中古オートバイ販売グループの業界最大手「レッドバロン」が、那須モータースポーツランド(栃木県那須塩原市)にてメディア向け試乗会を開催。現地に飛んだモーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が絶版マシン17台を一気乗り! 男心を刺激し、バイクの日に思わず乗りたくなる推しの5台を選んだ。
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■新車は納期が長く、中古車に注目が!
新型コロナウイルスの出現以降、密を避けられる乗り物としてバイクが大注目を集めている。しかし、クルマと同じく新型コロナとウクライナ危機の影響で半導体を含むパーツ不足に苦しみ、新車の納期は軒並み延びている。そのため納期が早い中古車市場が活発化し、往年の人気モデルの価格は沸騰中!
そんななか、直営店300店以上、年間11万台を販売する中古オートバイ販売グループの業界最大手「レッドバロン」が、那須モータースポーツランド(栃木県那須塩原市)でメディア向け試乗会を開催した。
気になる試乗会の内容は、懐かしの絶版お宝バイクを17台そろえ、ジャーナリストにサーキットを攻め込ませるというもの。コレは要するに、同社が扱う車両のコンディションの良さを知ってもらうのが狙いだ。
ただ、疑問もある。なぜこのタイミングでレッドバロンは試乗会を開いたのか? 広報担当者はこう説明する。
「昨今、ネット通販が普及し、保証なしで中古車が売られています。しかし、オートバイは店舗で現車を見て購入し、売り手側も購入後のアフターケアを欠かすことはできません。パソコンなどで数点の画像を見てオートバイを購入するのはリスクが高い」
新車もそうだが、特に中古車は安心と安全のため定期的なメンテナンスが必要不可欠。ちなみにレッドバロンは独自に厳格な検査基準を設け、全車保証付きで販売していることをつけ加えておく。
■世界を熱狂させた〝ニンジャ〟
アオキが選んだ第1位はズバリ、カワサキのGPZ900Rニンジャである。ニンジャは現在、全世界で1700億円突破という興行収入をたたき出している映画『トップガン マーヴェリック』にも登場、バイクファンを喜ばせている。
正確には1986年に公開された1作目の『トップガン』で、主演のトム・クルーズが劇中で駆ったのが1位のGPZ900Rニンジャだった。映画の影響もあり、世界中で〝ニンジャブーム〟が巻き起こり大ヒットを記録した。ちなみに新作でトム・クルーズが乗っていたのは最新のニンジャH2である。
そもそもGPZ900Rニンジャは84年に初代が誕生。最高速度240キロ超は当時の世界最速で、1972年に世界市場を席巻したカワサキのZ1の再来と言われた。そんな80年代の世界最速車は月日を重ねても、そのパワーフィールは衰えない。
試乗したのは88年式で、前輪が16インチ。小径ホイールを生かした旋回力で、タイトコーナーも苦手にしない。余談だが、90年式からフロントホイールを17インチ化し、2003年まで20年のロングセラーとなったモデルでもある。
2位もカワサキで、ゼファーχ(カイ)。ヨンヒャク4発の胸のすくサウンドがタマらない。初代ゼファーは、レーサーレプリカブームのド真ん中の89年に登場。
バイクファンに語り継がれるマンガ『あいつとララバイ』(楠みちはる著)の主人公も乗る名車「Z2(ゼッツー)」を思い起こさせる、実に単車らしいオーソドックスなフォルムでネイキッドブームを先導した。
今回試乗したのは誕生10周年を記念した限定仕様で、注目は伝統の火の玉タンク。このカラーは72年のZ1、73年のZ2から受け継がれたもの。ちなみに今春発売された火の玉タンクの「Z900RS/Z650RS」のZ50周年限定車は即完売した。このゼファーχも超お宝マシンだ。
3位はホンダのCBR1100XXスーパーブラックバード。1996年に登場し、空力を徹底追求したフルカウルボディでホンダが世界最速の称号をカワサキから奪還した。
試乗したのは2001年式の国内仕様で、排ガス規制によりおとなしくなったと当時は言われていたが、最高峰モデルならではの堂々たる佇(たたず)まいや、瞬く間に時速180キロの速度リミッターに達する超絶パワーは健在であった。
第4位はヤマハのDT230ランツァ。公道を走れる国産2ストバイクは環境規制により絶滅したため、ファンから今も熱視線を浴びている。軽量なのも最高で、アオキはその懐かしさに感涙し、思わず大ジャンプをブチかましてしまった。
5位はカワサキZXR250。250ccの直列4気筒エンジンはハイメカの極み。レーサーレプリカ全盛期が残した遺産とも言える。2万回転に迫る超高回転型エンジンが轟(とどろ)かす甲高いサウンドは脳天を直撃し、今でも酔いしれる。
そして次点はスズキ・ウルフ250。2ストのレーサーレプリカRGV250ガンマのネイキッド版だから戦闘力は鬼!
今回、懐かしの国産絶版マシンにサーキット試乗したわけだが、どれもコンディションは抜群だった。ぜひ、バイクの日はお店に足を運び、実際にバイクを見てほしい。
※実勢価格は編集部調べ
●青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』