1位 3代目シビック(1983年~1987年)
今年、1972年の発売開始から50周年を迎えたホンダ・シビック。累計販売台数は2700万台以上を誇る、ホンダの世界戦略車である。そんな歴代シビックのベスト3はどれ? 自動車専門誌の元編集長で、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が選考した。

――今年、シビックが生誕50周年を迎えたそうですね。

渡辺 シビックはホンダの基幹車種で、初代モデルを1972年に発売しました。販売累計は2700万台に達しています。

――そこで今回、渡辺さんにシビックの歴代モデルのなかからベスト3を選んでもらいました。

渡辺 選考基準は単純で、日本のユーザーを大切に考えて開発されたかどうか。海外で売れ行きを増やしても、「ニッポンはオマケ」の扱いのクルマでは、ベスト車には推薦できません。

――ニッポンはオマケを具体的に言うと?

渡辺 2005年に発売された8代目シビックですね。海外向けの開発で3ナンバーサイズのセダンになり、売れ行きも下げました。

――どのくらい下がった?

渡辺 1995年に発売された6代目は、翌96年に月平均約6000台を登録しました。ところが、8代目の販売台数を見ると、デビュー翌年となる06年の月平均の登録台数は1200台程度です。

――なるほど。では、そういう基準を踏まえた上での1位はどれ?

渡辺 83年に登場した3代目しかありません! 特に3ドアボディは、ホイールベースとルーフが長く"マン・マキシマム・メカ・ミニマム"、つまり居住空間を広く確保し、メカは最小限度に抑える考え方を明確に表現しました。

――3代目は通称"ワンダーシビック"と呼ばれ、多くの人に親しまれましたね。現在も中古車が高値で取引されています。

渡辺 つけ加えると、自動車では初となるグッドデザイン大賞を戴冠。また、日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞していますね。

――2位は?

渡辺 72年に登場した初代シビックですね。全長が3405㎜という今の軽自動車並みに短いボディで、4名乗車が可能な居住空間を備えました。外観も引き締まり感があって実にカッコよかった。

2位 初代シビック(1972年~1979年)
――どんなメカニズム?

渡辺 1973年に追加されたCVCC、つまり希薄燃焼方式のエンジンが記憶に残ります。触媒などの後処理装置を使わず、アメリカが実施した厳しい排出ガス規制のマスキー法と、これをベースに施行された日本の昭和50年排出ガス規制を見事クリアしました。

――ふむふむ。

渡辺 ホンダのクルマ造りはエンジン中心といわれ、その基礎が初代シビックのCVCCです。今のホンダは運転の楽しさと優れた環境性能の両立を大切にしていますが、この考え方も初代シビックで確立されました。CVCCを用意する一方で、ツインキャブレターを装着するRSも選べたからです。ちなみに現行フィットも改良を受け、「RS」を復活させています。日本のユーザーに向けた当時のシビックのコンセプトは、今のフィットに受け継がれていますね。

――3位は?

渡辺 95年に登場した6代目ですね。3ドアのホイールベースがフェリオと共通化され2620㎜になりました。3ドアの全長は4180㎜ですから、全長の割にホイールベースが長い。ボディの四隅に4輪が配置され、カーブを曲がるときでも慣性の悪影響を受けにくかった。当時のハッチバックでは、走行安定性が抜群でしたね。

3位 6代シビック(1995年~2000年)
――そのほかに6代目の特徴は?

渡辺 優れた走行安定性を生かして、97年にシビックとして最初の「タイプR」を加えました。1.6リッターの自然吸気エンジンは最高出力185馬力を8200回転で発揮します。乗って楽しいクルマで、しかも価格は199万8000円でした。

――うほ、格安ですね!

渡辺 販売店によると、新型シビックタイプRの価格は約499万円とのこと。つまり、初代シビックタイプRは現在の半額以下でした。日本のクルマ好きに対する最高のプレゼントで、多くのユーザーに愛用されましたね。

●渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務める。著書に『運転事故の定石』(講談社)など。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員