2024年モデルは2車種。GT-Rニスモスペシャルエディション(右)と、GT-RプレミアムエディションTスペック(左) 2024年モデルは2車種。GT-Rニスモスペシャルエディション(右)と、GT-RプレミアムエディションTスペック(左)

3月20日、日産GT‐Rの最新モデルがついに正式発表! 同日から注文開始となった。新型はどう磨き上げられた? 販売現場の声は? 〝新車購入の神様〟と呼ばれるカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)氏が解説する。

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■今もGT-Rが大人気のワケ

――日産が世界に誇る最上級スポーツカー「GT-R」の2024年モデルを、今年1月に開催された東京オートサロン2023で初公開し、大きな話題を集めました。

渡辺 GT-Rの開発は2000年頃に始まり、07年に777万円で発売されました。すでに発売開始から約16年が経過していますが、東京オートサロンの会場では常に黒山の人だかりができており、注目度の高さを実感しましたね。

――GT-Rはこれまでどんな進化の道を歩んできた?

渡辺 やはり、スポーツカーは走行性能がキモです。GT-Rはこれまで一度もフルモデルチェンジを行なっていませんが、07年の発売以降、手を抜かず、細かな改良を頻繁に実施しています。

V型6気筒3.8リットルツインターボエンジンの最高出力は07年は480馬力でしたが、08年の改良で485馬力、10年には530馬力になり、ボディ剛性、サスペンション、ブレーキ、タイヤなども見直してきました。11年には550馬力に達する一方で、燃費も改善しました。

――つまり、日産は真摯(しんし)にGT-Rを磨き続けたことで、ファンの心を打ってきたと?

渡辺 はい。13年には実用回転域の駆動力を高め、15年は足まわりを見直しました。そして、16年には最高出力が570馬力(ニスモ仕様は600馬力)に達し、乗り心地や静粛性などを向上。19年と21年にも改良が施されていますね。

2024年モデルのGT-Rと日産自動車のアシュワニ・グプタCOO(右)、チーフ・ビークル・エンジニアの川口隆志氏(左) 2024年モデルのGT-Rと日産自動車のアシュワニ・グプタCOO(右)、チーフ・ビークル・エンジニアの川口隆志氏(左)

――なるほど。今回登場した2024年モデルの詳細は?

渡辺 日産は標準グレードとスポーツ性の高いニスモを公開しました。新型は車外騒音規制に対応して音量を下げながら動力性能は低下させず、迫力の伴ったサウンドを響かせます。エアロパーツによる空力特性も改善していますね。

――ふむふむ。

渡辺 また、車両を路面に押しつける力を高め、安定性に加えて乗り心地も向上しています。車両の加速度を検知するGセンサーの精度も改め、電子制御式ショックアブソーバーの作動をいっそう綿密にしているのもポイントです。

日産 GT-Rニスモ スペシャルエディション 発売:今夏 今夏発売予定のGT-Rニスモスペシャルエディションはカーボンパーツが多用されド迫力。ちなみに最高出力は600馬力を発生 日産 GT-Rニスモ スペシャルエディション 発売:今夏 今夏発売予定のGT-Rニスモスペシャルエディションはカーボンパーツが多用されド迫力。ちなみに最高出力は600馬力を発生

――日産は3月20日に2024年モデルを正式発表し、注文の受付けを開始したそうですね?

渡辺 価格は1375万~2915万円です。

――スゲェー! 販売現場からはどのような声が飛んでいます?

渡辺 販売店いわく、「生産台数に限りがあり注文を受けられない可能性もある」と説明していました。購入を検討している人は早目に販売会社や日産ハイパフォーマンスセンターに問い合わせるべきでしょうね。

リアウイングの形状はスワンネック型のステーに見直された。これにより高いダウンフォースを得られるという。メカニカルLSDも新採用 リアウイングの形状はスワンネック型のステーに見直された。これにより高いダウンフォースを得られるという。メカニカルLSDも新採用

インテリアで目を引くのがレカロ社が専用開発したシート。横剛性を50%向上させた。むき出しのカーボンフレームは男心を刺激する インテリアで目を引くのがレカロ社が専用開発したシート。横剛性を50%向上させた。むき出しのカーボンフレームは男心を刺激する

――近年、GT-Rの中古車価格が高騰していますね?

渡辺 ニスモを中心に高年式車の中古車は軒並み3000万円以上の価格で販売されています。この数字は新車価格の2倍以上です。日産は日本が誇る大企業ですから、やはり市場を混乱させてはいけません。

半導体を含むパーツ不足で厳しい面はあるかと思いますが、需要に見合う台数をしっかり供給し、市場を安定させるべきだと私は思います。その意味で2024年モデルの販売には期待していたのですが......。

――ちなみに国内のライバルを挙げると?

渡辺 16年に2代目が登場したホンダのNSXを挙げたいところですが、昨年12月に生産終了となりました。この手のスーパーカーは長続きしないのが実情なのです。ですから、16年間一度もフルモデルチェンジをせず、高い人気を保ち続けているGT-Rというクルマは、稀有(けう)な存在だといえるでしょうね。

――そんなGT-Rの将来を予想すると?

渡辺 GT-Rはエコカーではありませんが、モーター駆動になると新しい発展がある。モーターはエンジンに比べ、反応が素早く、駆動力の緻密な制御も可能です。

もっと言うと、日産のフラグシップEV・アリアなどが採用する、前後にモーターを備えたe-4ORCE(イーフォース)であれば、これまでGT-Rが磨き抜いてきた四輪駆動の制御をさらに高い水準で実現できます。従ってGT-RのEV(電気自動車)化は大きな意味があると思います。

●渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう) 
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務める。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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