今年で41回目を迎えた「東京オートサロン2023」。会場となった「幕張メッセ」(千葉県千葉市)には約800台の改造車が大集結! 週プレ自動車班が会場を駆け回り刺激的な7台を選んでみた!
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■トヨタ流の脱炭素仕様!
約18万人が来場し、大いに盛り上がった改造車の祭典「東京オートサロン2023」(1月13~15日)。自動車メーカーなど341社が参加し、800台ものド派手なクルマが並んだ。
その中から、週プレが1位に選んだのは、トヨタが自らの手で魔改造した「AE86型カローラレビン/スプリンタートレノ」の脱炭素仕様である。
具体的にはトレノのパワーユニットを水素エンジンに、レビンはEV化した。このやりすぎにも程がある2台は、圧倒的な存在感を放ち、トヨタブースは常に黒山の人だかりができていた。
公式魔改造に踏み切った理由をトヨタ自動車の豊田章男社長はこう説明した。
「クルマ好きだからこそできるカーボンニュートラルの道がある。クルマ好きを誰ひとり置いていきたくない」
ちなみに今年で生誕40年を迎えるAE86はFR(後輪駆動)のコンパクトスポーツ。トヨタ自慢の名車だが、人気に拍車をかけたのが、マンガ『頭文字D』。主人公が乗るクルマがAE86型スプリンタートレノだったこともあり、現在も中古市場で高騰を続けている。
トヨタに話を聞くと、今回の魔改造は豊田社長の案だったという。さらに豊田社長からは、クルマを操る楽しみを残すためEV化してもMT(マニュアルトランスミッション)を残すよう課題も与えられたそうな。
プロジェクトは約4ヵ月前にスタートし、まずベースとなるクルマを探した。そして時間と闘いながら、試行錯誤を重ね、レビンはEVながらMT操作が行なえ、ドリフト走行も可能に。さらに車内に排気音が響くように工夫。公式魔改造、恐るべしである。
この改造の裏には何があるのか? トヨタの販売店関係者はこう指摘する。
「すべての新車の脱炭素化には相当な時間が必要だ。今回の取り組みはすでに販売しているクルマのエコカー化を意識した試金石ではないか」
これまで豊田社長は脱炭素への取り組みに対して、「トヨタは正解がわからないから選択肢の幅を広げることが大事と言っているだけなんです」と語ってきたが、今回の公式魔改造はネットでも話題を呼んでいた。あらゆる角度から脱炭素に取り組むトヨタから目が離せない。
2位は日産が初公開したコンセプトカー「ルークススイートコンセプト」。ベース車両は日産の先進技術をブチ込んだ軽ハイトワゴンのルークス。ガルウイングドアを装備し、後部にはトレーラーが追加されている。
しかも、トレーラーにはまさかの電子ピアノが搭載されているじゃないか! えっと、これはどういうこと?
てなわけで、日産に話を聞くと、ルークススイートコンセプトは子育てを終えた夫婦が乗るクルマを想定しているという。で、ピアノはなんのためにある?
「高原で行なわれる娘の結婚式に夫婦で出かけ、トレーラーに積んだ電子ピアノを使い、父親がお祝いの演奏をするストーリーです」
な、なるほど。ちなみにインテリアは、子育てを終えた夫婦がクルマを楽しむため、旅客機のファーストクラスのシートをイメージしたそうだ。やっちゃえ、日産!
続いて3位はカスタムカーらしいカスタムカーだったダイハツの「タントカスタムレッド/ブラック」。タントは昨年10月にマイチェンしたダイハツの軽自動車。
特にカスタムは大整形をブチカマし、ゴリゴリのゴツ顔に変身! それが導火線となり人気大爆発。発売1ヵ月で5万台を受注し現在も売れに売れている。
そんなイケイケの新型タントを魔改造したのが、「一生、ロックの者です!」とかぶくダイハツ入社3年目のデザイナー・秦 麻衣香氏。
彼女が特に力を入れたのはカラーリングだ。フロントはレッドだが、リアはブラックというグラデーションになっている。その意図は?
「タントが闇の中から出てきた感じを表現しました」
色もこだわり抜いた。
「輝度の高いキャンディレッドは塗料の中に大粒径のアルミフレークが入っており、ギラギラ感を最大限まで引き出しました。実はこの色がダイハツにはなく足で稼ぎました」
見どころはほかにもある。独特な車名ロゴ、インパネ周りで光る革ジャン風の内装、イカつさを増した顔面など、どれも実に刺激的。ちなみに秦氏は今回のデザインをする上で、マンガ『NANA』や『デスノート』のミサミサにも刺激を受けたそうな。
いずれにせよ、ダイハツの遊び心には敬礼だし、コイツを市販したら刺さる人が多い気も。今後に期待!
■アルファードがハイラックスと融合
東京オートサロンで忘れてはいけないのが、「日本自動車大学校」(千葉県成田市)である。この日本自動車大学校こと、通称NATSは東京オートサロンで何度も優秀賞や最優秀賞を戴冠しているスーパーエリート校だ。
そんなNATSのブースでド肝を抜かれたのが、約40人の学生が作業を担当したという「アルファード・スーパーデューリー」。トヨタのミニバン・アルファードと、同じくトヨタのSUV・ハイラックスをフュージョンさせた意欲作である。
ちなみに全長は約6.6m、全幅は約2.4mと迫力満点のワガママボディに仕上がっている。ブルーのボディカラーも含めて、やりすぎにも程があるので4位に!
5位は再びダイハツで、「アトレーワイルドレンジャー」を選んだ。コイツは文字どおり軽自動車のアトレーをベースにして開発された。コンセプトは「動く探検基地」。
展示ブースもジャングルを彷彿(ほうふつ)とさせるオフロードを再現している。タイヤもオフロード用でタフな印象だが、気になるのはルーフの側面に取りつけられているオールである。これは単なる飾りなのか? それとも? ダイハツ関係者は笑顔でこう答えた。
「実はルーフを外してひっくり返すとボート(救助用)として使えるんです!」
ジャングルの奥地にある川などで、溺れている人を助けるというイメージを、具現化したそう。アトレーには4WDもあるし、悪路を走破するワイルドなアトレーの市販化はウケそう。ボート付きで200万円以下ならば爆売れ確実!
トヨタのAE86と同じく注目を集めていたのが、日産GT-Rの2024年モデル。07年にデビューし、進化を続けてきたプレミアムスーパースポーツ。しかし、22年に「GT-Rは注文台数が予定販売数量に達したため、オーダーを終了いたしました」という公式アナウンスがあり、ファンの間では「新型は出ない」なんて話が飛び交っていた。
そんなウワサを一蹴したのが6位の2024年モデルの「GT-RプレミアムエディションTスペック」と「GT-Rニスモスペシャルエディション」の2台。発表会では日産のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)はこう胸を張った。
「日産が持つすべてのテクノロジーとスキルを駆使した。2024年モデルは日産GT-Rの極み、史上最高のGT-Rとも言うべき集大成」
GT-R2024年モデルの開発責任者を務めた川口隆志チーフビークルエンジニアによれば、「速さだけではなく、洗練された乗り味も追求した」という。
顔面も化粧直しされ、懸案だった騒音規制にも対応したGT-Rの2024年モデルは今春、ニスモ版は今夏の発売を予定している。デビューから16年たつが、GT-Rの進化はまだまだ続く!
7位は東京国際カスタムカーコンテスト2022でグランプリを戴冠して大きな話題を集めた「フェアレディZカスタマイズドプロト」を再現した市販モデル「フェアレディZカスタマイズドエディション」に決定!
市販モデルとなったフェアレディZカスタマイズドエディションは、伝説の初代フェアレディZのレース用ホモロゲーションモデル「432R」を彷彿とさせるド派手なカラーが目を引く。オレンジのボディカラーをベースにし、エンジンフード、ルーフ、テールはブラックにカラーリングされている。
さらにグリルを上下に2分割するフロントバンパー、アルミホイール、オーバーフェンダー、デュアルマフラー、大型リアスポイラーなどの専用装備が満載。
ちなみに価格や発売日は未発表なので、日産のアナウンス待ちだ。