今年2月1日に北米と欧州で正式発表されると同時に、世界中のバイクファンを熱狂の渦に巻き込んだのがカワサキの新型バイク「ニンジャZX-4RR」。そして、ついに3月17日にニッポン初公開! 発売前から話題沸騰のワケは? モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏が解説する。
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青木 3月17日、大阪モーターサイクルショーでカワサキ入魂の新型バイク「ニンジャZX-4RR」が日本初公開され、大きな話題を集めています!
――どんなバイク?
青木 4気筒400㏄のスーパースポーツです。ヨンヒャクといえば普通二輪免許(中型自動二輪)で乗れる上限の排気量で、大型二輪(限定解除)の試験が「司法試験より難しい」と揶揄されるほど合格率の低かった時代は「日本のスタンダード」と言われるほど人気のあったクラスですね。
――へぇー。
青木 しかし、1996年に大型二輪免許が認定自動車教習所でも取得できるようになりビッグバイクブームが訪れると、日本特有の排気量帯であった400㏄クラスの人気は陰りを見せ始め、1992年からロングセラーを続ける超定番のホンダCB400スーパーフォア/スーパーボルドールさえも2022年10月をもって生産終了。
絶滅危惧種となり、バイクファンは意気消沈していたのですが、〝漢(おとこ)〟を見せたカワサキが復活させたのです!
――なるほど。
青木 しかも、史上最強となる80PSを発揮するのでファンは泣いて喜んでいます。カワサキのヨンヒャク4発スーパースポーツは、最終型が1999年に出たZXR400以来、実に24年ぶり。
レーサーレプリカと呼ばれ、過激とされた当時でも最高出力は各社59PSがMAXでしたからそれを遥かに凌ぐ数字です。環境規制が厳格化された現代では、まさに奇跡的なニューモデルと言えます。
青木 カワサキのお家芸とも言えるラムエアインテークシステムを採用しているところが大きい。アッパーカウル前方の給気口から走行風をダイレクトに取り込み、加圧することで充填効率を高め出力向上を果たします。新開発の399cc水冷並列4気筒DOHCエンジンは15000rpmを超える超高回転型となりました。
――走りはどうなりそう?
青木 ニンジャZX-10Rにも採用されるフルアジャスタブルリヤショック、ショーワ製BFRC-liteが標準装備され、ワンランク上の走りが堪能できそうです。
――ほお。
青木 加えてニンジャZX-25Rと比較し、全長を1㎝、幅とシート高を1.5㎝しか増やしていない。最新モデルらしく電子制御も先進的で、ライディングモードをスポーツ、ロード、レイン、ライダー(マニュアル)の4種類から選べ、インストゥルメントパネルは4.3インチのフルデジタルカラー液晶スクリーン。専用アプリを介してスマートフォンに接続することもできます。
――まさに渾身の1台であると?
青木 スゴすぎて、将来を懸念する声まで一部で出てしまうほど。というのも、カワサキモータースの伊藤浩社長は2025年までに10機種以上におよぶ電動、ハイブリットを発表し、カーボンニュートラル(脱炭素)の分野で業界を牽引していくと表明していることから、今回のZX-4RRはカワサキの集大成となり、内燃機エンジンはこれが最後になるのではないかという見方もあるほどに出来栄えが素晴らしいのです。
しかし、伊藤社長は24~25年に約30機種のガソリン車の投入も明言しており、つまり全ジャンルの開発をやり続けると言っていますから、最後となるなんていう心配は無用です!
青木 発表以来、大反響で、問い合わせが絶えないそうです。
――ニンジャZX-4RRのグレード展開は?
青木 ニンジャZX-4RRはクイックシフターなどを装備し、レーシンググラフィックスを身にまとうSE(スペシャルエディション)、さらにサスペンションをより豪華にしたRR、そしてスタンダード(R)の全3タイプが海外で発表されています。
しかし、日本国内にどのグレードが導入されるかは現時点で価格も含め未発表です。モーターサイクルショーに展示されたのは最上級のRRだけで、RとSEがなかったことを考えると、国内向けはRRのみとアオキにらんでいます。
――ちなみにニンジャZX-4RRはいつから買えるんですか?
青木 日本市場導入は今秋と公式アナウンスが出ています。正式発表が待ち遠しい限りで、今後もカワサキからは目が離せません!
●青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営