日産「エクストレイル」価格:319万8800~449万9000円。e-POWERの電気モーターはフロントが204PS/330Nm、リアが136PS/195Nm。まるでEVのような先進的で上質な走り
今年7月以降、新型SUVが続々とデビューし、注目を集めている。そこで、モータージャーナリストの竹花寿実氏が片っ端から徹底試乗し、激推し3台をセレクト。推しのワケを聞いた。
■エクストレイルが受注好調なワケ
――今年、新型SUVが続々登場し、注目を集めています。
竹花 その筆頭が7月25日に発売された日産の4代目エクストレイルです。
――売れ行きは?
竹花 日産によれば、2万7000台以上と注文が殺到し、10月31日に受注を一旦停止しています。半導体を含むパーツ不足も理由に挙げており、現時点で受注再開の時期は未定とのこと。
――マジか! ちなみに新型はどんなクルマなんですか?
竹花 9年ぶりにフルチェンしました。2000年に初代が登場したエクストレイルは、いわゆるコンパクトSUVです。過去の3世代はグローバルで累計630万台以上を売った大人気モデルですね。日本市場の累計は70万台以上で、日産の屋台骨を支える基幹モデルのひとつです。
――歴代のエクストレイルがウケた理由を分析すると?
竹花 初代と2007年デビューの2代目は"タフギア"をうたって、オフロードの走破性とワイルドなデザイン、徹底的に使い倒せる道具感で大ヒットしました。2013年に登場した3代目は、さらに先進運転支援システムのプロパイロットなどを搭載し、ハイテク感を感じさせるSUVとして人気を博しました。
水平基調でスッキリとしたデザインの新型エクストレイルのインパネ。質感はかなり高い
――4代目の人気の秘密は?
竹花 「タフギア」と「先進性」に加えて、「上質感」を特盛にした点がポイントです。さらに、プラットフォームから刷新した新型は、世界初のVC(可変圧縮比)ターボエンジンを用いた電動駆動システムのe-POWERを搭載しています。
――エンジンは?
竹花 1.5Lの3気筒です。ただし、前後に電気モーターを搭載した4WDシステムに、ブレーキ制御により4輪の駆動力を自在に制御するe-4ORCE(イーフォース)を採用した、極めて先進的なモデルへと進化を遂げている。それも大きいですね。
1.5L3気筒のVCターボエンジンは発電専用。徹底したノイズ対策でその音はほぼ感じない
――公道試乗した感想は?
竹花 3気筒エンジンの存在を忘れるほどの静粛性に驚きました。加速はとてもパワフルで、運転感覚はほぼEVです。でもEVのような重さはなく、走りは軽快。乗り心地もしっとり上質なんですよね。
――なるほど。
竹花 開発責任者が、「SUVとしての走破性能に加え、高級感も兼ね備えたSUVの開発を目指しました」と胸を張っていましたが納得です。ぜひお店で試乗してみてほしいです。驚きますよ。
ラゲッジは5人乗車時で575Lを確保。100VのAC電源も装備。3列シート仕様も設定
――ちなみにライバル車は?
竹花 トヨタ・ハリアーだと思います。クルマのキャラクターは異なりますが、高級感はいい勝負。むしろ、新型エクストレイルのほうが新鮮味があり満足感は高いかも。
■マツダの新型SUVはFRレイアウト
――続いての注目は?
竹花 9月15日に発売となったマツダのCX-60ですね。結論から言うと、マツダらしい個性が感じられる、上質感にあふれた走りを実現しています。おそらくヨーロッパや北米でも、このクラスでCX-60に「動的質感」の点で匹敵するモデルはそうそう見当たらないかと。
マツダ「CX‐60」価格:229万2000~626万4500円。CX-60は、マツダのラージ商品群第1弾。PHEVなどは12月以降に発売される予定だ。高級輸入SUVに負けない上質な走り
――今回試乗したモデルは?
竹花 3.3Lディーゼルターボに48Vマイルドハイブリッド機構を組み合わせたXDハイブリッドです。FRベースの4WDを採用しています。
――なぜFRレイアウト?
竹花 マツダが掲げるテーマ「魂動(こどう)デザイン」と「人馬一体」を追求するにはFFよりもFRのほうが適していると。
全幅は1890㎜と大柄なCX-60。エクステリアは高級感を感じるデザインに仕上がっている
最上級グレードのプレミアムモダンは、「和」を感じさせる、非常に洗練されたインテリアに仕上がっている
――見どころは?
竹花 FRを採用したことで、パワートレインの設計の自由度が上がり、ガソリン、ディーゼルターボ、ディーゼル+モーター、PHEV(プラグインハイブリッド)の4種類のパワーソースを用意できました。しかもディーゼルターボは新開発の直6です。
――ほお。お値段は?
竹花 299万2000~626万4500円です。今回試乗したモデルは500万円台です。
XDハイブリッドは254PSと550Nmを発揮する新開発3.3L直6ディーゼルターボを搭載
5人乗車時のラゲッジ容量は570L。リアシートは40:20:40の3分割可倒式となっている
――マツダはこの新型についてどんな話をしている?
竹花 常務執行役員の小島岳二(たけじ)氏は、「走りの質感と快適性、特にロングドライブでの疲労軽減には、徹底的にこだわりました。上級志向のお客さまにもご満足いただけると思います」と熱弁を振るっていました。実際、前席、後席とも快適性はバツグン。旅に出たくなるクルマです。
――ズバリ、どんな人に推せるクルマ?
竹花 今も納車まで3~4ヵ月かかるほどの人気車ですが、国産車・輸入車に関係なく、上質なSUVが欲しいと思っている人は、絶対に検討リストに入れるべき一台ですよ!
■世界で鬼売れ中のTロック
――ラストは輸入車ですか?
竹花 デビューから4年で世界累計販売台数100万台を突破している、フォルクスワーゲン自慢のTロックです。コイツのマイナーチェンジモデルに乗ってきました。
フォルクスワーゲン「Tロック」価格:394万3000~626万6000円。日本発売から2年でマイチェンを受けた新型Tロック。新たに高性能な「R」が登場した。改善した走りとインテリアの質感
――日本での人気は?
竹花 もちろん、日本でも売れています。昨年の輸入車SUVのトップは同じフォルクスワーゲンのTクロスですが、2位がこのTロックなんです。
――今回試乗したモデルは?
竹花 2.0LディーゼルのTDIスタイルと、新設定のハイパフォーマンスモデルである「R」です。
――試乗した率直な感想は?
竹花 走りの質感がグッと向上しましたね。以前、1.5Lのガソリンモデルを試乗しましたが、走りのスムーズさと乗り心地が、従来モデルから明らかに進化していました。
TロックRは、リアサスが4リンクとなる。19インチアルミホイールはR専用の装備だ
Rは専用のレザーステアリングやピアノブラックのパネル、ナパレザーシートなどを装備
――見どころはどこ?
竹花 やはり「R」のパワフルな走りですね。
――具体的には?
竹花 フォルクスワーゲンのティグアンRより200㎏も軽い車体に、ハイチューンの2Lターボを搭載した4WDモデルなので、とにかく速い。乗り心地は硬めですが、しなやかさもあって、街中でも乗りやすい。600万円超とややお値段は張りますが、かなり魅力的な一台です。
Rの2L直4ターボは300PSと400Nmを発揮。トランスミッションは7速DSG
リアシートは40:60の分割可倒式。ラゲッジフロア下にはテンパータイヤを搭載している
――新型も鬼売れ確実?
竹花 これまでどおり売れると思います。ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)の停止制御が3秒で解除されてしまう点がちょっと残念ですが、良いクルマに仕上がっています。インポーターによれば、Rも含めて受注は好調だそうです。今年も販売ランキングの上位に入るとにらんでいます。
●竹花寿実(たけはな・としみ)
自動車ジャーナリスト。自動車雑誌の編集者を経て2010年に渡独。ドイツ語を駆使し、現地で自動車ジャーナリストとして活躍。現在、活動拠点を日本に移してドイツの自動車メーカーの最新動向、道路環境などを発信中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員