日産が満を持してお披露目したアリアe-4ORCE。あらゆる路面でクルマの挙動を安定させることができるという。その仕組みとは!? 日産が満を持してお披露目したアリアe-4ORCE。あらゆる路面でクルマの挙動を安定させることができるという。その仕組みとは!?

最強寒波の中、「湖の上」に日産の最新モデルが大集結! しかも、なかなか販売されなかったウワサのモデルがまさかのサプライズ登場! その実力はいかに!? 現地に飛んだ自動車研究家の山本シンヤ氏が徹底解説する。

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■ついに登場! アリアe-4ORCE

山本 1月末、日産が長野県にある人造湖「女神湖」で氷上試乗会を行ないました!

――えっと、なぜ氷上で試乗会を行なうんですか?

山本 例年、1、2月は自動車メーカーがメディア向けに雪上・氷上試乗会を開催します。その理由は舗装路面よりも走行が難しい状況下で、各自動車メーカーが誇る4WDシステムの安定性や操縦性を体験してもらおうと。

――なるほど。ちなみに今回の日産の氷上試乗会で注目のクルマに試乗されたとか?

山本 はい。日産が誇る「電動化」と「電脳化(自動運転)」の機能を搭載した新フラッグシップEVのアリアに設定されているe-4ORCE(イーフォース)に乗りました。

――山本さん、アリアはいつデビューでしたっけ?

山本 2021年ですが、実は現在販売されているのは前輪駆動のバッテリー容量の小さなモデルだけなんです。

――なぜアリアe-4ORCEは販売されていなかった?

山本 自動車業界全体に影を落としている半導体を含むパーツ不足と新型コロナによる物流の停滞が挙げられます。それと......アリアに搭載するe-4ORCEの熟成に時間を要したという風のウワサを耳にしています(笑)。

――そんなアリアe-4ORCEが、ついに氷上試乗会でお披露目されたと?

山本 はい。当たり前ですが、氷結路や雪道での運転はとても神経を使います。しかし、e-4ORCEはあらゆる路面でクルマの挙動を安定させることができる。その技術を披露するには氷上は絶好の場所だったと思います。

正直、氷上は人が歩くのすらままならないツルツルの路面ですが、アリアはこれまでの内燃機関モデルよりもドライバーの意のままにコントロールすることができました。

――意のままにコントロールできる仕組みというのは?

山本 アリアe-4ORCEはフロントとリアに独立したモーターを搭載した電動AWD(全輪駆動)です。さらに、前後のモーターの駆動コントロールと四輪のブレーキ制御を一緒に行ないます。それによりクルマの姿勢をコントロールする仕組みです。

――けど、ぶっちゃけ、電動AWDってほかのメーカーにもありますよね?

山本 それらの多くは、駆動コントロールとブレーキ制御は個別に行なっていることが多い。要は頭脳がふたつあるわけです。しかし、e-4ORCEの頭脳はひとつなんです。

――頭脳をひとつにするメリットというのは?

山本 サッカーで司令塔がふたりいるとパスに迷いが出ますよね? もちろん、ふたりの司令塔が功を奏す試合もありますが(笑)、クルマに頭脳がふたつあると瞬時に最適な制御はできません。

しかも、アリアはEVで大容量のバッテリーを搭載しているので重量は2.4t近い。その巨体をどんな路面状況でもしっかり安定させるには頭脳はひとつのほうがいい。

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――実際に氷上を走ってみた感想は?

山本 実は、プロドライバーが運転する22年モデルのGT-Rの後ろをアリアのe-4ORCEで走ってみましたが、ホントに驚きました。GT-Rは世界有数の超高性能な4WDですが、氷上でコントロールするのは難しくプロでも挙動を乱してしまう。

――ふむふむ。

山本 一方でアリアe-4ORCEは、GT-Rに加速で追従できる安定したトラクション(駆動力)性能とドライバーの意のままに操れるコーナリング性能を持っています。

GT-Rがオーバーステア(ステアリングの舵角よりも車体が曲がること)で破綻するようなシーンでも、アリアのe-4ORCEはオンザレール(鉄道のレール上を走行しているような感覚)で曲がれてしまう。つまり、氷上でも安心して安定した走りが楽しめてしまう。

――マジか!

山本 さらに横滑り防止装置(VDC)をOFFにして走らせると、2.4tの巨体がGT-Rよりもきれいに四輪ドリフトすることが可能で、そのコントロール性能の高さにも驚きましたね。

――ほお!

山本 ちなみに氷の上にパイロンをひとつ置き、その周囲を旋回する、いわゆる定常円旋回にも挑みましたが、アリアe-4ORCEはまるでフィギュアスケートの選手のようにパイロンを軸に美しく回れました。

――山本さん、アリアe-4ORCEの優れた走行性能を実現しているキモは?

山本 繰り返しになりますが、駆動のコントロールとブレーキ制御をひとつの頭脳で行なっていること。それから、最も重い部品であるバッテリーを車両中央に低く配置したことで、51:49という理想的な前後重量配分と低重心を実現。それが効いています。

――ちなみに気になった点はありますか?

山本 EVでもいくらかの音はしますが、アリアは遮音性が非常に優れているので室内は静寂に包まれる。スポーツモードを選べば、アクセルの開度に連動してインバーターの音を強調させるサウンドを奏でます。

これには賛否があるようですが、僕は賛成。ただ、もう少し抑揚や音質にこだわったほうがいいかなと。あとは氷上では好印象でしたが、舗装路での走りはやはり気になりますよね。

●山本シンヤ 
自動車研究家。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ワールド・カー・アワード選考委員。YouTubeチャンネル『自動車研究家 山本シンヤの「現地現物」』を運営

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