ダイハツは去る6月19日、軽自動車のふたり乗りオープンカー「コペン」のデビュー20周年記念モデルを1000台限定で発売すると発表。しかし、たったの5日で即完売(!)。この異常人気の背景にはなにが? 自動車研究家の山本シンヤ氏が解説する。
山本 大変です。6月19日、ダイハツはふたり乗りの軽自動車「コペン」のデビュー20周年を記念した特別仕様車を今秋に発売することを発表しました。
――はい。
山本 このコペンは1000台限定だったんですが、たった5日間で完売しました。
――マジか! そもそもですが、コペンの初代はいつデビューでした?
山本 2002年ですね。
――20年間の累計販売台数は?
山本 20年間の累計の販売数は、約9万3000台となります。
――その数字はスゴい?
山本 単純計算すると年平均は約4650台で、正直言うと台数的にはそれほどたいしたものではありません。
――そうなんですね。
山本 ただし、コペンの本当のスゴさは発売以来、生産台数の浮き沈みがほとんどなく、常に安定した台数を販売してきたことですね。日本のスポーツ系モデルはデビュー時に瞬間的に売れるのが相場ですが、その後は苦戦し、最後は生産終了......というケースが多い。
しかし、コペンというクルマは、決して派手さはないものの、着実にファンを増やしてきました。その結果が今回の完売につながったのだと思いますね。
――要するにダイハツはコペンを大切に育ててきたと。
山本 そのとおりです。1990年代初頭にホンダ「ビート」、スズキ「カプチーノ」、マツダ「AZ‐1」も軽のオープンタイプのスポーツカーがありましたが、どれも打ち上げ花火のごとくパッと現れては消えてしまいました。
実は当時、ダイハツはこの流れに乗ることができなかったのですが、そのときの悔しさがコペンを生んだのだと私は思っています。
――アレレ。ホンダにはビートの後継車たるS660がありませんでした?
山本 残念ながら今年3月に生産終了しました。
――なるほど。山本さん、ダイハツがコペンを20周年に導いた背景にはなにが?
山本 S660は専用設計の部分が多いので、改良や法規への対応が難しく生産終了に......。ビジネスの観点で言えば、台数が少ないモデルに予算はかけられませんからね。
対する、コペンはダイハツの他の軽自動車とメカニズムをはじめとする基本部分を共用しているので、実はその辺りの対応もしやすい。こういうダイハツらしい合理的な考え方がいい方向に活きていますよね。さらに現行モデルはボディパネル変更も簡単にできる構造のため、今後のデザイン変更もしやすいはずですよ。
――ズバリ、ダイハツは今後もコペンを大切に育てるのでしょうか?
山本 もちろんです。ダイハツは"発売されてから20年。みなさまの愛があったから、今日この日まで、走り続けてこれたのだと思います。20周年の感謝を込めて。ダイハツは、コペンをこれからも。"と宣言しているように、販売はまだまだ続きますよ!
●山本シンヤ(Shinya Yamamoto)
自動車研究家。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ワールド・カー・アワード選考委員。YouTubeチャンネル『自動車研究家 山本シンヤの「現地現物」』を運営