現行の6代目は、2018年3月に日本に上陸しています。今回はそれから初のマイチェンとなります。ポロはゴルフよりひと回り小さい弟分的なモデルで、ゴルフと同様にドイツで大人気のコンパクトカーですね。

――累計販売台数は?

竹花 初代ポロは1975年にデビューで、これまでに派生モデル約250万台を含めてグローバルで2050万台以上が販売されています。日本市場に本格的に導入されたのは1996年と遅いのですが、これまでに約30万台が売れており輸入車としてはかなりの人気モデルです。

――ちなみにドイツではどんな人たちが乗っているクルマ?

竹花 老若男女、あらゆる世代に人気ですね。価格が手頃で運転しやすいので、毎日の買い物や子供の送り迎え、ちょっとした遠出まで何でもこなす実用車であり、若い人には運転免許を取得して最初に乗るクルマとしても人気がありますね。もはやドイツの景色の一部になっています。

――今回のマイチェンでなにが変わった?

竹花 まず見た目が変わりました。サイドパネルは従来どおりですが、ヘッドランプとフロントバンパーが新デザインになり、ラジエターグリルに左右のLEDストリップを繋ぐLEDクロスバーを採用しています。リア周りも新デザインのLEDテールランプとリアバンパーを採用しています。ウインカーも流れるように点灯するダイナミックターンインジケーターになりました。全体的にこれまで以上に兄貴分のゴルフに近くなった感じで、スッキリとしていながら車格が上がった印象を受けます。

前後のバンパー形状やライト類が改良を受けたエクステリア。リアは立体的な新デザインのLEDテールランプを採用

――内装は?

竹花 これまで液晶メーターパネルはオプションだったのですが、最新仕様が標準装備になりました。エアコン操作パネルもタッチ式のものに一新しています。レザーステアリングも新デザインとなり、同一車線内全車速運転支援システム「トラベルアシスト」の起動ボタンが新たに搭載されています。

内装も改良を受け、液晶メーターやタッチスイッチ式のエアコン操作パネルが全車に採用された

――エンジンはどうです?

竹花 95PSと175Nmを発揮する1.0L直3ターボという点は変わらないのですが、「EA211 evo」という最新世代のエンジンに一新しています。新エンジンは、ミラーサイクル燃焼プロセスや、バリアブルターボジオメトリー機構を採用していて、圧縮比も上がっています。これらの改良で、1600rpmという低回転から最大トルクを発生するエンジン特性を手に入れました。その結果、WLTCモード燃費は従来モデルの0.3km/L上回る、17.1km/Lを実現しています。

――実際にワインディングを走ってみた率直な感想は?

竹花 今回はスポーティな仕様のTSI Rラインに試乗したのですが、走り出した瞬間から驚きました。発進時からクルマがスッと軽く転がりだして、低速域から力強さが感じられてトルクに余裕がある。7速DSGはごく低速域でギクシャクするときもありましたが、低めのギアを使用するSモードやマニュアルモードに入れてシフトパドルを駆使すれば、期待以上の走りが楽しめました。電子制御式ディファレンシャルロックXDSも付いているので、コーナリングもなかなかのキレ味でしたよ。

――乗り心地は?

竹花 TSI Rラインは専用のスポーツサスペンションと17インチタイヤを装着しているので、若干乗り心地は硬めですが、十分に快適です。後日、標準サスと16インチタイヤを装着したTSIスタイルにも乗ったのですが、個人的にはTSI Rラインの方が好ましいと感じました。

――気になるところはひとつもない?

竹花 7速DSGがごく低速域でギクシャクするのはこれまでと同様です。あとトラベルアシストが「全車速」と謳っていながら、完全停止時に3秒ほどでブレーキがリリースされてしまう点ですね。ただ、電動ではなく手動パーキングブレーキなので、停止状態を維持できないのは仕方ないですね。

――どんな人に推せる?

竹花 コンパクトカーが欲しい人なら誰にでもオススメできますが、とにかくボディにしっかり感があって、乗り味が上質なので、より上のクラスからダウンサイズしたい人にもオススメです。ポロは昔からBセグメントのなかでは明らかにオーバークオリティなんです。1990年代後半に日本に上陸した3代目は、同クラスで圧倒的に完成度が高かった。6代目が登場する直前の2017年にドイツで5代目の最終モデルに試乗したときも、全く古さを感じませんでしたね。新型にもこの伝統はしっかり継承されています。若い人が輸入車のエントリーモデルとして選ぶ1台としてもピッタリだと思います。

――競合車は?

竹花 ドイツならオペル・コルサなんですが、日本ではプジョー208やルノー・ルーテシアあたりですね。208は、ガソリン車は1.2L直3ターボで、EV仕様もあります。ルーテシアは、ガソリン車が1.3L直4ターボで、つい先日ハイブリッドも追加されました。新型ポロはオーソドックスなエンジン車ですが、ドイツ人が磨き上げたポロは、足を知り尽くした職人が生み出した万能スニーカーのようなクルマ。1度体験したらその良さが理解できると思います。

●竹花寿実(たけはな・としみ) 
モータージャーナリスト。2010年渡独。フランクフルトをベースに在独モータージャーナリストとしての経験を持つ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員