神奈川県横須賀市にある日産のテストコース「グランドライブ」で報道陣向けの試乗会が行なわれた。走りの実力は!?
11月28日、日産自慢のミニバンであるセレナが6年ぶりにフルチェン。大ヒットした先代からバトンを受け継いだ新型はどこが磨かれたのか? 6代目の開発責任者や専門家に話を聞き、その魅力に迫った。
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■モデル末期でも鬼売れだった先代
日産 6代目セレナ 価格:276万8700~479万8200円 6代目は日産の最上級ミニバン「エルグランド」を彷彿とさせる顔面に仕上がっている
ミニバンの絶対王者が6年ぶりにフルチェン! 6代目へと進化し、大きな話題を呼んでいる。
セレナは1991年に初代が誕生、ほぼ日本専売モデルながら累計販売は約200万台を誇り、ミニバンの年間シェアトップは9回という絶対王者だ。つけ加えると、日産の国内販売の約15%をセレナが占めており、名実共に日産の大黒柱的なクルマである。
自動車専門誌の元編集長で、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏にセレナの人気ぶりを聞いてみた。
「今年7月に、日本自動車販売協会連合会が発表した2022年上半期(今年1~6月)の車名別新車ランキングを見ると、先代セレナはモデル末期ながら2万7894台を登録して10位にランクインしているんですよ」
6代目はルーフスポイラーが全車に標準装備されている。ちなみにホイールベースは2870㎜
ボディサイズは全長4765㎜×全幅1715㎜×全高1870~1885㎜。最小回転半径は5.7m
実はモデル末期のセレナが、新型に切り替わったトヨタのノア/ヴォクシー、ホンダのステップワゴンなどのライバルを上回る登録台数を稼ぐ月もあったというから驚く。鬼売れの背景には何が?
「先代はほかのミニバンに比べて納期が大幅に短く、さらにフルモデルチェンジを控えていた関係もあり、好条件で購入できたんです」
だが、そもそもクルマに魅力がなければ選ばれないはず。
「先代セレナは前方の見晴らしの良さと、シートアレンジが秀逸。また、ボディが実際より大きく立派に感じられるのも人気の秘密でした」
エンジンは日産自慢のe-POWERと、純ガソリン車の2タイプを用意している
スイッチタイプの電制シフトに変更したことで、運転席も広い。インパネは先進的で上質
では、新型のセールスポイントは? 6代目セレナのチーフビークルエンジニアを務めた黒田和宏氏が説明する。
「第2世代となるe-POWERは1.4リットルの専用エンジンです。さらに最上級モデルのルキシオンには、ミニバン世界初となるプロパイロット2.0を搭載し、高速道路でのハンズオフを可能にしました」
最新技術マシマシとなった6代目だが、走りも気になる。神奈川県横須賀市にある日産のテストコースで速攻試乗し、その実力を試してきた前出の渡辺氏はこう言う。
「プラットフォームは先代型と同じですが、徹底した遮音性能の向上により、車内への音の侵入を抑え込んでいます。ステアリングの支持剛性も高まり、ハンドル操作時の反応も、以前に比べて正確になりました」
今回、マルチセンターシートを進化させることで、e-POWERにも8人乗りを設定した
シートスライド機構は3列目にも拡大。クラストップを誇る広々とした室内を実現
先代から進化した部分は?
「静粛性、視界の良さ、シートの座り心地、e-POWER搭載車のシートアレンジ、運転支援機能などは磨き込まれています。また、高速道路のカーブや車線変更時の走行安定性、横風によるふらつき耐性も、先代モデルより向上していますね」
ただし、弱点もあるという。
「プラットフォームが先代型と同じなので、先代同様、床の位置がノア/ヴォクシーやステップワゴンより70~80㎜高い。乗降時にはサイドステップと呼ばれる小さな階段を使います。乗降性に関してはライバルがリードしている状況ですね」
6代目セレナの売れ行きを渡辺氏はこう予想する。
「先代は大ヒットモデルです。その乗り換え需要だけでもかなりの台数を稼げると思います。逆に言うと、6代目セレナは日本市場の命運を握る大切なクルマですから、売れないと日産は苦しい立場になりますよね」