ニッポンの軽自動車のシェアトップを突っ走っていたダイハツ。不正で販売店はどうなった? そして、ダイハツ車が買えない今、3月決算セールでどこのメーカーの軽を買えば正解? 徹底取材した。
■軽自動車販売で17年連続トップ
ダイハツは型式指定の認証申請を巡り不正を行ない、現在、主力車種の生産と新車販売を停止している。自動車専門誌の幹部は、ダイハツのこれまでの実績を語る。
「別にダイハツの肩を持つわけではありませんが、事実としてダイハツは軽自動車販売で17年連続トップに君臨する"絶対王者"。国内の軽自動車市場でのシェアは実に3割を誇ります」
つまり、それだけ多くの顧客を抱えているともいえる。
「当然の話ですが、販売店の多くは顧客の対応に頭を悩ませていると耳にしています」
実際、ダイハツの販売店からは悲鳴が上がっていた。
店舗には不安を抱く顧客からの問い合わせが年末から続いているというが、頭を悩ませるのは、先の見通せないダイハツ車を断念し、ライバル車の検討や注文に走る顧客に対し、打つ手がまったくないこと。都内の販売店の関係者はため息交じりにこう話す。
「例年のような大々的な初売りキャンペーンも行なえず、年度末の3月決算セールの開催も厳しく......」
そんなダイハツを尻目に、ライバルメーカーは、ニッポンで新車が最も売れる3月の決算大セールに照準を定め、シェア拡大の準備を着々と進めている。
「本来なら3月の決算セールで購入を検討しているお客さまと商談を始めている時期なのですが、ご覧のように開店休業状態で、閑古鳥も鳴きません」
週末だったが店舗にはスタッフしかいなかった。今どうやって稼いでいるのか。
「車検やオイル交換などの整備点検でしのいでいます」
確実に客足は遠のいているが、それを食い止める手立てもない。実際、不正問題のモヤモヤが拭えず、土壇場で購入を見送る客も少なくないと肩を落とす。
「(客の)奥さまはタントのミラクルオープンドアを気に入ってくださっていたんですが......」
今回の取材で、新車販売はもうどうにもならないので、中古車販売に力を入れているという店もあった。
ダイハツの新車が買えない現状について、前出の専門誌幹部はこう語る。
「軽販売17年連続トップには理由がある。販売力はもちろんですが、トヨタグループという安心感、そして何よりダイハツ車は出来もコスパもいい。だから販売トップなのです。このタイミングだと説得力ないと思いますけどね」
ダイハツにはミラの名前を継いだミライース、ムーヴ、タントという3本柱があり、近年はその柱のひとつに軽SUVタフトが加わった。
「ダイハツは軽の品ぞろえも豊富なので、3月決算セールで狙っていた人もいたはず。軽の販売トップメーカーであるダイハツが買えない今、どのメーカーの軽を買うべきか悩む人もいるでしょうね」
確かに昨年の軽自動車の新車販売ランキングの10位以内に4台もダイハツ車が顔をそろえている。軽シェアトップはダテじゃないのだ。
■ベストスリーはスーパーハイトワゴン
藤島 ファンの気持ちに応えるためにも、ダイハツはこの問題を真摯にとらえ、誠意ある対応をしてほしいですね。
――はい。それでは、モータージャーナリストのフジトモこと藤島知子さんに、今買うべきダイハツ以外の軽のベストバイを聞きます。
藤島 1位は軽自動車販売で9年連続、総合でも2年連続で頂点に輝いたホンダの軽スーパーハイトワゴンN-BOXです。昨年10月にフルモデルチェンジを受けて3代目になりました。ちなみに昨年末には、ホンダ史上最速で250万台を突破して大きな話題を呼びましたね。
――2代目N-BOXはモデル末期でも2万台超と爆売れ。ズバリ、人気の理由は?
藤島 スーパーハイトワゴンは超激戦区ですが、その中でN-BOXは他の追随を許さない内外装の質感の高さ、快適で便利に使いこなせる広い室内空間、さらに走行性能も高く、背の高いスライドドア車なのに乗り心地までいい。
――すべての面で秀でているわけですね。もはやレベチの存在であると。ただ、3代目は先代のプラットフォームやメカニズムを引き継いだ、いわゆるキャリーオーバーです。この部分をどうとらえています?
藤島 実際に試乗すると、ホンダが熟成に熟成を重ねてきたのがよくわかります。
――具体的には?
藤島 2代目と比較すると、メーターフードを廃止したので、格段に視界が良くなりました。それから静かさと走りの切れ味も向上しています。
――標準とカスタムがありますが、推しはどっち?
藤島 3代目はカスタムにしかターボがありません。自然吸気エンジンは、高速走行時の追い越し加速や坂道でエンジン回転が高まり騒がしくなる。一方のターボは静かで余裕を持って走れ、遠出もこなせます。
――それは便利!
藤島 ちなみに路面の段差やマンホールを乗り越えるときの乗り心地もいいですよ。
――弱点は一切ない?
藤島 3代目のカスタムは顔が穏やかになり、いわゆるオラオラ系ではありません。ド派手な顔が好きな人は微妙かもしれません。また、N-BOXが売れすぎているので、「人と違うクルマに乗りたい!」と思う人にはほかのクルマを推したい。
――続いて2位は?
藤島 昨年5月に発売された三菱自動車のデリカミニです。実は国内の戦略車であるeKクロススペースの顔がゴツすぎて、女性客に敬遠されていました。そこで三菱はコンセプトを大きく変更したら、見事にヒット!
――走りはどうです?
藤島 軽スーパーハイトワゴンに三菱自慢のオフロード系ミニバン・デリカの名前を与えているんですね。
――つまり、三菱伝統の4WD技術がブチ込まれている?
藤島 はい。その名に恥じぬよう4WDモデルは専用サスペンションと専用タイヤを備えています。専用装備には三菱がパリダカなどで得た知見が入っているそうですよ。
――4WDは試した?
藤島 オフロードの急勾配もフツーに駆け抜けました。ちなみにアウトドアでの使い勝手も考慮されており、シートには汚れがつきにくい撥水加工が施されています。
また、ラゲッジルームなどは、荷物を積載するときに汚れが付着してもサッと拭き取れる素材を採用しています。キャンプなどのアウトドアもデリカミニは楽しめますよ。
――欠点はない?
藤島 走行時にエンジン(ターボ+マイルドハイブリッド)とCVT(自動無段変速機)の連携がいまひとつな場面が気になりました。
――3位は昨年11月にデビューしたスズキの3代目スペーシアカスタム!
藤島 N-BOXカスタムの顔が穏やかになってしまったので、王道のオラオラ顔が好みの人にはスペーシアカスタムは必見です。
――推しは顔だけ?
藤島 目玉は初採用の後席にあるマルチユースフラップです。このマルチユースフラップには3つの機能があります。
ひとつはふくらはぎを支えるオットマンモード。ふたつ目が座面を延長する感覚でもも裏を支えるレッグサポートモード。そして最後が荷物ストッパーモード。この3役をこなしてくれます。高速道路の休憩時などに後席でくつろげますよ。
――ほかに注目点は?
藤島 助手席の前には大型トレーがあり、車内でお弁当を食べる際にとても便利です。
――要するに日常の使い勝手が抜群にいいわけですね。これは王者N-BOXも危うし?
藤島 走り味、乗り心地、静粛性などは王者がリードを守っています。スペーシアを購入する際は、ぜひN-BOXにも試乗してみてください。
――4位は日産のサクラ!
藤島 パイオニアである日産が放った渾身の軽EVですね。
――推しポイントは?
藤島 まずサクラのインテリアはワンクラス上の上質感があり、その出来栄えは軽の中では完全に別格です。その上質感は走りでも感じられます。モーターで走るBEVならではのシームレスな加速フィールが味わえ、上り坂や高速の合流も余裕でこなしてしまう。
――どんな人に推す?
藤島 ファーストカーは別にお持ちで、自宅充電できる環境の人ですね。
――5位はどうなる?
藤島 ホンダのN-ONEで決まりです。特に走り好きに注目してほしいのがスポーツグレードのRS。トランスミッションはCVTと6速MTが設定されていますが、私はMTを推します!
――それはなぜ?
藤島 エンジンを高回転まで引っ張ってみると、とにかく気持ちよく回っていってくれる。レッドゾーン手前まで回せるのは、MTの特権です。ターボエンジンと6速MTの組み合わせは軽自動車として初めて。走って楽しい!
――次点はスズキのアルト。
藤島 9代目となる現行アルトはコスパ最強です。何しろマイルドハイブリッドを搭載する「ハイブリッドS」の燃費は27.7㎞/L(WLTCモード)! ちなみに車重は700㎏で、価格は121万8800円! どうです?
――神コスパ!
●藤島知子(ふじしま・ともこ)
モータージャーナリスト。レーシングドライバー(国際C級ライセンスを所持)。テレビ神奈川『クルマでいこう!』のパーソナリティ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員