発売延期となっていたホンダ渾身の新型バイク「ダックス125」が9月22日、ついに発売となった。その実力は? 報道試乗会に参加したモーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が徹底チェックした!
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■早くも爆売れの新型ダックス
ホンダが9月22日に新発売した「ダックス125」が話題を呼んでいる。その理由はふたつ。まず見た目。信号待ちで止まるたびに、こだわりの鋼板バックボーンフレームをなでずにはいられないし、ダックスフントに似た胴長短足のそのスタイルは、まるでペットのような愛くるしさなのである。
ふたつ目は排気量。125ccまでとする原付二種は、教習所に通えば最短2日で免許が取れるのが最大の魅力。実は普通免許に付帯する原付一種(50cc以下)は、時速30キロの制限速度や二段階右折、ふたり乗り禁止など制約が多い。
しかし、原二クラスは高速道路こそ走れないが、それ以外は大型バイクと同様の交通ルールにのっとって走行できる。加えて「密」を避ける手軽さやソロキャンプブームも追い風となり、昨今、注目を集めている免許なのだ。
その証拠に小型限定AT普通二輪免許の新規取得者数は2016年は約1万3000人だったが、21年には約2万8000人へと激増。小型のMT免許も含めた数字を見ると、16年の約1万5000人が、21年には約3万9000人へと倍増している。
当然、新車販売もすこぶる好調。2016年は10万台だったが、21年に11万5000台に伸びている。メーカーも活性化するこのセグメントを重要視し、ホンダはスクーターがメインだったこのクラスに、〝レジャー系〟を続々登場させている。
ダックス125の国内営業領域責任者である常松智晴氏によれば、ハンターカブCT125は、1万5000台を売る大ヒットを記録しているという。
しかもホンダは、ほかにもクロスカブを6500台、モンキー125を4500台、スーパーカブ110を4500台、スーパーカブC125を2500台売り、64%ものシェアを獲得している。常松氏は、「ホンダがクラスを牽引(けんいん)している」と胸を張る。
そんなドル箱市場にホンダがブチ込んだのがダックス125。今春の大阪モーターサイクルショーで本邦初公開され、大きな話題を呼んだ。当初は7月に新発売の予定だったが、世界的な海上輸送・港湾の混雑など、物流の混乱による部品の入荷遅延により発売を延期していた。
国内の年間販売計画は8000台だが、こんな状況下でも、すでに3500台もの受注が入っているというからハンパない。
なぜダックス125はこんなにも人気なのか? 開発責任者の八木 崇(やぎ・たかし)氏を直撃した。八木氏は1969年にデビューした〝初代のカタチ〟を継承すべく奮闘したと話す。
「ダックスならではのスチールモノコックフレームを新設計し、外観のアイデンティティとしてこだわりました。
また、太って見えないようにしたT字形のフレームがハッキリわかるよう、電装部品、エアクリーナー、バッテリー、燃料タンクもフレーム内に収めました。どうやって配置したらスペースを効率よく最小限に抑えられるか、試行錯誤を繰り返しましたね」
開発中、コスト面や量産性などを考慮し、一般的なパイプフレームにモノコック風のカバーをつけるという手法も検討しなければならなかったという。
「パイプフレームで検証した結果、幅が広がりすぎるため、開発チームから『こんなのはダックスじゃない!』という声が聞こえました。やはりダックスにはモノコックフレームが合理的だなと」
モノコックフレームを採用できたのは、先行して発売したモンキー125やハンターカブら復刻レジャー系たちがヒットしたおかげであり、もし登場の順番が逆で、ダックスが先陣を切っていたら、こんなにもコストや手間のかかる開発はできなかったはず。
八木氏にそう質問すると、「そうだったかもしれません」と否定しなかった。ダックス125はホンダ原二クラスのこれまでの知見や財産を結集した渾身(こんしん)作だからこそ、44万円というリーズナブルな車体価格が設定できたのだ。
実際に乗ると、スーパーカブ譲りのエンジンは遠心クラッチによりクラッチレバー操作が不要で、誰でも運転できる。マフラーエンド内部のパンチングメッシュの穴の配置や数を徹底追求したことで、サウンドも心地よい。
また、段差のないロングシートはタンデムがしやすく、家族やパートナーとふたり乗りを気軽に楽しむことができる。ビギナーはもちろん、リターンライダーやベテラン層のセカンドバイクにもオススメ。ズバリ、大ヒット確実!
●青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』