10月6日、ホンダは「N-BOX」が2022年度上半期における新車販売台数で1位を獲得したことを発表した。〝シン・国民車〟の人気の秘密とは? 自動車専門誌編集長のキャリアを持ち、現在クルマ系ユーチューバーとして大活躍するウナ丼氏に話を聞いた。
――ホンダの軽自動車「N-BOX」が今年上半期の新車販売でトップに輝きました。
ウナ丼 N-BOXがナンバー1......。や、知ってましたよ知ってました。そうですよね1位ですよね......(と言いつつスマホで検索し、「ホンマや!」と絶叫)。
――えっと、ウナ丼さんはチャンネル登録者数34万人以上を誇るクルマ系ユーチューバーで、N-BOXを徹底チェックした動画を何本も上げています。2011年にデビューし、累計販売台数は210万台を軽く突破。もはや爆売れが止まらない状態のN-BOXですが、ズバリ人気の秘密は?
ウナ丼 やっぱ価格に対して全部の質感がいいというスーパーシンプルな点に尽きるんじゃないでしょうか。
――なるほど。
ウナ丼 じゃあホンダがそのために、どんな複雑難解な手法を使ってN-BOXを作ったかといえば、それは逆で、むしろスーパーシンプルに作ってると思います。「軽をよくしました。軽なのに作り込みました」とホンダは言います。
でも、実は僕が思うに「あんま軽の作り方わかんなかったんで、とりあえず手持ちのステップワゴンをぶった切って細くしました」という作りになってるんじゃないかと。
――そう思ったワケは?
ウナ丼 まずデザイン。部品ごとの質感が高く時間をかけている。特にカスタムは車幅を考えず、「かっこいいライトの形とサイズを最初に決めて置いてみる」的な考えで配置しているから、正直バランスが悪い。けど、ゴリ押しのかっこよさがあるんですよね。
しかも、標準もカスタムも、ナンバーをセンター配置して「白ナンバーの普通車」的ルックスに。実はコレ、軽自動車では簡単なようでいて、サイズ制約による内部配置の難しさ(特にラジエターへの冷却風位置)によって簡単には実現できません。けど、デザイン部が技術部とよく折衝して実現していると思います。
――内装はどうです?
ウナ丼 マジでステップワゴン級コストの素材とデザインで、かつ、これが一番ヤバいんですけど、パーツ分割が多い。異なる素材をミルフィーユ的に積み上げると質感って上がるんですが、コストと工数も上がるため、当然価格が高くなってしまう。しかし、N-BOXはそれを普通にやっている。
あと、「軽だから」というポップなデザインにしてなくて、やっぱステップワゴンをぶった切っただけみたいな大人デザインなんですよね。でも外観同様、無茶してぶった切っているから、横幅方向に変な感じも。特にセンターモニターなんて、完全に助手席正面の位置にありますからね(笑)。
――走りに関しては?
ウナ丼 走りはN-BOXの究極のキモですね。ここ5年くらいのホンダがヤバいのは、ついにレジェンドからN-BOXに至るまで「どれ乗ってもまったく同じハンドリング」になった点です。
アウディとかって、どれ乗っても、「これ絶対アウディやんけ!」ってフィールですが、その感覚なんですよね。当然、あのフィールを軽で実現するって、正直、かなり大変なこともあるはずです。
――話をまとめると?
ウナ丼 あくまで僕の妄想ですが、ホンダはステップワゴン基準でN-BOX作っちゃった。本来は価格も高くなるところを、「車体切って鉄減ってシート数減って排気量減ったから少し安くしなくちゃ!」という感じで軽の価格にした。そりゃ、普通に考えて売れますよ。
――最後にN-BOXには弱点がない?
ウナ丼 弱点は乗り心地に振りすぎたハンドリングです。統一感のあるホンダの走りのなかで、N-BOXはコシがないんですよね......。
●ウナ丼
クルマ系ユーチューバー。クルマ&バイク誌の編集長を経て独立。コアな自動車書籍&DVD出版社「エンスーCARガイド」を立ち上げる。2011年、そのDVD告知のためにYouTubeチャンネルを開設。現在、運営する「ウナ丼_STRUT_エンスーCARガイド」の登録者数は34万人以上。日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員でもある